【レポート】

「Samsung SSD 850 PRO」が搭載する3D V-NANDとは - 2014 Samsung SSD Global Summit技術プレゼンより

既報の通り、韓国サムスン電子は1日、「3D vertical NAND」(V-NAND) フラッシュメモリを搭載した、コンシューマ向けのSATA3.0(6Gbps)対応2.5インチSSD「Samsung SSD 850 PRO」を発表した。発表イベントの「2014 Samsung SSD Global Summit」も韓国・ソウルで大々的に開催され、そこで解説された3D V-NANDの技術面についてお伝えする。Samsung SSD 850 PROの製品概要、2014 Samsung SSD Global Summitの様子は、以下の別記事を参照いただきたい。

■Samsung、V-NAND採用の新型2.5インチSSD「Samsung SSD 850 PRO」
■【レポート】SATA 6Gbpsの限界か? - 新型SSD「Samsung SSD 850 PRO」の日本発売は7月下旬から8月上旬

Samsung SSD 850 PRO

3D V-NANDの技術概要とウエアの展示

3D V-NANDの技術解説を行ったのは、韓国サムスン電子のSenir Vice President, Flash Design Team、Kye Hyun Kyung氏

NANDフラッシュメモリの内部には、データを書き込む「セル」がびっしりと並び、従来のNANDフラッシュメモリは平面方向(2D)にセルが敷き詰められている。今回、サムスン電子が採用した3D V-NANDは、平面方向に加えて、垂直方向(3D)にもセルを積み上げる技術だ(または、3D V-NAND技術を用いたNANDフラッシュメモリ自体を指す)。米SanDiskや東芝も同様の技術とNANDフラッシュメモリを開発しているが、製品として市場に投入したのはサムスン電子が初となる。

HDDと同じように、NANDフラッシュメモリも大容量化とコストダウンが求められており、プロセスルールの微細化や多ビット記録によって、その要求に応えてきた。多ビット記録とは、1つのセルに2bitや3bitの情報を記録する技術だ。2bitは「MLC」、3bitは「3bit MLC」や「TLC」と呼ぶ。

プロセスルールの微細化は、現在は1x nm世代(だいたい19nm)が主流で、1y nm世代(15nm~18nm)、1z nm世代(13nm程度)までは可能といわれている。多ビット記録については、3bit MLCのNANDフラッシュメモリを搭載したSSDを、やはりサムスン電子が「Samsung SSD 840」として2012年9月に発表した(日本では2012年10月に発売)。

現在、サムスン電子が持つ128Gbitの3bit MLC NANDフラッシュメモリ。430億ものセルが詰まっている

ところが、こうした技術にも限界が見えてきている。プロセスルールを微細化しすぎると、セルとセルの干渉が大きくなり、データを正常に記録できなくなる。多ビット記録も同様だ。NANDフラッシュメモリは、セル内の電荷量によってデータを判別しているが、2bitなら4通りの電荷量、3bitなら8通りの電荷量を正しく見分ける必要があり、4bitになると16通りだ。

プロセスルールの微細化とも相まって、ごくごく小さな電荷量の違いを判別するのは難しくなる。また、NANDフラッシュメモリは書き換え回数に寿命があり、2bitより3bit、3bitより4bitのほうが寿命は短い。書き換えを繰り返すことで、徐々に電荷量の境界(しきい値)があいまい化し、リードエラーが頻発したり、データ化けが発生したりするようになる。

NANDフラッシュメモリにおけるプロセスルール微細化と容量(写真左)。30nmクラスの製造プロセスでは、セル間の干渉がない(写真右)

より微細化した1x nm世代のフラッシュメモリでは、セル間の干渉が危険なレベルに(写真左)。Kye Hyun Kyung氏は、セル間の干渉を隣家の騒音に例えた。家と家の距離が近くなると(プロセスルールの微細化)、小さな音でも互いに聞こえやすくなる

NANDフラッシュメモリやSSDを飛躍させる3D V-NAND技術

こうした限界を突破するのが、3D V-NAND技術だ。発想自体は単純で、これまでのNANDフラッシュメモリをそのまま、垂直方向に積み重ねる。今回の2014 Samsung SSD Global Summitで3D V-NANDをプレゼンテーションしたKye Hyun Kyung氏によると、サムスン電子は2008年に3D V-NANDの基本的な開発を終え、以降は「NANDフラッシュメモリの多層化」に取り組んできた。

