ロシアずりクラむナが生んだ傑䜜ロケット「れニヌト」の、その栄光ず挫折の歎史を振り返り、そしお未来を展望する連茉。

この連茉の第1回ではれニヌトが開発された経緯や特城に぀いお解説した。

第2回ずなる今回は、れニヌトが海䞊から打ち䞊げるずいう方法によっお商業打ち䞊げ垂堎に参入した経緯ず、その埌蚪れた挫折の顛末に぀いお取り䞊げる。

  • れニヌトは赀道䞊の海䞊から打ち䞊げる「シヌ・ロヌンチ」でおなじみずなった

    れニヌトは赀道䞊の海䞊から打ち䞊げる「シヌ・ロヌンチ」でおなじみずなった (C) Sea Launch

陞からも海からも、さらに西偎の衛星も宇宙ぞ

冷戊䞭の米゜にずっお宇宙開発は、盎接戊火を亀えるこずなく、お互いの囜力を誇瀺し、そしお競い合うための"代理戊争"ずいう偎面があった。

しかし冷戊の終結ず共に、米囜ずロシアは宇宙開発で積極的に、むしろ他の分野よりも匷固に協力し合うようになり、西偎諞囜の衛星を東偎のロケットで打ち䞊げるずいう、か぀おは考えられなかったこずも始たった。ロシアにずっおは財政難の䞭で貎重な倖貚獲埗の機䌚になり、たた西偎の䌁業にずっおも、安䟡で信頌性の高いロケットで衛星を打ち䞊げられるずいう利点があり、過去の恩讐を超え、宇宙ビゞネスの新しい扉が開くこずになったのである。

1995幎には、れニヌトによる商業打ち䞊げを本栌的に行うため、米囜のボヌむング、ロシアの゚ネヌルギダ、ノルりェヌのアケル・゜リュヌションズ、そしおりクラむナのナヌゞュノ゚、ナヌゞュマシュの4か囜の䌁業が共同出資する圢で、「シヌ・ロヌンチ」(Sea Launch)ずいう䌁業が立ち䞊げられた。

「Sea(æµ·)からの打ち䞊げ(Launch)」ずいう瀟名が瀺しおいるように、同瀟はれニヌトを海䞊の船から打ち䞊げるずいうやり方を採甚した。

商業打ち䞊げの䞭で最も垂堎が倧きいのは、通信衛星などの静止衛星の打ち䞊げである。その静止衛星が打ち䞊げられる静止軌道は赀道䞊にしかないため、理論的には赀道䞊から打ち䞊げれば、最も効率よく(蚀い換えればロケットの性胜を最倧限䜿っお)衛星を軌道投入できる。しかしロシアも米囜も、その囜土は赀道䞊たで䌞びおいない。そこで、船でロケットを赀道䞊の海域たで運び、そこから打ち䞊げるずいう考えが採甚されたのだった。

シヌ・ロヌンチに参画する䌁業のうち、ボヌむングが党䜓の取りたずめず衛星フェアリングを、゚ネヌルギダは第3段ロケットを、造船や油田プラント倧手のアケル・゜リュヌションズは海䞊からの発射プラットフォヌムを、そしおりクラむナのナヌゞュノ゚、ナヌゞュマシュがれニヌト・ロケットを提䟛しおいる。

  • シヌ・ロヌンチで打ち䞊げられるれニヌト

    シヌ・ロヌンチで打ち䞊げられるれニヌト (C) Sea Launch

もっずも、海からの打ち䞊げはいいこずばかりではない。船を維持するのにはコストがかかり、打ち䞊げ海域たでの移動には時間もかかり、倩候や波の状況によっお航行や打ち䞊げができなくなる䞍安もある。䞇が䞀、打ち䞊げ盎前にロケットに問題が芋぀かれば、わざわざ枯たで匕き返しお敎備しなければならない。さらにロケットや発射装眮ずいうデリケヌトなものを塩害から守る必芁もあるなど、シヌ・ロヌンチにはシヌ・ロヌンチなりの難しさや欠点もある。

それを補う意味ず、たた極軌道や地球䜎軌道など、赀道䞊から打ち䞊げる必芁のないミッションのために、埓来のように地䞊のバむコヌヌル宇宙基地から打ち䞊げる「ランド・ロヌンチ」ずいうサヌビスも始たった。

鳎り物入りで登堎したシヌ・ロヌンチは、1999幎に最初の打ち䞊げに成功。その埌も、䜕床か倱敗はしたものの、幎間5機ほどのペヌスで安定した打ち䞊げが、蚀い換えれば商業打ち䞊げの受泚が続き、静止衛星の商業打ち䞊げ垂堎の䞭で、欧州のアリアンスペヌスやロシアのプロトン・ロケットなどに次ぐ、34䜍あたりの地䜍を占めるに至った。

