前回、具体的な製品やサービスを紹介しながら、自社のニーズにマッチしたCRMアプリケーションを選ぶためのポイントを整理しました。今回は「どのように購入するか」といった視点から、引き続きCRMアプリケーションの選び方について考えてみましょう。

自社の営業プロセスやツールを使う目的、ゴールに合った製品を選ぶのが重要だとは言え、実際に製品を購入・導入するとなると、また違った制約が生じます。

自社で導入する場合

クラウド型で提供されるCRMアプリケーションを選択した場合、オンラインで申し込んですぐに利用することができます。トライアル期間を設けている場合もあるので、気になるサービスがあればぜひ試してみましょう。前回も紹介しましたが、「Zoho CRM」であれば10ユーザーまで無料で利用できますし、月額払いを選択してスポット利用する方法もあります。

また、CRMアプリケーションではなくクラウド型の「Google Apps」や「Office 365」、あるいは名刺管理の「sansan」のようなサービスを選んだ場合も同様に、オンラインで申し込めます。使い方については、Web上に解説記事や動画などがたくさんありますし、多くの場合、便利なテンプレートが無償もしくは有償で提供されています。

なお、さまざまな角度から検討した結果、CRMアプリケーションは不要であり、さらにすでに購入・利用している製品、例えばMicrosoft Officeなどの利用で十分だという結論になることもあるはずです。そうした場合は、すぐに頭を切り替えて、テンプレートや運用ルールを作ることにとりかかりましょう。

ソリューションプロバイダーを通じて導入する場合

中~大規模の企業では、多くの場合、すでに特定のソリューションプロバイダーとの付き合いがあると思います。しかし、自社で検討した結果、良さそうだと判断した製品を彼らが扱っているとは限りません。検討・選定の段階で十分に相談して相見積もりをとったうえで、プロバイダーが勧める製品にするのか、自社で選定した製品とするのかを決定することになります。

ただし、自社がある程度の規模の企業であれば、大掛かりな導入プロジェクトになることも予想されます。そうした場合は、むしろソリューションプロバイダーを利用し、しっかりとした計画を立てて進めたほうがよいでしょう。

運用コストについて

CRMアプリケーションの導入範囲や規模の違い、そしてクラウド型かオンプレミス型かといった条件によって、導入方法は図のように分けて考えられます。

条件に応じたCRMアプリケーションの導入方法

IT部門が注意すべきなのは、導入後の運用コストについてです。基本的に、小規模なクラウド型で導入・運用を開始した場合、運用コストは比較的安価に抑えられます。しかし、「ビジネスが拡大して管理するデータ量が多くなった」とか、「部門単位での利用から、全社レベルでの利用に移行した」、「思ったよりも社内からの問い合わせや追加の要望が多い」といったことが引き金になり、運用コストが跳ね上がるケースがあります。

変化に応じて製品を選定し直すなり、登録プランを見直すなりすることが必要ですが、いつそういう事態になるのか、なかなか正確な予測はできません。いずれの製品でも同様ですが、稼働させたら終了ではなく、常に利用状況を把握し、社内の動向に留意してください。

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本連載は、4回という限られた回数のなかで、自社に合ったCRMアプリケーションを選ぶポイントについて解説してきました。各回で挙げたポイントは、実はCRMアプリケーションに限らず、社内で利用するツール類など、ほかの製品やサービスでも当てはまります。製品の選定はもちろん、新規にサービスプロバイダーを選ぶといったことは、なかなか難しいものです。「そもそも、CRM製品が必要なのか」というところから検討して適切な判断をするために、そしてありがちな「ツールの導入がゴール」とならないようにするためにも、本連載を参考にしていただければ幸いです。短い期間ではありましたが、どうもありがとうございました。

長谷川 雅宏
日本オラクル株式会社を経て、2008年ピープルデザイン株式会社を設立。CRM、ERPなどの基幹システムの導入コンサルティングやプロジェクトマネジメントと、アドテクノロジーをベースとしたデジタルマーケティングの領域における導入プロジェクトや新規事業開発の支援などを通じて、ITを活用した今あるべき業務スタイルの提案を行っている。