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3500人もの教職員が参加! 国立大初となる東工大のSlack活用事例

【連載】

Slackで始める新しいオフィス様式

【第3回】3500人もの教職員が参加! 国立大初となる東工大のSlack活用事例

[2021/07/01 13:00]高木望 ブックマーク ブックマーク

チーム・コミュニケーションを円滑にするビジネスのサポートツール「Slack(スラック)」。コロナ禍におけるリモートワーク文化が進んだことも相まり、近年は多くの企業が導入を始めている。では、Slackはどのように企業のコミュニケーションを円滑にしているのだろうか。今回は、国立大学で初めてSlackを全教職員に導入した東京工業大学(以下・東工大)の事例を紹介する。

Slackはサステナビリティの高いツール

2021年 、東工大では「DX元年」と称し、教育や研究のデジタル活用、デジタル業務改革推進のための 「DX推進室」を設立した。その中で、より大学内にSlackやBoxを活用したデータ管理やオープンコミュニケーション を浸透させるべく結成されたのが「Slack+Box業務活用検討プロジェクトチーム」だ。

チームは異なる部署から集まった9人の有志スタッフを中心に 編成されており、Slack、Box、Zoomといったツールの活用方法を現場内に発信する役割を担っている。

Slackが事務職員内に正式導入されたのは2021年2月。その後、5月からは教職員や技術職員(エンジニア)らにもSlackアカウントが付与され、現在約3500人もの職員がSlackを利用している。

ただ、導入の準備はその1年前である2020年4月頃から始まっていた。事務職員のDX活用サポートを行う情報基盤課主任・池谷圭太氏によると、当初は複数のチャットツールを試行しながら、徐々に候補を絞り込んでいったという。

「複数のチャットツールを100人前後の職員にお試しで使ってもらい、それぞれの使用感についてアンケートを取っていました。それ以前はメールベースでのコミュニケーションが中心だったので、チャットツールを導入すること自体を喜ぶ声も多かった印象でしたね。というのも、実はその時点でSlackを業務内外で活用している職員が半数以上いたのです。すでに馴染みのあるツールだった、というのはSlackを採用する大きなポイントでした。他のチャットツールが使いにくかった、というわけではないのですが、アンケートでは『Slackは使っていて楽しい』『Slackが使いやすい』という声が多かったです。そこで昨年の秋頃に導入を決定し、今年から段階的に利用者を増やしていきました」(池谷氏)

Slackで始める新しいオフィス様式 第3回

東京工業大学 情報基盤課 主任の池谷圭太氏

また、東工大がコミュニケーションツールとしてSlackを導入した背景には、セキュリティ面も関係していた。学術国際情報センターの准教授として教鞭を執りながら、学内のセキュリティ業務にも携わる東京工業大学 学術国際情報センター 准教授/東工大CERT(Computer Emergency Response Team)統括責任者/副CISOの松浦知史氏は、Slackを選んだ理由のひとつに「サステナビリティの高さ」を挙げる。

Slackで始める新しいオフィス様式 第3回

東京工業大学 学術国際情報センター 准教授/東工大CERT統括責任者/副CISOの松浦知史氏

東工大では情報保護のため、学内のシステムへログインする際に独自の二段階認証システムを採用しており、「既存の二段階認証の枠組みを当てはめることのできるツールが良い」という声は職員内からも上がり、運用負荷が高まってしまうようなツールはなるべく避けていた。

一方で、Microsoft TeamsのようにMicrosoftの他のツールと連携しやすいサービスも検討はしていたが、それもそれで新しいツールに乗り換えにくくなり、将来的な融通が効かなくなることを懸念していた。

「Slackであれば、他のチャットツールに移行しなければならない状況が訪れる時も『身動きが取れなくなる』なんてことはありません。SAML(Security Assertion Markup Language)対応を行えば東工大の認証ツールと連携できますし、東工大や特定の企業との限定的なメンバーの中で安全にコミュニケーションも行えます。加えて、池谷も述べたとおり現場からの評価も高かったので、最終的にSlackの導入が決まりました」(松浦氏)

ルールやマニュアルだけでは浸透しないからこそ、インクルーシブな取り組みが必要

東工大が職員に開放しているワークスペースは1つのみ。業務に基づいたコミュニケーションを行うために、まずプロジェクトチームは部門や課ごとに大枠の「#general」チャンネルを用意した。そしてアクセスに制限をかけながらも、各職員らが業務内容・プロジェクトに応じて自由にチャンネルを作成できるような仕組みで運用を行なっている。

主に役員会や教育研究評議会などの重要な意思決定会議の運営、キャンパス内の部門を横断するような緊急事態時の対応、文科省からの大規模な調査依頼の進行などをSlack上で行なっている。特に多くの関係者が連携して対応する必要があるタスクは、執行部と事務局の連携が取りやすくなったことからSlack導入以前よりも処理スピードが格段に向上したという。

その一方で、柔軟な運用ルールの策定や併用するコミュニケーションツールとの差別化が必要、という声も多かった。特にメールと並行して利用することによる業務負担増などを心配する声は、職員から少なからず上がったという。

そこでDX活用推進プロジェクトチームでは、教員と事務職員らで協力しながらガイドラインやポリシーを作成。企画・評価課の寺尾佳織氏は「強制するのではなく、インクルーシブ(包摂的) にマインドを変えられるようなルール作りを意識しました」と振り返る。