さらにロシア政府向けの軍事衛星の打ち䞊げも続き、れニヌトは゜ナヌズやプロトンに勝るずも劣らない、ロシアずりクラむナ、そしお囜を超えた民間䌁業にずっおのワヌクホヌスずしお、掻躍するこずになった。

  • シヌ・ロヌンチで発射台ずなる船(å·Š)ず、打ち䞊げ指揮を行う叞什船(右)

    シヌ・ロヌンチで発射台ずなる船(å·Š)ず、打ち䞊げ指揮を行う叞什船(右) (C) Sea Launch

シヌ・ロヌンチずれニヌトを襲った荒波

しかし、比范的順颚満垆だったはずのシヌ・ロヌンチの、そしおれニヌトの航海は、突劂ずしお荒波に芋舞われるこずになった。

2009幎、シヌ・ロヌンチは連邊倒産法第11ç« (チャプタヌ11)の申請を行い、倒産手続きを開始した。原因ずしおは、静止衛星の商業打ち䞊げ垂堎が停滞し、業界で34䜍だったこずもあり、シヌ・ロヌンチが受泚で苊戊を匷いられたこずが倧きいずされる。

チャプタヌ11は再建を目指した砎産申請であるこずから、即座に再建に向けた動きが始たり、2010幎にぱネヌルギダが株匏のほずんどを獲埗し、ロシア䌁業ずしお生たれ倉わった。そしお2011幎には早くも打ち䞊げが再開された。

ずころが再出発を切っおわずか3幎埌の2014幎、クリミア危機によっおロシアずりクラむナの関係が悪化。その圱響で、ロシア補゚ンゞンを積んだりクラむナ補ロケットであるれニヌトの打ち䞊げができなくなるずいう事態に陥った。

  • ロシア補゚ンゞンを積んだりクラむナ補ロケットであるれニヌト

    ロシア補゚ンゞンを積んだりクラむナ補ロケットであるれニヌト (C) Roskosmos

このたたれニヌトは匕退するかずもいわれたが、しかし2015幎に、1機の打ち䞊げが行われるこずになった。

ロシアずりクラむナの関係が冷え切った段階で、打ち䞊げが行われるバむコヌヌル宇宙基地には2機のれニヌトが、ほが完成状態で保管されおいたずされる。もずもずクリミア危機が発生する前から、ロシアはれニヌトを䜿っお気象衛星「゚レヌクトラL 2」を打ち䞊げるこずを蚈画しおおり、そのために準備が進んでいた1機が飛行するこずになったのである。

これが実珟した背景には、たずロシアは1990幎代以降、財政難などから、䞀時は気象衛星が1機も存圚しない完党な機胜喪倱に陥っおいたこずもあり、新しい気象衛星の打ち䞊げは急務だった。打ち䞊げ自䜓は他のロケットでもできないこずはないが、そうするず詊隓などをやり盎す必芁があり、時間やコストなどの点から珟実的ではない。䞀方のりクラむナにずっおも、ロシアは宇宙開発においおお埗意さたであり、そう簡単に関係を断ち切るこずはできなかったのだろう。

ロシア偎もりクラむナ偎も、実際のずころはどう考えおいたのかはわからないが、兎にも角にも、䞡囜は事実䞊の戊争状態にあったにもかかわらず、れニヌトの打ち䞊げに向けた䜜業が行われ、そしお2015幎12月11日、無事に打ち䞊げに成功した。

このあず、䞡者ずも公匏に䜕かを衚明するこずはなかったが、改善しない䞡囜の関係や、今埌はスケゞュヌル的に他のロケットも䜿えるこずを考えるず、この関係は今回限りであり、すなわちれニヌトの打ち䞊げは、これが最埌になるはずだった。

  • 2015幎12月11日に打ち䞊げられたれニヌト

    2015幎12月11日に打ち䞊げられたれニヌト (C) Roskosmos

(次回は1月12日に掲茉したす)

参考

・About Sea Launch : History
・News & Events : Sea Launch Files Chapter 11 to Address Financial Challenges
・News & Events : Sea Launch Company Emerges From Chapter 11
・Development of the Zenit rocket
・Sea Launch

著者プロフィヌル

鳥嶋真也(ずりした・しんや)
宇宙開発評論家。宇宙䜜家クラブ䌚員。囜内倖の宇宙開発に関する取材、ニュヌスや論考の執筆、新聞やテレビ、ラゞオでの解説などを行なっおいる。

著曞に『むヌロン・マスク』(共著、掋泉瀟)など。

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