アヴネットは今年6月16日より開催される『デジタルものづくりサミット』に、「IoTにおける安全・安心」をテーマとした3つのデモ展示を行う。この内容をご紹介したい。
顔認識・物体認識・姿勢認識ソリューション
こちらはカメラの映像をNXPのLayerscape 1046Aプロセッサを利用して処理し、作業者の顔認証や物体(ヘルメット・ゴーグル)の認識、姿勢の推定を行うデモである。これは製造業あるいは建設業などの現場において、作業者の装備着用漏れがないかをチェックすると共に、作業中の姿勢の確認や動作の不正などを検出することで、安全確保を行うというものである。
デモのポイントは、まずこの認識されるアプリケーションがDocker Containerのかたちで提供されるため、配布が容易であることと、ごく普通のArmプロセッサベースでシステムが構築できることである。また、必要に応じてTPUモジュールのようなオフロードエンジンを追加することもできる。デモでは具体的に、装備の認識とか姿勢/動作の検出などの実演を行うので、どの程度の精度と速度で認識できるのか、演算中のARMコアの負荷がTPUモジュールの有無でどの程度異なるかをデモで体験していただければと思う。
業務用機器後付けセキュアIoT
こちらはNSW(日本システムウエア株式会社)の提供する、ToamiというIoT Platformを利用した後付けセキュア IoT環境ソリューションの提供である。昨今ではIoTを謳い文句に掲げる機器は少なくないが、すでに現場に設置され稼働している機器のなかでIoTに対応している比率は驚くほど少ない。
だからといって、IoTのためだけに機器を入れ替える、というのはコスト的にもちろん割にあわない訳だが、こうした「非IoT機器」に対して、後付けのかたちでIoT化を図ろう、というのがこの「後付け」ソリューションである。
たとえば製造装置に振動センサーとか温度センサー、消費電力計など後付けできるセンサー類を取り付け、これらのデータを監視することで稼働状態の確認とか異常状態の検知などを可能にすることも出来る。機器によっては、IoT化にはなっていないものの、何らかの外部I/Fを持っている機器もあるから、このI/F経由で状態とかデータなどを取り出して、集計するとか管理するといったことも可能だろうし、逆に外付けIoT経由で外部から機器の制御を行うことも場合によっては可能である
こうした後付けIoTでは、その取り出したデータをどう扱うかが常に問題になる。そもそも取り出した段階では、正規化されていない単なるデータの羅列であり、これを意味あるデータにどう正規化するかが、IoT化を成功させるためのポイントである。Toamiが強いのは、PLCのThingWorxというIIoT向けインフラを利用していることで、このThingWorxでは様々な業種/機器/データ向けの対応アプリケーションを含んだソリューションが用意されている。ToamiはこうしたThingWorxのプラットフォーム(+エコシステム)をベースに、IoTサービスを容易に開発・構築することにフォーカスしたもので、データの見える化や分析・機器制御などのシステムを短期間で構築が可能になっている。
そして非常に重要になってくるのが、デバイスを含めたエッジからクラウドまでの各レイヤ毎およびシステム全体を見据えたセキュリティ対策だ。勿論通信の暗号化などは当然実施しているが、RoT(Root of Trust)の実装とか多層防御、Trusted Computation環境の提供、デプロイ後のセキュリティ保護改善など、昨今セキュアデバイスに求められる7つの要素を全て備えている訳ではない。そこでここに関しては、このセキュリティ7要素をワンストップで提供する、MicrosoftのAzure Sphereを採用した。個々の外付けIoTデバイスは、Microsoftが"Guardian Module"と呼ぶ、セキュリティ要素を全て備えたものが利用され、デバイスの認証からファームウェアの配布まで、全てAzure Sphereによる完璧な保護が提供される。これにより、安全かつ簡単に、手持ちの非IoT機器を後付けでIoT化できる、というのがNSWの提供するToami×Azure Sphereのソリューションである。
会場では、実際にさまざまな業務用機器をリモートでの状態監視を可能にし、このデータをもとにした予兆保全とかリモートサポートによる作業コスト軽減のデモをご紹介する予定である。
Mipsology Zebra による低遅延物体認識
3つ目はアヴネットのXilinxチームによる、Mipsology Zebraの紹介である。昨今、エッジコンピューティング向けにGPUカードを使うケースは多い。特に画像処理を利用した製造ラインの検査などではGPUを利用してカメラ画像をCNNなどで分析、不良品の識別を行うといった話は非常に多い。
ただしGPUカードはそもそも連続運用に向いていない(発熱が多いため、長期間の連続運用を行うと過熱により故障率がどうしても高くなる)し、消費電力も馬鹿にならない。これはコスト的な問題もさることながら、長期供給の問題(いつまでも同じGPUカードが提供されるという保証がない)も絡んでくる。
それとGPUの場合、ある程度バッチサイズを大きくしないと性能が出ないこともあり、どうしても遅延が課題となる。
こうした問題に対しアヴネットが提案するのは、Mipsologyが提供するZebraというFPGA上で動作する推論用エンジンである。Zebraの便利な点は、FPGAに合わせて回路を設計する必要が無く、GPU上で構築したネットワークをそのまま利用して推論が可能ということで、製造ラインなどで行ったGPUを使った学習結果をそのまま利用してFPGAで推論が可能である。そしてFPGA上で動作するがゆえに、GPUを超える処理性能と低遅延を、GPUカードより少ない消費電力で実現できる。さらに、現在のGPUでは不可能な、複数のネットワークを同時に搭載して実行するといった芸当も可能である。また、他社のFPGA向け製品は低遅延の為に認識精度を犠牲にしているが、Zebraは特許を取得した環境に合わせてキャリブレーションを行うことにより認識精度を維持したままで低遅延を実現している。
デモでは、実際に物体認識を行う際の処理性能や遅延、あるいは複数のネットワークを搭載して同時に実行するといった映像を紹介しながら、実際にGPUカードベースの画像認識をFPGAに置き換えた場合の効果について説明が行われる予定となっている。
今回のデモで紹介されるIoTソリューションは、これそのものとしては、それぞれの分野で王道とも呼べるものであり、すでに実用化されている例もある。しかし、こうしたソリューションの実用化が進むにつれ、これらをいかに安全に、安心して使えるものとするかは今後多くの企業で課題となっていくことだろう。
IoTソリューションをより快適に活用していくために、ぜひ実際のデモを確認していただきたい。
関連情報) 本稿でご紹介したデモ、アヴネットの出展内容の詳細は、『デジタルものづくりサミット2020』のホームページで最新情報を公開しています。
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