3D V-NANDのセル構造(写真左)と多層化の歴史(写真右)

従来の2D NANDフラッシュメモリと、3D V-NANDの模式図

そして、2011年に8層化、2013年に24層化、2014年には32層化を達成。今回発表された新型2.5インチSSDでは、コンシューマ向けのSamsung SSD 850 PROが32層の3D V-NANDフラッシュメモリを、データセンター向けの「Samsung SSD 845DC PRO」が24層の3D V-NANDフラッシュメモリを搭載している。

Kye Hyun Kyung氏は、3D V-NANDを「エレベーター」に例えた。積み重なったNANDフラッシュメモリの層(レイヤー)は、チャンネルホールによって接続されている(写真左)。128Gbitの3D V-NANDフラッシュメモリ(爪の先ほどの大きさ)には、25億個ものチャンネルホール(穴)が空いている。多層になるほどチャンネルホールの形成が難しくなり、高度なエッチング技術とプロセスが必要という

24層化の段階で、1チップあたり128Gbitの容量を実現しており、2015年には1チップあたり256Gbit、将来的には1チップで1Tbitのロードマップを描く。Samsung SSD 850 PROが搭載する3D V-NANDフラッシュメモリの具体的なプロセスルールは明らかになっていないが、30nmクラスとのことだ。このNANDフラッシュメモリが、1μmほどの間隔で垂直方向に積み上げられている。

従来型の2D NANDフラッシュが19nm程度の製造プロセスであることを考えると、30nmというのはかなり集積度が低い。それでも1チップで128Gbitの大容量であることが、3D V-NANDの威力を物語る。さらに技術が進み、より微細化プロセスのNANDフラッシュメモリを、1μmより狭い間隔で積層することによって、1チップで1Tbitが見えているのだろう。そんな3D V-NANDのポテンシャルをひしひしと感じたプレゼンテーションだった。

3D V-NANDフラッシュメモリのロードマップ。将来的には、実に100層のNANDフラッシュメモリを重ね、1チップで1Tbitの容量も不可能ではない

従来の2D NANDフラッシュメモリは、プロセスルールの微細化と大容量化が頭打ちになっている

また、現在の余裕ある3D V-NANDの設計は(少々語弊はあるが)、Samsung SSD 850 PROの高耐久性と長寿命をもたらしている。Samsung SSD 850 PROは10年の長期保証で、TBW(Total Byte Written)は150TB、デイリーワークロードは40GBだ。1日に40GBの書き換えを行っても、10年の保証が受けられる。40GBの「書き込み」ではなく「書き換え」だ。PCの使い方によるとはいえ、毎日これだけの容量を「書いたり消したり」するユーザーは、ほとんどいないのではないだろうか。

速度面と電力面でも、3D V-NANDは優れている。2D NANDフラッシュメモリと比較して、3D V-NANDフラッシュメモリは制御アルゴリズムがシンプルという解説があった。これにより、従来のSD NANDフラッシュメモリより約2倍の高速性と、約46%ダウンの省電力性能が得られたという。

制御アルゴリズムがシンプルな3D V-NANDフラッシュメモリは、速度と省電力、耐久性(寿命)において、従来の2D NANDフラッシュメモリよりも有利

2012年に「Samsung SSD 840 PRO」がリリースされたとき、当時の数ある2.5インチSSD製品の中で、頭一つ抜けた性能だった。もちろん現在でも最速クラスに名を連ねる。今回のSamsung SSD 850 PROに関する詳しいレビューは後日お届けするが、SATA3.0(6Gbps)の限界とも思える素晴らしい性能を出した。こちらも期待いただきたい。

2014 Samsung SSD Global Summitの会場でデモされていた、Samsung SSD 850 PROのベンチマーク(CrystalDiskMark 3.0.1 x64)。編集部で行ったテストでは、もっと良いスコアが出ている。環境が違うので一概にはいえないが、詳細なベンチマーク結果は後日お届けしたい

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