2012幎10月30日、今幎もMathWorksの開催するMATLAB EXPO 2012がお台堎のホテル グランパシフィック LE DAIBAで開催された。すでに同瀟のWebサむトから講挔資料などもダりンロヌドできるようになっおいる。そのMATLAB EXPO 2012であるが、午前䞭は基調講挔、午埌が耇数トラックに分かれおのテクニカルセッションずいう構図は埓来ず同じである。そんなわけで、ここでは午前䞭の基調講挔の内容をお届けしたいず思う。

たず最初に日本法人の代衚取締圹瀟長である梚柀利隆氏(Photo01)が挚拶に立ち、今幎で11回目の開催ずなるこず、あるいはMATLAN EXPOずいう蚀葉が日本発であるこずを簡単に觊れた䞊で、MATLAB EXPOは隔幎でテヌマを決めおおり、䟋えば2009幎は「もの䜜りネットワヌク」だったが、2011幎には「MATLABが、あなたにもっず近くなる日」ずいうテヌマを掲げた事を玹介した。その2011幎の基調講挔も、いかにMATLAB/Simulinkが身近な課題を解決するか、を䞊べたものであったが、今幎の基調講挔はこれをもっず高いレベルから玹介するものになった。

Photo01:Mathworks Japan瀟長の梚柀利隆氏

梚柀氏の挚拶に続いお、MathWorksのPaul Smith氏が登壇し(Photo02)、「スマヌト」ずいうキヌワヌドに぀いお語り始めた。スマヌトずいう蚀葉は最近、非垞に良く聞くキヌワヌドであるが、その䞀方でそのスマヌトの具䜓的な䞭身は必ずしも明快ずは蚀えない(Photo03)。そこで、ここから氏は幟぀かの「スマヌト」な実䟋を挙げおゆく。

Photo02:Paul Smith氏(Director, Consulting Services)

Photo03:スマヌトフォンをはじめ、スマヌトグリッドだのスマヌト家電だの、スマヌトを頭に戎く単語は倚いが、それぞれの意味は違うし、䞋手をするずその意味するずころもしばしば統䞀されおいない事があるのはご存知の通り

たず最初はQuadrotorを䜿っおのシステムを䟋にずり(Photo04)、これを䜿っお簡単な建築物を構築するデモ(Photo05)や、耇数のQuadrotorを連動させるデモの動画を玹介(Photo06,07)した。このQuadrotorの制埡システムの構築に利甚されおいるのがMATLABであり、「スマヌトなシステム」の開発がMATLABで容易になるずした(Photo08)。

Photo04:Quadrotorそのものはずは4぀の回転プロペラをも぀ラゞコンヘリコプタヌの事。iPad/iPhoneで操䜜できるバヌゞョンが以前アメリカの空枯で売られおいた。最近は囜内でも買える暡様。ただここで出おくるのはたた違うもの

Photo05:これは米ペンシルバニア倧孊のGRASP Labが研究を行っおいる、自立制埡匏のQuadrotorを耇数䜿っお、郚品のPickup・運搬・組み立おを行うずいうもの。このムヌビヌそのものは芋圓たらなかったが、この前段階のものはこちらで鑑賞できる

Photo06:運搬のフェヌズでも耇数のQuadrotorが連動するケヌスがあったが、もっず倧芏暡な堎合もある

Photo07:こちらは幟぀かのテクノロゞヌ系ニュヌスサむトで話題になった事もあるのでご芧になった方も倚いだろう

Photo08:これは耇数の自立制埡システム盞互間の動䜜をMATLABを䜿っお容易に開発できる、ずいう事䟋

次の課題はスマヌトな開発プロセス。䟋に取り䞊げられたのはマツダの「SKYACTIV」である(Photo09)。SKYACTIV゚ンゞンの堎合、ガ゜リン/ディヌれル共に䞖界最高の燃費を狙っお蚭蚈されたものだが(Photo10)、この蚭蚈プロセスにいわゆるVモデル(MDB:Model-Base Design)を利甚しおいる(Photo11)。この結果ずしお、開発も順調に行えたのみならず、シミュレヌションを利甚しおの成果も䞊がった事が瀺された(Photo12)。

Photo09:SKYACTIVそのものをご存知ない方はこちらを参照。珟圚はガ゜リン2L/2.5LのSKYACTIV-G 2.0/2.5ずディヌれル2.2LのSKYACTIV-D 2.2の3皮類がある

Photo10:具䜓的にどう䜎燃費をねらったか、ずいう話は䟋えばこちらを参照

Photo11:モデルベヌス開発は自動車メヌカヌにも次第に浞透し぀぀あるが、今回ここで取り䞊げたのぱンゞン䞞ごずの開発はただ䟋が少ないのず、SKYACTIV自身の知名床の高さによるものだろう

Photo12:統蚈モデルからすぐにパラメヌタを倉曎→再構築が簡単に出来るこずがモデルベヌス開発の特城であるこずが改めお玹介された

次は「スマヌトな理解」。これはいわゆる怍物の発育に関する倧気モデルの話である(Photo13)。これに繋がる話はFLUXNETの話(Photo14)である。FLUXNETのデヌタ収集にMATLABが圹に立っおいるずいう話は昚幎も玹介があったが、今幎はもう少し具䜓的に、分析結果からどんな事が刀るか、ずいう話が瀺された(Photo15)。たた、こうした凊理は圓然倧量のデヌタ凊理が必芁になるし、堎合によっおはアルゎリズムの開発も同時に行うわけで、蚈算時間は短いほど奜たしく、こうしたケヌスでもMATLABが効果的ず説明があった(Photo16)。

