アクティフィオは9月19日、「Actifio Data Driven Tokyo 2018」を都内で開催した。同イベントは今年6月に米国マイアミで開催したプライベートイベント「Actifio Data Driven」の日本版で、会場は立ち見が出るほど盛況だった。ここでは、データ仮想化の最新トレンドと最新ソリューションが紹介された。

国内ユーザー企業が1年で倍増! リピート率は70%超に

データ仮想化ソリューションを世界30ヶ国以上で展開するActifio。日本開催となった今回のイベントにはユーザー企業やパートナー企業が参加した。用意された席がほぼ満席になり、立ち見が出るなど、新コンセプト「データ仮想化」への関心の高さを伺わせるものとなった。最新ソリューションの紹介と国内ユーザー事例を中心に6つのセッションが実施された。

開催に先立ち挨拶に立ったアクティフィオジャパン代表社長 勝俣正起氏は「2009年の設立から9年がたち、ユーザー企業とパートナー企業はグローバルで3,000社を超えました。国内では2017年から倍の200社となり、リピート率は70%超です。年間成長率(CAGR)は78%で、8月には追加増資も行われました」と話し、グローバルでも成長を続け、国内でも大きな盛り上がりを見せていることを紹介した。

  • アクティフィオジャパン代表社長 勝俣正起 氏

    アクティフィオジャパン代表社長 勝俣正起 氏

Actifioの製品は、金融や通信、ヘルスケア、官公庁、エネルギー、製造など、多彩な業種で採用されている。大きく「レジリエンシー」「アジリティ」「クラウド」という3つの分野で製品を展開し、それぞれが大きく成長しているという。勝俣氏は「市場は2兆円規模に成長する見込みです。国内でもパートナーとともにソリューションを展開していきます」と意気込みを述べた。

事業継続性を高め、サイバー攻撃からの回復力を高める

開幕講演となったのは、米Actifioの共同創業者 兼 製品開発担当副社長のデイヴィッド・チャン氏による「Actifioの考える『クラウド活用』と『サイバー攻撃対策』」だ。チャン氏はまず、最近の企業ワークロードの変化について「アプリケーションはSaaSに、インフラはIaaS/PaaSに移行しましたが、こうした変化はデータにも起こっています」と指摘した。

  • 米Actifio 共同創業者 兼 製品開発担当副社長 デイヴィッド・チャン 氏

    米Actifio 共同創業者 兼 製品開発担当副社長 デイヴィッド・チャン 氏

データは、ビジネスの根源となるものだが、現状では課題が多いという。具体的には、インフラにロックインされることやステートフルであること、ライフサイクル管理やセキュリティ、コンプライアンスが不十分であることなどだ。そうしたなか、Actifioのソリューションは「オンプレミスやハイブリッドクラウド環境におけるデータマネジメントにおいて、スピード、規模と柔軟性、コストといった優位性を提供できる唯一の製品となるものです」とチャン氏は強調する。

例えば、オンデマンドの仮想データプロビジョニング機能を活用すれば、ユーザーはセルフサービスでデータに即時にアクセスできるようになる。また、コスト面でも仮想コピー機能などを使えばクラウド上でデータ保護(スナップショットやバックアップ)を実装するのに比べ5分の1で済む。クラウド環境にコピーしたVM起動やポリシーによるSLA管理などユニークな機能を持ち、マルチクラウド環境に対応するなど、エンタープライズクラスの拡張性を備える。

「クラウドへの期待を現実にするものがActifioです。クラウドとあわせてもう1つ、企業が取り組む必要があるテーマがあります。サイバー攻撃に対するレジリエンシー(回復力)です。Actifioはサイバーレジリエンシーに対しても、有効なソリューションとなります」(チャン氏)

チャン氏はActifioのユーザーとして米国のサービス事業者やエネルギー企業、医療機器メーカーの事例を用いて説明。また、セキュリティのレジリエンシーを強化した事例として、米国の金融会社の取り組みを紹介した。

「Actifioはクラウド環境のデータ保護、コンプライアンス、運用効率性を強化することができます。また、サイバー攻撃などからの回復力を高め、業務を即時にリカバリーできるようにします。たくさんの企業がその効果を実感しています」と最後に訴え、講演を締めくくった。

グローバル3,000社が利用するActifioが提供する4つの導入効果

続いて、米Actifioマーケティング最高責任者 ブライアン・リーガン氏が登壇。「データ仮想化戦略 - 海外企業の先進事例」と題して、海外の先進的なユーザーの取り組みを紹介した。

