iPhoneなどハイエンドスマートフォンの多くがeSIMを搭載しています。eSIMは物理的なSIMカードが不要で、QRコードを使って直接スマートフォン本体に契約情報を書き込める便利なものです。eSIMは海外でも販売されており、プリペイドタイプのeSIMがネットで買えます。一般的なプリペイドSIMカードは空港で並んだり英語で慣れぬ会話を強いられますが、eSIMならその必要もありません。
日本から海外への旅行もようやく行けるようになりつつありますが、ahamoや楽天モバイルなど、日本のスマートフォンをそのまま海外に持っていける契約も増えています。またドコモなど大手キャリアも1日1,000円程度で日本で契約しているプランのデータ利用分を海外で使うこともできます。そのため現地のSIMを買う必要性は低くなりつつありますが、MVNOの格安プランを使っている人は国際ローミングサービスが無いものも多く、海外に行く際にWi-Fiルーターレンタルなどを使わなくてはなりません。
そこで今回、シャープが販売している「AQUOS Sense7」のSIMフリーモデルを使い、韓国に行く際に現地のeSIMを購入して使ってみました。滞在期間によっては日本のキャリアの海外ローミングよりお得なので、eSIM対応スマートフォンを持っている人も参考になるかと思います。
AQUOS Sense7は物理的なナノSIMカードが1枚と、eSIMを併用できます。韓国用のeSIMは様々なものが販売されていますが、今回は韓国の大手キャリア「KT」が直接販売するeSIMを買ってみました。KTのWEBサイトは日本語もあり購入は簡単です。今回はノートPCから購入しましたがスマートフォンからブラウザを開いて買うことも可能です。
KTの販売サイトを開くと「QRコードスキャンで簡単にSIMカードを設置してみましょう」とあるように、eSIMはオンラインで支払いを済ませるとQRコードが表示され、それをスマートフォンで読み取れば使えます。またサイトには対応機種としてiPhoneとGalaxyやPixelなどしか出ていませんが、eSIMの規格はメーカーに依存しません。AQUOS Sense7もeSIM対応ですので使うことができました。
サイトの説明に従って購入作業を進めます。オンラインで買えるのは「Prepaid Data eSIM」のみで、データ通信のみ可能、通話はできません。まあ日本との通話はLINEなどメッセージサービスを使えばいいでしょう。オンラインでの価格は……。
1日:6,600ウォン(約700円)
5日:2万4,700ウォン(約2,600円)
10日:3万4,600ウォン(約3,600円)
30日:6万4,300ウォン(約6,700円)
ドコモのパケットパック海外オプションは24時間980円、5日3,980円、7日5,280円ですからやはり現地回線のほうが安上がりです。しかもデータは使い放題。1日3GBを超えると5Mbpsに落ちますが、深夜24時を過ぎるとリセットされます。
eSIMは購入日から30日以内に開通できます。また利用中に延長もできるようですが現実的には現地で急に滞在を延ばすことはないでしょう。
この後、購入ページに移動して氏名やパスポート番号などを入力、メールで認証コードを受けるなど注意事項を読みながら進み、クレジットカードで購入が済めばQRコードが発行されます。なおQRコードはメールにも届くのでこのページを閉じてしまっても大丈夫です。
では実際に使ってみます。飛行機に乗って韓国の空港についたら、まずはスマートフォンを空港の無料Wi-Fiに接続します。
続いて「設定」→「ネットワークとインターネット」→「モバイルネットワーク」を選択。次の画面「モバイルネットワークのへの接続」の一番下「SIMをダウンロードしますか? eSIMを使用して番号を追加」をタップ、次の画面の「SIMのダウンロード」の右下の「次へ」をクリック。
するとカメラの画面になるので、あらかじめ購入したKTのeSIMのQRコードを読み取ります。なおQRコードを読み取るために他のスマートフォンやノートPCの画面に表示させるか、あるいは出発前にコンビニで印刷しておくなどの必要があります。
読み取りが終わると「KTを使用しますか」と表示されるので「次へ」をクリック。しばらくするとeSIMのダウンロードが終わります。続けて「設定」をタップします。
設定画面でKTを開くと選択されていない状態なので「KTをONにしますか?」で「はい」を選択。これでKTのeSIMが使用可能になりました。
ところが電波をつかみません。そこで一旦機内モードにして、再び機内モードをOFF。するとアンテナマークの横に「KT」と表示され、無事にKTのeSIMがつながりました。
これで使えると思いきや、今度はデータ通信ができません。スマートフォンによってはデータ通信設定も自動で行われるようですが、AQUOS Sense7の場合は手動での設定が必要です。KTの設定画面の下のほうにある「アクセスポイント名」をタップ。APNの画面になりますが何もありません。ここで右上をタップし、つぎの「アクセスポイントの編集」画面で名前は適当(わかりやすく「KT」にした)、APNに「lte.ktfwing.com」を入力。ちなみにAPNはキャリアによって異なるので、別のeSIMを買った場合はそのSIMの設定を調べてそれを入力します。
最後に必ず右上をタップして「保存」を押します。次の画面で今回作ったKTのアクセスポイントをチェック。するとアンテナマークの横に「LTE」の表示がされ、無事にインターネットにつながりました。
なお、すでにSIMカードスロットに日本のSIMカードを入れている場合、この操作でも通信が始まらない場合があります。たとえば下の画面ではnanoSIMカードにドコモのSIMを入れた状態にしています。この場合、ネットワーク設定画面で「モバイルデータ通信」をタップして、データ通信を「KT」に切り替えればデータ通信が始まるはずです。また日本で利用しているSIMのほう(今回はドコモ)は設定画面の下のほうにある「ローミング」をOFFのままにします。ここをONにすると、海外ローミングできるSIMの場合、現地のローミング料金がかかってしまうので注意してください。「韓国に行く」=海外で使うので国際ローミングを触るものと考えてしまうかもしれませんが、今回使う回線は現地のKTのeSIM回線です。
さてこれで現地回線を利用できるようになったので、どれくらいの速度が出るか試してみました。まずは仁川国際空港の到着ロビー。下り約290Mbps、上り約45Mbpsとかなり高速です。
続いて繁華街のミョンドンへ。こちらでは下り約150Mbps、上りは約45Mpbsでした。
今度はカンナムへ。下り約50Mpbsと速度は落ちましたがこれでもSNSを使う分には問題ありません。上りも約30Mpbs出ています。
最後に帰国日、ソウルの空港鉄道地下駅で測ったところ、下り約400Mpbs、上り約45Mpbs。ここまで早いと5Gかと思えるくらいです。
今回は4日間の滞在でしたが通信に不自由が生じることはありませんでした。eSIMならばカウンターで並んで買う必要もありませんし、自分一人で購入して設定できます。トラブルが起きたときに自分で解決しなくてはならないとはいえ、eSIMを何度か使っているうちにだんだんどのあたりが問題なのか、知識もついてくるでしょう。Wi-Fiルーターのレンタルも手軽ですが、eSIMが使えるスマートフォンを持っているなら、現地プリペイドeSIMの購入を検討するのもいいでしょう。