日立ハイテクノロジーズが製品販売後のアフターセールスプロセスの仕組みをSalesforceで刷新した。複数に分散していた顧客接点を統合して情報を一元管理し、顧客満足度の向上に向けた取り組みを加速している。今回のプロジェクトでははじめてデザイン思考やアジャイル開発も採用。全社規模でデジタルトランスフォーメーション(DX)施策を展開する同社に話を聞いた。

市販後管理データの有効活用による製品ライフサイクル全体の品質保証への変革

医用分析装置やDNAシーケンサー、分析機器、半導体製造装置、半導体デバイス検査装置、電子顕微鏡、鉄道検測装置、先端産業部材など多岐にわたる機器や部材、システムをグローバル展開する日立ハイテクノロジーズ。2001年にハイテク関連専門商社の日製産業と日立製作所の計測器グループと半導体製造装置グループとが事業統合し現社名となった同社は、1947年の会社設立以来、現代の産業に欠かせない製品を数多くの企業に提供してきた。現在、グループ企業は国内11社、海外32社で、連結従業員は1万1,482名。また、事業展開する国・地域は26カ国、海外売上高は6割に達する。

そんな同社は2019年5月、製品販売後の顧客満足度向上を目指した「アフターセールスプロセス」を刷新するプロジェクトを完遂させた。現場ごとにNotesで個別管理されてきた30超のデータベースとその関連プロセスをSalesforceに移管・統合。フィールドサービスから営業、品質保証(品証)、設計までの情報を一元的に管理することで、お客様からの問い合わせに対してスピーディに把握、対応できるようにしたという。

株式会社 日立ハイテクノロジーズ 品質保証本部 本部長 腹部等氏

株式会社 日立ハイテクノロジーズ 品質保証本部 本部長 腹部等氏

「20年ほど前から営業や品証がそれぞれNotesデータベースを開発し、市販後の製品障害、保守、情報展開、お客様のご意見等に対応してきました。ただ、個別管理のため情報が分散しており、装置の納入台数増加、装置構成の複雑化により年々進捗管理や稼働状況を統合的に把握することが難しくなってきました。また、情報活用が最適化されておらず、お客様のご要望にタイムリーに対応できないケースが散見されるようになりました。加えて、有効なお客様からの提案を新製品にフィードバックするための情報連携強化も必要であると考えていました。そこで、分散化した情報を統合して有効に活用することで、納入後の製品状況、サービス状況、顧客情報を部門横断的に共有できれば、お客様への対応品質が向上し、製品ライフサイクル全体でお客様満足度を向上させることができると考えました」と、品質保証本部 本部長の腹部等氏は当時直面していた課題を語る。

分散した市販後管理情報により、“こと”が起きてから分散情報を収集・分析していた市販後管理ワークプロセスを、常に最新の市販後管理情報を更新し統合することにより、受け身の市販後管理から攻めに変革する方向に踏み出したのだ。

複数のNotesデータベースをSalesforceに移行し一元管理

Notesによる旧システムは、デジタルトランスフォメーション(DX)に向けた取り組みでも課題になりつつあった。日立ハイテクノロジーズでは2017年に情報システム本部を改編してデジタル推進本部を設置。デジタル時代を視野に入れたさまざまな施策を展開すべく、Salesforceをプラットフォームの中心に据えた情報統合を進めていた。

株式会社 日立ハイテクノロジーズ デジタル推進本部 ビジネスDX部 部長 竹林亜紀恵氏

株式会社 日立ハイテクノロジーズ デジタル推進本部 ビジネスDX部 部長 竹林亜紀恵氏

デジタル推進本部 ビジネスDX部 部長の竹林亜紀恵氏は「顧客接点を統合してお客様のフロントを強化し、全社が一体となって顧客満足度向上を図ることを目指しています。アフターセールスはさまざまなプロセスが複雑に組み合わさっているため、単純な検索ツールや文書管理ツールでは代替できませんでした。いかに顧客接点を統合し、顧客満足度を向上させるかという観点から移行先システムを検討し、Salesforceを採用することを決めました」と話す。

Notesのデータベースは全社レベルで9,000個以上存在していた。デジタル推進本部ではこれらを「保有情報の特性」「パッケージが適用できるか」「移行の難しさ」といった視点から分類し、優先順位をつけて移行作業を実施。顧客接点および営業・サービスフロントに必要なものをSalesforceに統合する方針を策定し、アフターセールスの関連システムも対象になったという。竹林氏は「Salesforceを採用したことで、顧客接点を統合できるだけでなく、情報共有や検索といった課題への対応が可能になります。さらに、グローバルレベルでのモバイル対応やセキュリティ対応、法令対応も実現できました」とSalesforce採用の理由を説明する。

同社の取引先には、海外の病院や検査センターも多く、FDA(米食品医薬品局)認証などの法令対応が求められる。また、製造業向けのフィールドエンジニアを中心に現場でモバイルを活用するケースも増えており、お客様のご要望をスマホやタブレットからその場で入力できることが重要だ。そうした意味でもSalesforceは、情報を集約、一元管理したうえで、問い合わせに迅速にグローバル規模で対応するのに最適なシステムといえる。