Slackで始める新しいオフィス様式 第3回

東京工業大学 企画・評価課 スタッフの寺尾佳織氏

法律の役割を担うガイドラインのほかに、利用上のマナーやルールを記したポリシー・ルール、それらをかみ砕いたSlackサポートページなど、使いこなすためのハウツーやマインドセットができる資料は細かに整理した。

Slackで始める新しいオフィス様式 第3回

各チャンネルの役割を解説するガイドライン

プロジェクトチームで特に意識しているのは、利用者をしっかりと巻き込むことと、チームケミストリーを起こすことであり、きちんと対話をしながら職員を1人も取り残さない、つまり”インクルーシブ” は導入時からコンセプトとして重視していたという。

「大学職員って一般的には受付窓口のようなイメージがあると思いますが、実際には幅広い仕事があります。職種が違うと、Slackの操作で抱える困りごとも違ってくるのです。Slackのヘルプチャンネルで質問対応をしていて、改めて『それぞれの職員にあったインクルーシブなソリューションを考えること』は、われわれの課題だなと思いました。ただ、プロジェクトチームに多様な部署の人間がいるのは功を奏しています。学生・留学生の窓口対応を担当する職員から、教員のそばにいる職員もいる。特定の分野の専門家もいるので、部署横断で細かな課題解決を行えるのは、運営面で大きいかもしれません」(寺尾氏)

同じくチームメンバーとして活動する施設総合企画課グループ長・平山隆広氏は、実際にオフラインでスタッフとコミュニケーションをとりながら、”現場の声”を運用に反映させていった。

Slackで始める新しいオフィス様式 第3回

東京工業大学 施設総合企画課 グループ長の平山隆広氏

Slackを使ったことのない教員も多くいたことから、あらゆるステータスの人が広くSlackを楽しめるよう、サポートページなどを作成し、ログインの仕方からプロフィール登録、利用時のマナーなど、かなり細かくマニュアルを作成。また、管理職向けの心構えや、チュートリアルを行えるページなども作成した。

Slackで始める新しいオフィス様式 第3回

ガイドラインではSlack初心者でも基本的な機能が分かるよう、細かな解説がされている

「ただ寺尾の言った通り、ルールやマニュアルを作るだけではツールが浸透しません。どの程度現場に浸透しているかを確認するためにも、今でも部署を回りながら、なるべく声がけやヒアリングをしています。いま気になっているのは、職員の中でSlack活用の成熟度に差が出てしまっていること。ツールの使い方がわからない人をわれわれが積極的にすくいあげながら、すでに活用できている人にはワークフロービルダーの応用方法をレクチャーするなどして、大学内での浸透度を底上げしようとしているところです」(平山氏)

会話は資産になり、Slackそのものがナレッジの宝庫になる

現在、東工大のSlackワークスペースでは3500人以上が閲覧、という「やや緊張してしまいそう」な状況下でも遠慮なく質問が飛び交い、情報交換がなされている。なんと現場職員だけではなく学長や理事、部長 などの上層部も会話に参加するという。

世の中で”DX”という言葉が流行り始めた頃から、東工大でもDXにまつわる取り組みがスタートしたが、バズワードに翻弄されないよう「どういった体制を組みたいか、自分たちが大切にしていることは何か」は常に意識した。

コロナ禍も後押しし、結果的にSlack導入をはじめとするDX活用を全力で推し進めることになりましたが、正直ここまでのスピード感をもって業務改革を行なったのは初めてだと思います。

ボランティアとしてさまざまな部門のスタッフが自発的に集まり、人を巻き込みながら環境を整えていったからこそ、全学的な大きい取り組みとして成立したのかな、と。すごく東工大らしい事例だと感じています。

またITに疎い年配の職員からも『Slackの使い方について相談したい』とダイレクトに僕へ連絡が来たりします。彼らが新しいモノ・コトを疎まず、積極的に活用していることも、現場にツールが浸透することの後押しになっています」(松浦氏)

Slackで始める新しいオフィス様式 第3回

直近ではワークフロービルダーを活用し、契約関連のやりとりや簡単な質疑応答など、Slackの中で自動化できる作業を増やしていくという

では、今後Slack+Box業務活用検討プロジェクトチーム が中長期的にSlackを活用し、実現したいこととはなんだろうか。この点について、松浦氏は産学連携が視野に入っているという。

東工大は産業界との繋がりが強く、常に多くの共同研究を行っており、Slackコネクトも活用し、段階的にコミュニケーションの幅を広げていきながら、安全で効率の良い枠組みを作り上げることを検討している。さらに、予算の問題もあるものの、学生の参加に対する要望は多く、検討を重ねている。

「導入当初、Slackはチャットツールだと思っていたのですが、実際に運用を進めるうちに『Slackの会話は資産なんだ』と思うようになりました。会話を重ねることでナレッジが蓄積され、検索をかければ情報にアクセスできます。課題を解決できるだけではなく、1つの回答を他のことにも応用できるようなきっかけも生まれます。また、大学内のさまざまな職員が見ているからこそ、良い情報にはアテンションが集まりますし、新しい提案も次々と生まれます。実際、ヘルプチャンネルの担当でなくとも、横から誰かが回答を投げ込んでくれるようになりました。学内の職員とも簡単に繋がれるようになり、小さなサイクルが生まれインクルーシブネス(包摂性)が醸成されています。 だからこそ、みんなの意見が集約する場であるSlackを、資産として育てていく気持ちは保ち続けたいです」(松浦氏)

※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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