電機大手8社のうちNECを除く7社が増収増益を達成

電機大手8社の2010年度第1四半期連結決算が出揃った。 第1四半期決算は、NECを除く7社が増収増益し、最終黒字転換するなど、回復基調にあることが裏付けられる内容となった。

電機大手8社の決算概要

NEC 取締役 執行役員専務の小野隆男氏

唯一、減収減益となったNECは、NECエレクトロニクスが連結子会社から外れたことが最大の要因としているが、その影響分を除いても売上高は2%減となっており、海底システムの契約遅延やNGNの投資一巡に伴うキャリアネットワーク事業の減収などが大きく響いている。

第1四半期の業績から感じられるのは、いよいよ日本の電機大手に回復基調が見られ始めたという点だ。

新興国市場での事業拡大や、薄型テレビや半導体の回復、クラウド事業といった新たな事業の成長が見られている。

ソニーでは、「新興国向けビジネスが40%増になっている」(ソニー・加藤優CFO)と新興国向け事業が大幅に拡大していることを指摘。パナソニックでも国内が4%増と1桁の増収に留まったものの、海外はすべて2桁増の成長。とくに中国が36%増、アジアが52%増と大幅に成長した。

シャープの濱野稔重副社長

注目される薄型テレビ事業に関しても、各社ともに好調な業績となっている。

ソニーは、前年同期比60%増の510万台を出荷し、30億円の黒字へと転換。通期黒字化にも意欲をみせる。東芝も、テレビ事業が増収となり、黒字化を維持。シャープも34%増の269万台の液晶テレビを出荷し、「液晶テレビの黒字化が定着した」(シャープ・濱野稔重副社長)と発言した。またパナソニックでは、前年同期比55%増の455万台の出荷実績。「3Dテレビは、当初計画のほぼ3倍の売れ行きとなっており、3Dテレビで全世界1000万台という通期目標に向けて順調に推移している」と語るものの、テレビ事業の赤字からはまだ脱却できていない。「収益力は回復しており、下期は黒字化に近づけるように努力したい」(パナソニックの河井英明役員)と語る。

クラウド事業に関しては、「昨年1年間の受注を第1四半期だけで獲得した」(富士通・加藤和彦CFO)、「クラウド関連ビジネスは徐々に実を結びつつある。成長に向けたクラウド関連投資は積極化させていく」(NEC・小野隆男取締役執行役員専務)と事業の拡大が指摘されている。

パナソニックの河井英明役員

加えて、これまで取り組んできた構造改革の成果が出始めている点も見逃せないだろう。

パナソニックの河井英明役員は、「これまでの構造改革への取り組みにより、コスト構造が強化され、損益分岐点を引き下げることができてている。この結果、売り上げがあがれば、それ以上に利益が伸びる体質になっている」と、収益力改善の地盤ができていることを強調する。こうした構造改革の成果は、今四半期の回復基調の大きな下支えとなっている。

こうした好調な業績を背景に、上期業績見通しを上方修正したのが日立製作所、パナソニック、三菱電機、富士通の4社。富士通は売上高を下方修正したが、利益面では上方修正を発表している。

さらに通期の業績見通しをパナソニック、ソニー、三菱電機の3社が上方修正した。だが、各社に共通しているのは慎重な姿勢を崩していないという点だ。

パナソニックは上期と通期の業績をともに上方修正したものの、通期の方が、修正率が低いというのが実態だ。「新興国中心に回復基調にあるものの、欧米の先行き不安がある。下期には円高の影響、原材料費の高騰などが見込まれる」と下期の動向を慎重に読む。

これは各社に共通したものだ。異口同音に聞かれるのが、成長が著しい新興国における成長率が鈍化しはじめていること、欧州の金融危機の影響、米国の個人消費の伸び悩み、為替の影響などだ。日本においては、2010年12月で終了するエコポイント制度にあわせた駆け込み需要が期待される一方、2011年1月以降の反動を懸念する声もある。

また、「液晶パネルの市場在庫が感じられ、下期のパネル需要についても不透明なところがある。グリーンフロント堺では、7月から月産7万2000枚のフル生産体制としたが、慎重に見ていく必要がある」(シャープ・濱野副社長)として、フル生産体制の維持については柔軟性を持たせる姿勢を見せている。

そして、2009年度実績を上回るものの、2008年度実績にまでの回復感がないというのも実態だ。第1四半期連結業績は、各社とも好調なものとなったが、先行きの不透明感はいまだに払拭されてはいないといえそうだ。