「Metal Twisted G-SHOCK」(金属が融合されたG-SHOCK)から名付けられたG-SHOCKのサブブランド「MT-G」。2018年には、カーボンファイバー強化樹脂を用いたインナーケースでモジュールを保護し、耐衝撃性と軽量化を同時に実現した「カーボンコアガード構造」を引っ提げてブランドを再始動した。以来、オーロラのようなカラーグラデーションの「レインボーIP」、ステンレスの剛性を強化しつつ錆のような表現を可能にした「再結晶化」、カーボンファイバー強化樹脂と金属パーツを組み合わせて耐久性と軽量化を両立した「構造デュアルコアガード構造」など、革新的な技術や表現を積極的に採用してきた。

そして、今回紹介する「MTG-B4000」の開発に取り入れられたのが「生成AI」。採用背景や効果について、カシオ計算機株式会社 商品企画部 室長の泉潤一氏にお話を伺った。

  • カシオ計算機株式会社 時計BU 商品企画部 第一企画室 室長 泉潤一氏

デザイナーの感性にG-SHOCK40年の知見を融合

  • 「MTG-B4000-1AJF」。価格は165,000円(税込)で発売中

  • 「MTG-B4000B-1A2JF」。価格は176,000円(税込)で発売中

MT-Gの最新作「MTG-B4000」の開発に活用された生成AI。生成AIといえば、プロンプトと呼ばれる自然言語の命令文を入力することで、絵や音楽、動画、プログラムなどを即座に生成してくれるというイメージがある。 しかし、「斬新でタフでカッコイイG-SHOCKをデザインして」と入力すれば有効なデザインの候補がずらりと提示される――というほど簡単な話ではない。

泉氏:「今回は、人間(デザイナー)が考えたデザインをベースにG-SHOCKの耐衝撃構造に関する実績データを読み込ませたAIが荷重シミュレーションを実施し、新しい構造を生み出すための補助ツールとして活用しました。

新しいMT-Gをデザインするとなると、G-SHOCKらしい感性や『MTG-B1000』から『MTG-B3000』までの開発の流れを理解し、『MTG-B4000』に反映することが必要とされます。加えて、『MTG-B4000』の商品企画におけるコンセプトやアイデアも組み込んだうえで進めないといけないため、AIにはまだ難しいです。

そこで、まずは大まかな構造やデザインをデザイナーが作成し、それを基に生成AIが製品に求められる強度や形状を踏まえて、より適切な構造を提案していく、という流れで取り掛かりました

「MTG-B4000」の特徴的なカーボンフレーム(初期段階ではもっと大まかな形状)と、バンド接続部のステンレスパーツの組み合わせによる基本構成は、最初からデザイナーが考えていたものだそう。これをベースに、デザイナーは生成AIとのやり取りを重ね、ブラッシュアップを行っていった。

  • 特徴的なフレームの原案は生成AIではなく、なんとデザイナーによるもの

  • カーボンフレームと上下の金具の構成も最初に決まっていた(写真は最終段階の形状)。ちなみに、この金具は鍛造ステンレス材からの削り出し

今回使用された生成AIは、既存のAIパッケージG-SHOCKの耐衝撃データを読み込ませたもの最大の特徴は、学習させた内容にある。

泉氏:「カシオがこれまでの時計開発で蓄積した、耐衝撃データを含む物性ごとの特性や設計、実験結果など膨大な情報を学習させました。

そのため、デザイナーの感性とG-SHOCK40年の開発の歴史で得られた知見の融合を実現したのです」

そのほか新しい技術や表現も続々! 「MTG-B4000」は見どころ満載

生成AIは、データベースをもとにデザインを検証し、構造の強度をシミュレーションして改善案を提示する。そしてデザイナーはそれを参考に修正を加えたり、そこからインスピレーションを得たりしながらデザインを最適化していった。