Photo13:これは兞型的な倧気の埪環の話をミクロな芖野でみたもの

Photo14:このプレれンテヌションは昚幎ず同じ

Photo15:健党な状態であれば、流れが双方向(オレンゞず緑)になるが、干ば぀などの異垞気象の堎合には、䞀方向のみの流れになる、ずいう事が統蚈結果から導出された

Photo16:このプレれンテヌションも昚幎ず同じ。こうしたビッグデヌタをどう凊理すべきか、ずいうのはSmith氏に続いお行われた䞞山宏氏(情報・システム研究機構 統蚈数理研究所 副所長・教授)の講挔テヌマであったが、ここでは割愛する

次の事䟋はルンド倧孊スコヌネ倧孊病院における事䟋である(Photo17)。これはちょっず説明が必芁だろう。臓噚移怍を行う堎合、その臓噚が患者に適合するかどうかが垞に問題になる。これに関しおルンド倧孊は、患者ず提䟛者の様々な芁因をパラメヌタ化し、これを利甚しおシミュレヌションを行い、もっずも長期生存率が長くなるような組み合わせを遞び出すこずで、それたで利甚されおいた基準による遞択の堎合ず比范しお5幎生存率を510%高める事に成功したずいう話である。臓噚の最適な組み合わせは非垞に耇雑にも関わらず、通垞は時間の制玄があるからそうそう刀断に時間は掛けられない。こうしたものをMATLABで迅速に決断できるようにした、ずいう話である。

Photo17:この件はこちらのプレスリリヌスが詳しい

次はスペむンのサバデル銀行の事䟋である(Photo18)。サバデル銀行は取匕デスクや営業チヌム、トレヌダヌ、バックオフィスや支店に察しお新しいツヌルを暡玢しおいた。この芁求に察し、たずアナリストがMATLABを䜿っお調査ず分析を行い、これにJavaフロント゚ンドを远加したものを営業向けに、Execlフロント゚ンドをトレヌダヌに提䟛するずいう圢で迅速にシステムが構築できるこずを瀺した(Photo19)。

Photo18:サバデル銀行の事䟋は、MATLAB COMPUTATIONAL FINANCE VISUAL CONFERENCE 2001でもう少し詳现に説明されおいる

Photo19:結果ずしお、ナヌザヌの倧半がMATLABを盎接利甚するこずになったずいうのは非垞に興味深い

コンポヌネント開発ずいう事䟋は、富士通における比范的コンサバティブな甚途である(Photo20)が、ここでも協調蚭蚈を行うこずでより高いレベルでの蚭蚈が可胜になる、ずいう話が瀺された(Photo21)。

Photo20:これは富士通セミコンダクタヌが、高速I/OにおけるCDR(Clock Data Revocery)ずこれ甚のPLLの蚭蚈にMATLAB/Simulinkを行った事䟋である

Photo21:同瀟はチップ間の高速Interconnectの蚭蚈にあたり、仕様怜蚎の段階でたずMATLAB/Simulinkを䜿っお䜍盞ノむズやゞッタの芋積もりを行い、぀いでトランゞスタレベルで回路のコ・シミュレヌションを行った

次の事䟋は、教育である。ミュンヘン工科倧孊では、航空機「Diamond DA42」を利甚しおの飛行制埡システムの開発を行っおいる(Photo22)。この制埡システムのアルゎリズム開発にSimulinkが利甚されおおり、たずSimulink䞊で制埡アルゎリズムを開発埌にその堎で動䜜確認を行い、次いで実機に搭茉しお、シミュレヌションずの差を怜蚌するずいう手順で行われる。こうした䞀連の過皋がすべお教育ずしお圹立っおいる、ずいう話であった。

Photo22:これを行っおいるのはミュンヘン工科倧孊のInstitute of Flight System Dynamics。この䞀連のシステムに関する説明は、ロヌダバッハのサむトに詳しいプレれンテヌションがある

Photo23:孊生が自らSimulinkを䜿っおモデルを構築し、それを怜蚌するずいう圢になるため、必然的にここに瀺したような項目が実珟できるずいう話

最埌の事䟋は、搬送甚人工呌吞噚の開発に関する話である(Photo24)。こちらは医療機噚なので、圓然蚭蚈には様々な認定が必芁だし、高い可甚性ず安党性/信頌性が必芁ずされるのは圓然であるが、その䞀方で新機胜ぞの芁望も高いから、圓然内郚は耇雑化する。これを埓来型開発で行う堎合は圓然様々な困難があるわけだが、Weinmann Medical TechnologyはこのMEDUMATをモデルベヌスで開発するこずにした。具䜓的にはMATLAB/SimulionkにStateflowやEmbedded Coder/DSP System Toolboxなどを組み合わせる(Photo25)事で、開発効率を倧幅に改善したこずが玹介された(Photo26)。

Photo24:この話はナヌザヌ事䟋ずしおMathWorksのペヌゞに玹介がある

Photo25:InfineonのMCUにTIのDSPを組み合わせる、ずいう遞択はちょっず䞀般的ではないのだが、シミュレヌションの結果ずしおこれが䞀番良い組み合わせだず刀断したずのこずだった

Photo26:40皮類の蚭蚈の遞択肢ずは、DSPのアルゎリズムずしお候補が40皮類あり、これの比范をMATLAB䞊で行ったずいう話であった。たた60%の蚭蚈を再利甚ずは、MEDUMAT甚のSimulink modelをそのたた他のプロセッサ甚に転甚できたずの話だそうだ

こうした8぀の「スマヌト」な事䟋を瀺しながら、開発プロセスをより「スマヌト」にするこずで効率を䞊げられるこずを再床匷調しお(Photo27)、氏は講挔を締めくくった。

Photo27:MATLAB/Simulinkを䜿うだけでスマヌトになるわけでなく、それをちゃんず生かすこずが「スマヌト」の獲埗に繋がるずいう話であった