  • システム移行のイメージ

    システム移行のイメージ

アフターセールスプロセスを刷新 プロジェクト成功の3つのポイント

アフターセールスプロセス刷新プロジェクトは、2018年6月のキックオフから2019年5月末までのおよそ11カ月のスケジュールで進められた。プロジェクトが成功したポイントは大きく3つある。1つめは全員参加型であること。2つめはビジネスユーザー主導のプロジェクトにしたこと。3つめはアジャイル型のシステム開発・導入プロジェクトを採用したことだ。

1つめの全員参加型とは、E2Eのプロセス内で登場する40超の関連部署やグループ会社のステークホルダーと密接な意思疎通を図ったことを指している。オンサイトでのミーティング参加やSkype会議に加え、システム部門と品証部門の担当者が海外を含めたグループ会社全社を直接訪問し、システム導入の意図や狙い、具体的な移行方法を説明した。DX推進のトップである竹林氏も自ら積極的に足を運び、皆で目指したいゴールや既存システムとの仕様やUIの違いなどを丁寧に説得してまわったという。「全社員でゴールを共有して納得できたことが大事なポイントでした」と竹林氏は語る。

2つめのビジネスユーザー主導というのは、品証トップの腹部氏がプロジェクトリーダーとなって全体を統括したことだ。システム導入というと、システム部門が業務部門にヒアリングして要件定義や設計を行うことが多い。システム部門に業務知識が少なかったり、業務部門にIT知識が少なかったりすると、導入後に齟齬が発生することも少なくない。今回のプロジェクトは、品証というまさに「プロダクトの品質保証のプロ」がリーダーとなることで、プロジェクト全体の品質保証を行ったのだ。実際、腹部氏は「お客様視点でみたときにシステムはどうあるべきかという観点は、品証に通じるものがある」と振り返る。

もっとも、ステークホルダーが多く複雑なシステムであるほど、システムに対する齟齬は大きくなりやすい。そこで採用したのが3つめのポイントであるアジャイル型開発だ。事前に要件定義を行わず、まずプロトタイプ(最小限の機能を持ったプロダクト)を作成して、反復・改善してサービスを完成に近づけていった。「アジャイル型開発は初の試みであり、このアプローチを実践するうえで、Salesforce移行とアジャイル開発に知見とノウハウを持ったテラスカイさんは大きな力になりました」と竹林氏は話す。

顧客接点を統合し、変化に応じて顧客ニーズに機敏に反応していく

テラスカイはSalesforceのプラチナパートナーであり、それまで日立ハイテクノロジーズ向けには電子サインシステムやデータ連携ツールの導入を支援してきた実績がある。竹林氏は「一緒に仕事をするなかで、技術もサポートも非常によいという評判を聞いていました。今回も、デザイン思考やアジャイル開発にはじめて取り組むなか、プロトタイプの開発からその後のスプリントまでさまざまな側面で支援いただきました」と、そのサポートを高く評価する。また、腹部氏も「MTBF(平均故障間隔)などの指標をシステムでどう組み入れるかなど俊敏に対応していただきました。課題の提起もしっかりしてもらい、運用後の改修までを考慮したコーディングなしでのシステム構築の提案もよかったです」と実務面で信頼を寄せている。

システムは新年度から正式稼働を開始し一区切りついたかたちだが、今後も継続的な改善を繰り返していく方針だ。現時点での効果について、腹部氏はこのように語る。「Salesforceに情報が集約され、一元管理が可能になりました。フィールド担当者から、営業、品証、設計まで、全社で情報を共有し、お客様からの問い合わせに対して迅速に対応できるようになりました。また、不良率、稼働率、MTBF、MTTR(平均復旧時間)などの市販後品質KPIを定期的に取得することにより、アベイラビリティ(可用性)、メンテナビリティ(保守性)の改善に活かすことが可能となりました。当社には、問い合わせ対応情報やお客様情報を蓄積していましたが、データが分散していたため十分に活用できていないケースがあります。今後はそれらの有効なデータも最適化して、新製品へのフィードバック、適切な保守計画の提案、新しいニーズの掘り起こしに活用できるシステムに成長させたいと考えています」

今回のプロジェクトは、全社で推進しているDX取り組みの面でも「Salesforceを新たに3,000ユーザーが利用しポジティブな評価が広がることで、今後の展開について新たな気づきもあり、デジタル施策の推進に向けてひとつの足がかりになりました」と竹林氏はまとめた。

このようにNotesからSalesforceへの移行でアフターセールスプロセスを刷新した日立ハイテクノロジーズ。顧客接点を統合し、顧客ニーズへ迅速に対応できる基盤を整えたことで、今後はさらなるデジタル施策を推進できる。テラスカイもそうした日立ハイテクノロジーズのサービス改善を支えていく構えだ。

  • 複数に分散していた顧客接点を統合して情報を一元管理し、顧客満足度の向上に向けた取り組みを加速した株式会社 日立ハイテクノロジーズ

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