泉氏:「先ほどのカーボンフレームについても、『この部分の強度が不足しているから少し太くする必要がある』とか、『このままだとこの部分が曲がったり折れたりしてしまうので、折れ角を変更すべき』といった提案を受けました。おかげで、比較的初期段階から構造の強度が見通せる――つまり開発プロセスの初期フェーズである程度『間違っていないと判った状態』でデザインを進めることができました

  • カーボンフレーム(左)は、インゴット(右)から切削加工される。複雑な形状でありながら非常に硬い素材

構造強度の計算やシミュレーション結果だけでなく、その改善提案までも行う生成AI。デザイナーが考案した本製品のカーボンフレームの着想を得るきっかけにもなったそう。

泉氏:「たとえば、先にお話ししたカーボンフレームは、カーボンを積層したインゴット(塊)から切り出しています。黒い部分はカーボンファイバー含浸層、白い部分はグラスファイバー含浸層です。黒い部分をよく見ると、層の厚みが一定でないことがわかると思います」

  • 場所によって黒い部分(炭素含浸層)の厚みが異なる点に注目!

これは、ベース部分と強度が必要な部分で、炭素シート1枚あたりの厚みを変えているからだという。強度が必要な箇所を考慮し積層している層の幅は0.3mm~0.6mm程度で使い分けをしている。こういった発想は、生成AIがあるからこそ生まれるものといえるだろう。そして、G-SHOCKのような進化と革新性を求めるモノづくりには、特に相性が良いことが伺える。

  • ケースのパーツを組み付けた状態。この写真では仮置きだが、実際の製品では山形カシオの職人が手作業でしっかりと組み付けている

「MTG-B4000」では、このほかに今までになかった表現にも挑戦している。

泉氏:「ケースや裏ぶた、ボタンなどのパーツの面を増やして、より美しく軽快に見えるよう配慮しています。また、この面の多さが装着感にも貢献しており、『手首に吸い付くようだ』とよく言われます。」

  • 「私は普段、大きな時計はあまり着けません。そんな私でも快適に着けられるMT-Gを目指しました」(泉氏)

  • とにかく面が多く、それでいて稜線が美しいデザイン。こうしたデザイナーの感性を生成AIが支えている

  • ケース、ベゼル、ボタン、バンパー、裏ぶたなどに注目。面取りが見どころで、鋭角が肌に当たらないため装着感も向上

ベゼルもよく見ると1時、4時、8時、10時の位置にわずかに頂点がある。これは落下時にその頂点が地面に先に接して、ガラスを守るための設計だ。

さらに、外観で見えるビス(ネジ)も可能な限り減らしたそう。従来は裏ぶたの固定部をはじめ、ベゼルトップやケースサイドにもビス止めの穴があったが、「MTG-B4000」では裏ぶたを固定する4か所のみ。見どころ満載のモデルなので、ぜひ手に取って、新しいMT-Gの世界を感じてほしい。

  • ベゼルの1時、4時、8時、10時位置に頂点があること、ビス穴が一切見えないことに注目

  • 唯一、外から見えるビス穴を持つ裏ぶた。実はMIM(メタルインジェクションモールティング)という射出成形技術と焼結技術の組み合わせによる金属射出成形法で製造されている

  • 裏ぶたの裏側。側面が立ち上がっており、モジュールが収まったセンターケースの側面を保護している

なお、「MTG-B4000-1AJF」「MTG-B4000B-1A2JF」ともにサイズは縦56.6mm×横45.3mm×厚さ14.4mm。質量は112g。駆動方式はタフソーラー、時刻自動修正機能でマルチバンド6対応の電波時計に加え、モバイルリンク機能も搭載。風防は内面反射防止コーティングを施したサファイアガラスになっている。

  • 新開発のブルーグレーIPが高級感を醸し出す「MTG-B4000B-1A2JF」

  • MT-G定番のカラーリングに加え、ミラーとヘアライン研磨が魅力の「MTG-B4000-1AJF」

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[PR]提供:カシオ計算機株式会社