  • 米Actifio マーケティング最高責任者 ブライアン・リーガン 氏

    米Actifio マーケティング最高責任者 ブライアン・リーガン 氏

リーガン氏はまず、デジタルビジネスが進む中で、多くのベンチャー企業がデータを使って急成長を遂げていることを挙げ「データは市場に大きな変革をもたらす武器です」と指摘した。しかし、こうした武器は、旧来のエンタープライズ企業にとっては自らのビジネスを脅かす"大量破壊兵器"にもなりえる。そこで、既存企業は、既存のデータへのアプローチを変えていく必要があるという。

「OracleやSAP、SQL Serverといったデータベースはビジネスアプリケーションの根幹です。ただ、これらはコストや容量、拡張性などの点で大きな課題を抱えています。Actifioはこれらを『テストデータ管理/Dev&テスト』『バックアップと障害復旧』という側面から解決します」(リーガン氏)

リーガン氏は、製品導入の実際の効果として「コスト削減と回復」「リスクと時間の削減」「拡張性のある可視性と制御」「アプリケーションのモダナイゼーション/アクセラレーション」の4つがあると指摘し、それぞれについて企業がどのような取り組みを実施したかを紹介していった。

例えば、コスト削減では、データをアクセス頻度ごとに階層化し、SLAベースで自動管理することでコスト削減した航空会社などがある。また、リスク回避では、データの複雑性を排除したエネルギー企業や、マルウェア攻撃からの回復力を高めた公共企業などがある。可視化と制御については、データーセンターをグローバルで統合した金融業やテレコム事業者を紹介した。アプリケーションについては、セルフサービスで開発サイクルを高速化した銀行や、シフトレフトを実現した保険業などがある。

「Actifioは企業全体のデータ戦略を構築するために最適なData as a Serviceソフトウェアプラットフォームです。データの課題はレガシーなツールで対応することが難しくなっています。ActifioのSLAベースの自動化/オーケストレーションを使って、企業全体のデータ戦略を構築し、実施していってください」と、最後にリーガン氏は訴えた。

パナソニックグループのデータ移送基盤として導入を推進中

ユーザー事例講演やパートナー講演には、パナソニック インフォメーションシステムズ、富士通、東北電力、日立製作所、日本IBM、ニッセイ情報テクノロジーの6社が登壇。さまざな事例を紹介しながら、データ仮想化がユーザーにとって貴重な選択肢になっていることを紹介した。

パナソニック インフォメーションシステムズ エンタープライズソリューション事業部 総括 横須賀武士 氏

パナソニック インフォメーションシステムズ エンタープライズソリューション事業部 総括 横須賀武士 氏

パナソニック インフォメーションシステムズの講演では、エンタープライズソリューション事業部 総括 横須賀武士氏が「新たな仮想化技術への挑戦 ~コピーデータ技術でお客様貢献を目指す~」と題して、パナソニックグループにおけるITインフラ再構築の取り組みを紹介した。

パナソニックでは、2002年から仮想化技術を用いて、サーバ仮想化やシンクライアント、リモートPC、デスクトップ仮想化、ネットワーク仮想化などを進めてきた。その一環で2015年から取り組んだのがActifioを使った「コピーデータ仮想化」だ。

「社内ではシステム更改などにともなうデータ移送プロジェクトでの利用検討を進めています。絶対に欠損がゆるされない本番データを安全に移行させることが事前検証において確認できています。また、一般市場のお客様向けサービスとしても、DRサイト構築でActifioを活用し、手順の簡素化やデータ量の削減、速やかな業務再開につなげています。コピーデータはバックアップデータにはない新しい価値を生み出します。データドリブンな時代にマッチしたソリューションです」(横須賀氏)

富士通がサポートする東北電力の基幹システム刷新

東北電力 ビジネスサポート本部 情報通信部 主任 板屋越直之 氏

東北電力 ビジネスサポート本部 情報通信部 主任 板屋越直之 氏

続いて、東北電力 ビジネスサポート本部 情報通信部 主任 板屋越直之氏と富士通 プラットフォーム技術本部プロダクトソリューション技術統括部 部長 佐藤雄彦氏が登壇。「データ仮想化技術の利活用による同時並行開発環境の実現」と題する講演を行った。

東北電力では、2020年の法的分離への対応に向けて、基幹システムをメインフレームからオープンシステムに刷新するプロジェクトを稼働中だ。そのなかで同時並行開発が求められるようになり、Actifioを活用して、プライベートクラウド環境下での同時並行開発を実現したという。

