調査会社カウンターポイントが興味深いデータを発表しています。アメリカでの調査によると、スマートフォンユーザーの28%が次に買い替えるスマートフォンは折りたたみモデルにしたいとのこと。アメリカで販売されている折りたたみスマートフォンはサムスンの「Galaxy Z Fold4」「Galaxy Z Flip4」とモトローラの「razr」だけですが、約3割ものユーザーが検討しているということは、折りたたみ型のスマートフォンの認知度が高まっているということなのでしょう。

折りたたみスマートフォンにも縦に折り曲げる「Flip」式と、横に開く「Fold」式の2種類があります。Flip式は開けば普通のスマートフォンサイズ、閉じれば手のひらに納まるコンパクトな大きさになります。Fold式は閉じれば普通のスマートフォンを厚くしたサイズ、開くと小型タブレットになります。この両者はディスプレイが曲げられるという点では同じですが、製品カテゴリとしては別のものになります。とはいえ、今のスマートフォンやタブレットでは満足できないユーザーが折りたたみモデルに興味を持っていることは間違いないでしょう。

  • 折りたたみにもFlipとFoldの2種類がある

この2つの形状のうち、調査の回答者の半数がFlipタイプを好む結果になっているとのこと。これは大型化がどんどん進む最近のスマートフォンが持ちにくくなっていると感じているユーザーが多いからかもしれません。スマートフォンにはケースをつけることが当たり前になっており、7インチ弱の画面サイズのスマートフォンにケースを装着すれば、サイズは一回り大きくなりポケットに入れるには大きすぎることもあります。最近はスマートフォンの底面側2か所にストラップをつけ、首からぶら下げるスタイルも流行っていますが、これも今のスマートフォンが大きく重いことから、片手では持ちにくくなっていることの現われでしょう。

  • スマートフォンの大型化でストラップケースも2本通しが増えている

一方、Foldタイプのモデルはより大きな画面が欲しいけれども本体サイズを大きくしたくない、というユーザーが増えていると考えられます。今や誰もが空き時間に動画を見る時代です。動画をより楽しみたいのであれば画面のサイズは大きいに越したことはありません。しかしタブレットを持ち運ぼうにもポケットには入りません。Foldタイプなら画面サイズは小型タブレット程度ですが、スマートフォンよりもはるかに大きいサイズです。しかも折りたためばポケットに入ります。Fold式は動画視聴時代に適したデザインと言えるのです。

  • 大画面をいつでも持ち運べるのがFold型の魅力

それでは折りたたみを好んでいるアメリカ人はどのメーカーの製品を買いたいと考えているのでしょうか? サムスンとモトローラしかアメリカでは製品が入手できないにも関わらず、折りたたみスマートフォンとして買いたいと考える好みのブランドは46%がサムスン、6%がモトローラで、この2社を合わせても全体の約半数にしかなりません。

残りはどうなっているかと言うと、39%がAppleと回答しています。ここから、Appleの折りたたみスマートフォンが出てくればすぐに買いたいと考えるユーザーの割合を計算すると、28%x39%=11%となります。つまり現在スマートフォンを使っているユーザーのうち、約1割はAppleの折りたたみスマートフォンを心待ちにしているという計算になります。

この数は少ないようで無視できるものではありません。アメリカの折りたたみスマートフォン販売台数ではほぼ1強と言えるサムスンですが、Flip式、Fold式の2種類を用意していても、iPhoneからの買い替えを促すにはまだ力不足なのです。とはいえ現在サムスンの折りたたみスマートフォンを使っているユーザーの92%が次もサムスンを買うと回答しており、Galaxy Zシリーズは一度使えばその利便性などから他の製品に乗り換る気を起こさせない、ユーザー満足度の高い製品という結果になっています。

なおモトローラの数は少ないもののゼロではなく、モトローラのブランドに対しての信頼性は今でも高いことを証明しています。

他にも興味深いデータが出ています。男性と女性、それぞれFlipとFoldのどちらを好んでいるかという調査では、男性はFlipが半数以上であったのに対し、女性はFoldのほうが上回っていたとのこと。実はサムスンの母国である韓国でも、地下鉄に乗ると男性がFlipを使っている姿が目立ち、女性がFoldを持っているシーンをよく見かけます。

  • 女性にもFold型は人気だ

ここまで折りたたみスマートフォンに好意的な結果が出ると、メーカー側もそれに応じた戦略を考えなくてはならないでしょう。現在折りたたみスマートフォンはGalaxy Z Flip4が999.99ドル(約13万2,000円)、Galaxy Z Fold4が1799.99ドル(約23万7,000円)と、高価格で販売されています。通信キャリアの割引などで半額以下で実質購入することもできますが、そのためには高い料金プランに入る必要があるなど購入のハードルは高いままです。折りたたみスマートフォンにも廉価版となる価格をさらに引き下げたモデルの投入が求められます。

  • 若い世代に使ってもらうためにも価格引き下げは必須だ

価格を引き下げるにはメーカー努力も必要ですが、それよりも手っ取り早いのは競争でしょう。HONORやOPPOが2023年から折りたたみスマートフォンをヨーロッパやアジアに続々と投入し、グローバル市場への展開を始めています。ただしアメリカへの中国メーカーの参入は現時点では政治的な面からも障壁が高く、この2社がアメリカでサムスンのライバルとなることはないでしょう。

そうなるとここのところ新製品を出していないモトローラに頑張ってもらうともに、噂されているGoogleの「Pixel Fold」の登場に期待したいもの。特にPixelから折りたたみが出てくれば日本への投入も考えられることから、日本でも折りたたみユーザーが増える起爆剤になるかもしれません。