連日、例年にない暑さを記録した8月の日本列島。2007年に使われ出した「猛暑日」という気象用語は今年のために用意されたかのようだ。滅多なことでは「異常気象」と言わない気象庁も、今年ばかりはそれを認めている。この気象の影響が、Google検索急上昇ワードにもちらほらと見受けられる。

2010年8月のGoogle検索急上昇ワード

■通常検索ランキング
順位 ■パソコン検索 ■モバイル検索
1位 トロイカ 体制 24時間テレビ
2位 価格 com エアコン KARA
3位 ワケあり 物件 サマーウォーズ
4位 神崎恵 平野綾
5位 より子 甲子園
6位 奥多摩 キャンプ 下村早苗
7位 浜田幸一 渋滞情報
8位 北川悠仁 怖い話
9位 トロイカ 板野友美
10位 芸人報道 熱中症
■イメージ検索ランキング
順位 ■パソコン画像検索
1位 猪狩 俊郎
2位 あいつは アインシュタイン
3位 斎藤 瞳
4位 松本 明子
5位 水球 女子
6位 ウデムシ
7位 荒川 ちか
8位 荒木 美和
9位 渡部 いずみ
10位 竜崎 勝
■その他の検索ランキング
順位 ■ニュース検索 ■動画検索
1位 はるな愛 ハモネプ
2位 チリ KARA
3位 浜田幸一 ヘビーローテーション
4位 台風 手島優
5位 東海大相模 AKB48
6位 mixi
7位 甲子園 西野カナ
8位 高齢者 アンパンマン
9位 小沢氏 SMAP
10位 仙台 新垣結衣
※本データは、Google Zeitgeistのアルゴリズムに基づき、日本における検索傾向を集計したものです。前月から検索量が増加しているクエリを抽出しています。提供/Google

バックナンバー

2009年総合 ■2010年1月 ■2010年2月 ■2010年3月 ■2010年4月 ■2010年5月 ■2010年6月 ■2010年7月

日本熱帯化の恐怖に背筋も凍る暑い夏

総合ランキングのトップは聞き慣れない「トロイカ体制」という言葉。9位にも「トロイカ」がランクインしている。民主党代表選挙前に行われた菅・鳩山両氏による記者会見がその発信元だ。もともと「トロイカ(тройка)」とはロシア語の「3」(名詞形)で、広大な雪原を高速移動するために考案された三頭立てのソリを意味する言葉。政治的には1953年、当時のソビエト連邦で独裁的な権力を振るったとされるスターリンが死んだ後、権力が集中するのを避けて3名の幹部に権限を分散させた集団指導体制のことを「トロイカ体制」と呼んだのが始まりだと言う。件の会見では単に菅・鳩山・小沢というトップ3名で"挙党態勢"を築く考えを表したかったのだと思われるが、その語源から漂う左方面の匂いに敏感に反応する人が多かったようだ。

2位に入ったのは目的がものすごく具体的な「価格com エアコン」というワード。総務省統計局の発表によると、2009年時点で全国の家庭のエアコン普及率は88.1%に達している。しかし、エコポイント制度が継続していることから買い換え・買い増し需要には追い風で、普及率が50%に満たない青森県でも猛暑日を記録するなど、新たな需要も見込める環境となっている。8月の最高気温(東京)の変化と、暑さ関連のワードの検索ボリュームを比較してみると、月の前半にそれぞれ微妙にズレながら一つのピークを記録した後、月半ばに36~37℃台の日が続くとほぼ全てが重なった大きなピークを描く。そして月後半では月初と同程度まで気温が上がっても「エアコン」以外のワードはそれほど顕著な変化を見せなくなる。微妙なシンクロと諦めの気持ちが入り交じりながらも、エアコンは月末まで変わらず興味の対象であり続けたようだ。

2010年8月、東京の最高気温と検索ワードの動向比較

そんな暑さも一瞬忘れてゾクっとさせるのが、画像検索6位にランクインした「ウデムシ」。節足動物の一種でクモの仲間に入るらしいのだが、両側に大きく張りだした長い脚、扁平な身体にマダラの色柄と、その奇怪な姿はクモの比ではない。なぜわざわざこんな姿に進化しなくてはならなかったのか、不思議に思えるくらいだ。しかし、やはり何にでも愛好者はいるらしく、飼っている人のブログではかなり可愛がっている様子が伺える。脱皮もするらしい。熱帯地域の生物で現在日本には生息していないが、この生息域を温帯にまで広げないためにも、ぜひ温暖化抑制を実現したいものである。

ニュース検索8位には「高齢者」がランクイン。7月末以来、住民票に登録があるものの実際にはそこに住んでいない"非実在"高齢者の存在が全国から続々と報道された。これには家族が不正に年金を受け取っていたケースや、別居したり行方が分からなくなったまま放置されていたケースなど、事情は様々のようだ。書類上不自然な年齢であっても、行政側が勝手に戸籍や住民票を抹消することはできない、という理屈もまぁ分からぬでもない。しかし、社会制度の基礎と考えられていた情報が密かに孕んでいたアバウトさは、現代の情報管理社会に慣れた世代にはある衝撃をもって受け止められたことだろう。人間をデータで管理することの難しさが露呈した格好だが、何とも大規模な事例を示してくれたものである。

おすすめリンク……??

■ウデムシを食べる人、それを動画で公開する人もいるみたいです。……すみません、見ていません。検索すると出てくるようなので、大丈夫な方どうぞ。

怪談よりケータイ紛失のほうが「恐い話」かも

モバイル検索には季節感のあるワードが登場することが度々あるが、8月は見事に夏らしさ満載の結果となっている。テレビとの親和性の高さも影響して、トップには夏の終わりの風物詩となっている「24時間テレビ」がランクイン。3位に入った映画『サマーウォーズ』は、この夏に初めてテレビで放映された作品。ジブリ作品と同じく、夏の映画番組の定番となるかも? 5位の「甲子園」では、沖縄の興南高校が沖縄県勢として夏の大会初優勝、加えて春夏連覇の快挙を遂げ、猛暑に負けない熱気で盛り上がった。昨年よりも高速道路の帰省・Uターン渋滞が軽減されたのは、「渋滞情報」(7位)を調べる人が多かったのか、あるいは割引料金適用が限定的だったためか。また、猛暑続きによりニュースや天気予報で盛んに「熱中症」(10位)対策が呼びかけられていたが、知人の看護師によればそれでも運び込まれる人は絶えなかったそうだ。

もう一つ、8位の「恐い話」も夏らしいワードに挙げられるだろう。キャンプや林間学校などでロウソクを囲み、「ヒソヒソ」「ギャー」……という怪談の楽しみは現在も変わらずあるのだろうか。そんな彼らの手に手に、今はケータイの液晶が煌々と光っているのかもしれない。

おすすめリンク

ウェザーニュース『スーパー猛暑メール』:熱中症の危険が高い日にメールで注意を呼びかけてくれる。来年も暑かったら、使ってみてください。