海外でも出荷台数が伸びているスマートフォン。それを牽引しているのがミッドレンジよりも低いクラスの低価格帯スマートフォンだ。このクラスの製品は低価格を武器に携帯電話からの乗り換えユーザーを急激に増やしている。

Smartphone for Everybody

2010年は日本を含む世界中でスマートフォンの出荷台数が急激に伸びた1年だった。携帯電話全体の出荷台数に占めるスマートフォンの割合も増えており、2011年には市場の20%~25%まで達すると予測されている。今では大手メーカーでスマートフォンを手がけていないメーカーはもちろん皆無であり、各社の主力商品も高機能フィーチャーフォンからスマートフォンへとシフトが進んでいる。

世界中でスマートフォンの人気が高まっている最大の理由はSNSサービスの急速な普及だ。FacebookやTwitterの利用は従来の音声通話やSMS、そしてメールやチャットサービスによるコミュニケーション手段を代替しつつある。それに加え、写真や個人データ共有などWebサービスの利用も一般コンシューマー層へ広がっている。このような背景から消費者の興味も単体での機能が豊富なフィーチャーフォンから、インターネットアクセスが可能で各種WEBサービスの利用が容易なスマートフォンへと移行が進んでいるのである。

またこれまでは携帯電話/スマートフォンでWebサービスを利用する層は一部の先進的な利用者のみであったことから、端末も上位クラスで多機能な高価格帯のものが多かった。だが一般消費者までもがスマートフォンを求めるようになった結果を受け、各メーカーは低価格なスマートフォン製品にも力を入れているのだ。特にAndroid端末はその動きが顕著であり、例えばMotorolaやSony Ericssonの豊富なスマートフォンラインナップの大半は日本円で約2万円前後と手ごろに買える価格帯のものが占めている。

そして通信事業者にとっても安価なスマートフォンはARPUの引き上げが期待できる戦略的な製品となっている。ヨーロッパ各国でサービスを行っているVodafoneは自社ブランドの安価なAndroidスマートフォンラインナップを強化しており、大手メーカーのエントリーモデルの価格よりも安く、SIMロックをつけて無料販売も行われている。

Vodafone 845は超低価格なAndroid端末

HuaweiのIDEOSはスマッシュヒット

このようにスマートフォンの低価格化が進む中で、Huawei(華為)が2010年冬に発売した「IDEOS U8150」はこれからの一般消費者向けスマートフォンの見本ともいえる存在だ。インフラベンダーでもあるHuaweiは端末のOMEメーカーとして各国の通信事業者向けに製品を多数提供しており、世界シェアも10位以内に入る大手メーカーでもある。ちなみにVodafoneが販売する低価格スマートフォンの一部製品もHuawei製だ。

IDEOSの最大の特徴は価格の安さであるが、スマートフォンとしての基本機能もしっかりと押さえている。2.8インチQVGAディスプレイ、約500MHzのプロセッサ、300万画素カメラとハードウェアスペックは最新製品と呼ぶには非力に見えるかもしれない。だがOSは最新の2.2であり、HSPAにも対応、Wi-Fiも利用できる。日常のスナップ写真をアップしたり、友人とつぶやきを共有する、といった普段使いをするには必要十分だ。

日本でも発売されるIDEOS

また電池カバーはカラフルな青やピンクが標準で、スマートフォンの固定的なイメージも大きく変えている。加えて価格が安いことから若い層へのアピールも大きいだろう。日本でもイー・モバイルから「Pocket WiFi S」として発売予定であり、日本通信も輸入品を取り扱うなどIDEOSは通信事業者にとっても手軽に扱える製品なのだ。

カラフルな電池カバーも大きな特徴

中国メディアによると、ファーウェイは2011年の自社スマートフォン出荷予想台数を1000万台とし、2010年の見込みである400万台から2.5倍に引き上げるとのこと。この数字は無謀にも見えるが、低価格スマートフォンの人気が高まりIDEOSのような日常利用に十分な製品が多数登場すれば十分達成可能だろう。

2011年も新型iPhoneやNexus Sなどの最新製品が市場で大きな話題となるだろが、その裏では着々と低価格なスマートフォンがシェアを伸ばしていくであろう。スマートフォンとはハイエンドモデルのことではなくWebサービスやアプリを自由に利用できる端末、2011年はスマートフォンの概念が大きく変わる1年になりそうである。