Gmailに代表されるGoogleの法人向けアプリケーション群「Google Apps for Works」は、Webやモバイルアプリ上ですべての作業を完結出来るだけでなく、”コラボレーション”を念頭に置いて開発が行われている。
「かつてのデスクトップアプリは、『個人の生産性をどれほど向上できるか』に焦点を合わせて開発されていた。一方でGoogle Appsはコラボレーションのためにデザインされている。リアルタイムで地球の反対側の人とともに仕事ができる」(米Google Google for Education 製品担当責任者 ジョナサン・ロッチェル氏)
ロッチェル氏はかつて、Google Appsの開発に携わり、その後、Google for Educationの統括担当へと変わった。これには一つの理由がある。コラボレーションを念頭に置いたGoogle Appsは、教育との親和性が高いからだ。学生は学生同士で共同作業するチーム作業を求められる単元があるし、先生から学生へ宿題の共有、情報の共有が行われていることは日常茶飯事。これらをアナログからデジタルへ移行することで、学生の生産性、つまり「勉強の効率を高められる」というのがGoogleの主張だ。
日本ではほとんど普及していない「Chromebook」というデバイスがある。これは、Google開発の「Chrome OS」を搭載したPCで、クラウド接続を前提としており、データを端末に残さない。セキュアかつ、SaaSアプリケーションですべてが完結できるため、レガシーシステムからの脱却を目指す法人ニーズに合致している。
特にアメリカで盛り上がっているのが、この教育市場であり、数百校以上がChromebookを採用。この勢いに支えられたChromebookは、iPadやMacbookの売上台数を追い抜き、同国で一定のポジションを築き始めている。これにはもちろん、Google Apps for Educationという優れたサービスの後ろ盾があっての勢いであり、こちらの利用者は6,000万人を超えているという。
BYODでClassroomを活用
Google Apps for Educationのコアは、Gmailでなければスプレッドシートでもない「Classroom」だ。日本語で「教室」を意味するClassroomは、宿題の課題作成や生徒への情報伝達、カレンダーなどの機能を備えている。
例えば、先生が宿題を作成すると、担当クラスの生徒の提出状況が表示される。課題の提出期限を設定できるため、カレンダーで期限がいつまでか確認できるし、先生は期限直前に「早く提出してね」と未提出者へ一斉レコメンドすることも可能だ。
この1月よりClassroomを利用する神奈川県鎌倉市の鎌倉学園中学校・高等学校の教諭 小林 勇輔氏によると、こうしたデジタル化にあたっての障壁はあまり存在しなかったという。
「デバイスを生徒それぞれに配るとかなりの負担となりますが、Classroomを導入した背景として『ほとんどの生徒がスマートフォンを持っている』という状況があります。これはClassroomでアンケートを取ったんですが(笑)、担当のクラスでは実に91%がスマートフォンを所有していました。残りの生徒も、自宅にネット環境が整備されており、タブレットやPCを利用できる環境にありました」(小林氏)
生徒たちがなんらかのICT環境を持ち合わせている現代においては、無理にデバイスを貸与することなく、BYODの形でICTを活用できる。これは、教職員でも同じで、同校では教職員もBYODで校内業務を行っているという。現在は、学内にWi-Fiを整備しているものの、生徒への開放は見送られている。「ガイドラインがまだ整ってない段階」(小林氏)との理由だそうだが、授業でスマートフォンなどを活用するシーンが増えれば、こうした状況も変わることだろう。(関連記事:ビッグデータが教育に与えるインパクトとは? KnewtonとClassiで広がる世界)
提出課題の一覧が見られる。課題提出状況がひと目で分かるだけでなく、未提出者へのレコメンドも、サブメニューから簡単に行える |
カレンダー機能は、生徒個人の予定も入力できるそうだが「学校で管理しているサービスであるからか、生徒はあまり使いたがらない。課題提出の確認用途がほとんど」(小林氏) |
Classroomは、ほかにもさまざまなGoogle Appsと連携できる。先ほどの課題提出の例で言えば、課題をこなした生徒が写真でノートをアップすると、Google Driveに課題のフォルダが生成され、ファイル単位での管理も行える。また学校では、体育祭などのイベントで、先生たちが記録のために写真・動画を撮影するケースが多い。今までは、カメラマンによる公式写真による配布というケースがほとんどだったが、先生たちが撮影したデータをGoogleフォトへアップするだけで、生徒や保護者へデータを簡単に共有できる。これは同校でも文化祭で試験的に取り組み、好評だったという。
Google Apps for Educationは、日本でも体制強化を進めており、鎌倉学園のような導入事例も増えてくるかもしれない。