富士通 プラットフォーム技術本部プロダクトソリューション技術統括部 部長 佐藤雄彦氏

富士通 プラットフォーム技術本部プロダクトソリューション技術統括部 部長 佐藤雄彦氏

板屋越氏は「Solarisオープン環境でプライベートクラウド基盤を構築し、データマネジメント基盤にActifioを採用しました。電力系システムには安心・安全が求められます。富士通のクラウドサービスのバックエンドとして使われているという実績やデータマネジメントする機能に特化していることを評価して採用を決めました」と説明した。

また、富士通の佐藤氏は「Ansibleを活用して自動化を施しています。ゴールデンコピーを活用し、複数の開発・テスト環境を提供したり、開発対象外システムも含めて統合テストを実現したりしています」と解説。複数面のテスト環境を迅速に構築して提供できることや、時間短縮、品質確保の効果が現れたことを受け、今後、他部門のシステムへの横展開も検討していく予定だという。

DBライセンスコストを低減する日立のソリューション

日立製作所 IoT・クラウドサービス事業部 データマネジメント本部データベースサービス部 スペシャリスト 笹岡勇佑 氏

日立製作所 IoT・クラウドサービス事業部 データマネジメント本部データベースサービス部 スペシャリスト 笹岡勇佑 氏

日立製作所の講演では、IoT・クラウドサービス事業部 データマネジメント本部データベースサービス部 スペシャリスト 笹岡勇佑氏が「開発現場を支える! 日立のDBデータ再利用ソリューション」と題して、日立が提供するサービスの特徴を紹介した。

笹岡氏はまず、ユーザーの間では業務開発サイクルの短縮化が大きな課題になっていることを挙げ、具体的なニーズとして、本番データをテストに活用すること、開発環境を増やして開発効率を挙げることが求められていると指摘した。

「こうした課題に対し、Actifioは本番データの連携や素早いデータ配布、仮想コピーによるストレージコスト低減という効果をもたらします。ただ、データベース管理者の視点で見ると、課題が残ります。それは、データベースのライセンスコストとセキュアなデータ連携です」(笹岡氏)

日立では、これらを解決できるという。まずライセンスコストについては、Actifioが備える世代管理機能と、日立の年単位で利用可能なOracleライセンスサポートを組み合わせて対応する。また、セキュアなデータ連携については、ActifioのLiveクローン機能と既存のマスキングツールを活用して、データをマスキングした開発環境を効率的に配布できる。笹岡氏は、これらをパッケージ化した「DBデータ再利用ソリューション」を紹介した。

ニッセイ情報テクノロジーを支える日本IBMのソリューション

日本IBM ビジネス・レジリエンシー・サービス事業部 ソリューション企画 部長  内山豊和 氏

日本IBM ビジネス・レジリエンシー・サービス事業部 ソリューション企画 部長 内山豊和 氏

最後の講演となったのは、日本IBMとニッセイ情報テクノロジーによる「データ仮想化技術を活用したシステム復旧の自動化」だ。まず、日本IBM ビジネス・レジリエンシー・サービス事業部 ソリューション企画 部長 内山豊和氏が、システム復旧の課題として「システム数が多いこと」「切り替えテストに時間がかかること」があると指摘。それに対して、IBMが提供している「IBMレジリエンシー・オーケストレーション」を紹介した。

同製品には、ダッシュボード、ワークフロー、ドライ・ラン(本番サイトでのリハーサル機能)、レポーティングなどの機能があり、これらとActifioを連携させることで、迅速な事業継続が可能になる。このソリューションを実際に検証したのが、日本生命グループにインフラソリューションを提供するニッセイ情報テクノロジーだ。

ニッセイ情報テクノロジー インフライノベーション事業部 主席スペシャリスト 伊丹康雄 氏

ニッセイ情報テクノロジー インフライノベーション事業部 主席スペシャリスト 伊丹康雄 氏

ニッセイ情報テクノロジーのインフライノベーション事業部 主席スペシャリストの伊丹康雄氏は「弊社のプライベートクラウドの効率化を目的に2015年にActifioを導入していました。今回はIBMレジリエンシー・オーケストレーションとActifioを用いて、DRサイトからの復旧の自動化による効果を確認しました。Actifioとの連携によるさらなるデータ活用が可能になります」とIBMとActifioの連携を高く評価した。

会場に設けられた展示ブースには、登壇企業のほか、クラウディアン、ビュア・ストレージ・ジャパン、インサイトテクノロジーのソリューションが展示された。ベンダーセッションやパートナーセッションのなかで数々の事例が紹介された今回のイベント。創業9年のベンチャーにIT業界トップの企業がスポンサーとして参加したことは、これまでの実績と今後のさらなる成長を裏付けていた。会場は最後まで熱気に包まれていた。

[PR]提供:アクティフィオ