BtoCのモバイル活用における課題と解決策(前編)

【連載】

エンタープライズモバイル活用指南

【第5回】BtoCのモバイル活用における課題と解決策(前編)

[2016/05/12 08:00]早津俊秀 ブックマーク ブックマーク

業務アプリケーション

本連載では、これまでにBtoE(自社の従業員向けのスマートデバイス活用)、BtoB(他社やその従業員向けのスマートデバイス活用)、BtoC(自社のお客様向けのスマートデバイス活用)のエンタープライズモバイルについて説明してきました。これらのうち、成功への難易度が最も高いのが前回説明したBtoCのエンタープライズモバイルです。

そこで今回と次回は、BtoCのエンタープライズモバイルを実践するうえでの課題や注意点について整理し、それらを解決する方法を説明したいと思います。

成功への難易度を高めている要因は、大きく分けて2つあります。

1. 使ってもらうことが難しい 
2. 作る(開発する)うえで注意点が多い

今回は、「1. 使ってもらうことが難しい」についてご説明しましょう。

コンシューマーの立場になって企画しているか?

サービスの提供形態がアプリの場合、ストアからコンシューマーがダウンロードする必要があります。これは、想像以上に大きな障壁です。Webベースであれば、たまたまブラウザから検索した際に知ってもらったり、使ってもらったりということができますが、アプリはそうはいきません。自発的にダウンロードして使ってもらうためには、そのアプリを使うことの明らかなメリットや価値がコンシューマーに対して必要です。航空機のチケット予約やホテルの予約決済アプリといったEC系に分類されるものはメリットや価値が明確ですがプロモーション系のアプリの場合は大きな障壁になる場合が多いです。

周囲を見渡してみると、企業がいくら「お客様にアプリを使ってもらおう」と頑張って企画したものでも、顧客にとって明らかなメリットがないものは成功していません。「ゲーミフィケーションによって、毎日使ってもらえるのではないか? 」というような安易な企画でうまくいっているところは非常に少ないと思います。

企画する側は、企画に対しての強い思い入れによって、過度に期待してしまったりすることも多いように感じます。もしくは、「今年度の施策として決まっているから」といった理由で取り組もうとしている企業などもありますが、そんな理由で始めて成功するほど簡単なものではありません。

例えば、アプリ経由で自動的にメッセージを通知する「プッシュメッセージ」という機能について、企画する側からは「プッシュメッセージで広告情報を通知できるので、大変有益だ」という話はいつも出てきます。しかし、コンシューマーの立場から見て、それが本当にメリットになるでしょうか? メリットどころか、迷惑に感じられることもあるかもしれません。この機能を搭載するのであれば、どんな情報をどんなタイミングで通知するとコンシューマーにとって有益なのかをきちんと考える必要があります。

ここでのポイントは大変簡単です。「自分がコンシューマーの立場になって考えたとき、このアプリをダウンロード/インストールして使うか? 」を想像してみてください。「自分なら、このプッシュメッセージが送られてくることが有益か? 」とシンプルに考えてみることです。

特別難しいことではないのですが、さまざまなステークホルダーが存在する企業のような大きな仕組みの中ではかえって難しいかもしれません。しかし、あくまでも一個人、一コンシューマーとして考える以外に解決策はありません。

すべてのチャネルを通じて知ってもらえているか?

コンシューマーにとって魅力的な企画ができたら、次は「どうやってそれを知ってもらうか? 」が課題となります。これに関しては、前回も触れましたが「すべてのチャネルを使い、一丸となってプロモーションする」ということが大切です。WebサイトやLINE、Facebook、TwitterなどのSNS、店舗がある場合は店舗内の広告など、すべての媒体を連動させて実施する必要があります。

加えて、こういった施策は継続して実施することがベストですが、他にもプロモーションすることが多くあるため、なかなか継続してすべてのチャネルを使えないというケースも多いでしょう。その場合は、短期集中でプロモーションを行い、継続は次に説明する「人」でカバーするというやり方があります。これらの施策は、いわゆる「デジタルマーケティング」でもフォーカスされている分野でもあるので、デジタルマーケティング施策の一環としてマーケティン部門を中心に、足並みを揃えて取り組むのも進め方の1つです。

効果的な施策を考えるコツは、皆さんがダウンロードしているアプリを見てみることです。その中に、企業がプロモーションの目的で提供しているアプリはありますか? そのアプリはどういった時に知って、どういった時にダウンロードしましたか? 筆者の例でお話すると、小売店の店舗のポスターを見て知って、レジで会計をする前にダウンロードしてから会計をしたり、電車内の広告を見てダウンロードしたりすることなどがありました。そういったヒントを自分の経験や周りの方から数多く聞いて取り組むことが一番です。

従業員も重要なチャネルとして取り組んでいるか?

使ってもらうための最後のポイントは、「人との連動」です。例えば、店舗の店員が接客中や会計時にお客さまにアプリの利用を勧めたり、営業が取引先の社員に勧めたり、といった具合に、日々の人の活動の中で継続的に浸透させていくことも大変有効な手法となります。最初は教育などのコストと時間がかかりますが、一度浸透するとデジタルマーケティングのように継続的なコストはほとんどかかりませんし、人から直接教えてもらうのは非常に確率の高い方法です。

全国展開されている「無印良品」や「ユニクロ」の店舗などは、非常にうまく教育されている事例だと思います。会計時にアプリの画面からバーコードを読み取ったり、アプリをダウンロードしていないお客さまに手際良く説明したりと、煩雑になりそうな業務をまったく違和感なく、スムーズにこなしています。従業員の継続的な取り組みとしては大変参考になる例だと言えるでしょう。

今回の内容をまとめると、使ってもらうためには企画部門、マーケティング部門、業務オペレーション部門といった各組織がしっかり考えて取り組む必要があり、かつ、それらの組織が横断で全社的に取り組むことが大切です。

* * *

以上、今回はBtoCのエンタープライズモバイルの成功を阻む要因の1つとして「1. 使ってもらうことが難しい」を挙げ、その解決策について解説しました。もう1つの要因である「2. 作る(開発する)うえで注意点が多い」ことについては、システム部門が中心になって取り組み、解決していかなければならないところです。こちらに関しては、次回ご説明しましょう。

早津 俊秀
企業のUX・モバイル活用の専門企業であるNCデザイン&コンサルティング株式会社を2011年に起業。ITアーキテクチャの専門家とビジネススクールや国立大学法人等、非IT分野の講師経験をミックスして、ビジネス戦略からITによる実現までをトータルに支援できることを強みとする。

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