激化するSSD市場の競争にあって、世界の多くの地域でトップシェアを獲得しているのが、サムスンのSSDだ。世界のSSD市場で40%以上のシェア(OEM含む)を獲得しているだけでなく、SSDにさまざまな革新をもたらし、SSDのトップメーカーとして普及に大きな役割を果たしている。

韓国・サムスン電子は毎年の夏(2012年以来)、SSDの新製品発表会「Samsung SSD Global Summit」を開催している。3回目となる今年(2014年)は、新製品「Samsung SSD 850 PRO」および、それに搭載されている世界初の3次元構造NANDフラッシュ「3D V-NAND」の技術解説が行われた。詳細は以下の関連記事を参照してほしいが、850 PROの国内販売は2014年9月中旬に始まっている。今回は、日本サムスンでSSD事業を担当している岡田圭介氏にインタビューする機会を得たので、3D V-NANDの利点や今後の展開についてうかがった。

Samsung SSD 850 PRO

3D V-NAND採用の超高速2.5インチSSD - 「Samsung SSD 850 PRO」の性能を検証
「Samsung SSD 850 PRO」が搭載する3D V-NANDとは - 2014 Samsung SSD Global Summit技術プレゼンより

サムスンがNANDフラッシュにもたらした3つの革新

日本サムスンの岡田圭介氏

―― 850 PROが日本でも販売開始されましたが、ユーザーの反応はいかがですか?

岡田氏「現行世代のSSDの中でも、性能と信頼性に秀でたハイエンド製品なので、やはりコアユーザーやプロシューマーの皆様から大変ご好評をいただいております。」

―― 850 PROは、コンシューマー向けSSDとして世界で初めて3次元構造のNANDフラッシュ「3D V-NAND」を採用したことが最大の特徴ですが、3D V-NANDについて教えてください。

岡田氏「サムスンは、これまでにもNANDフラッシュの技術革新を実現してきました。数々の新しい技術によって、NANDフラッシュの制約や弱点を克服してきたのです。3D V-NANDにおける革新は、『Material(材料)』『Structure(構造)』『Integration(集積)』の3つです。」

サムスンがNANDフラッシュにもたらした3つの革新

岡田氏「まず材料ですが、当初のNANDフラッシュは、Conductor(伝導体)に電荷をチャージしていました。サムスンは2006年に、電荷をチャージする材料をInsulator(絶縁体)に変え、CTF(Charge Trap Flash)と呼ばれる新たな仕組みのNANDフラッシュを開発しています。従来のフローティングゲート構造(FG)からCTFに変えることで、電荷のリークが減り、さらなる微細化が可能になりました。

構造の革新として、セルを平面構造(2D)から、円筒型に構造を変えました。そして、3つ目となる集積の革新によって、円筒形のセルを垂直に集積することに成功しました。これが世界初の3次元構造NANDフラッシュ『3D V-NAND』です。2013年に発表した最初の3D V-NANDでは24層を垂直に集積しています。3D V-NANDは、NANDフラッシュの新たな時代の幕開けともいえる、歴史的なものとなるでしょう。」

材料の革新として、電荷をチャージする材料を伝導体から絶縁体に変えた

電荷をチャージする仕組みを、フローティングゲート型からCTFに変えた

次に「構造」の革新として、セルを円筒型に構造を変えた

最後が「集積」の革新であり、セルを垂直に積層することに変えた