2023年2月28日から3月2日までスペイン・バルセロナで開催された世界最大の通信関連イベント「MWC Barcelona 2023」ではたくさんのスマートフォンが展示されていましたが、その中にはこれまでとは明らかに違う製品もみられました。それはカメラを進化させたモデル。スマートフォンのカメラはセンサーの大型化や多数のレンズを搭載する多眼化が進んでいますが、カメラの基本に立ち返ってレンズを交換できるスマートフォンも登場しているのです。

シャオミのブースに展示されていた「Xiaomi 12S Ultra Concept」は老舗のカメラメーカー、ライカのレンズを装着できるスマートフォンです。名前からわかるようにコンセプトモデルで市販の予定はありません。

  • Xiaomi 12S Ultra Concept。非売品のためショーケース内で展示

ベースとなる「Xiaomi 12S Ultra」は本体サイズが163.2×75×9.1mmと薄いボディーにソニー製の1インチセンサーを搭載。ライカとコラボしておりライカの色合いで撮影できるモードや、ライカのフィルターエフェクトを搭載しています。このベースモデルのカメラ部分を改造し、カメラのレンズを装着できるようにしたモデルがこのXiaomi 12S Ultra Conceptというわけです。

  • スマートフォンのボディーにライカのレンズが装着されている

Xiaomi 12S Ultra Conceptの本体を見ると、カメラ部分には1インチのセンサーがそのまま外に見えるように取り付けられています。スマートフォンの場合はこの上にレンズが装着された状態で販売されているわけですが、Xiaomi 12S Ultra Conceptはレンズは自分で用意したライカのものを装着するため、こんな仕上げになっているわけです。そのためもしもこのまま市販化されることがあれば、普段はキャップをするなりしてセンサーに傷がつかないようにしなくてはなりません。

  • カメラ部分はレンズがくる中央部分にセンサーを搭載する

実際のレンズの装着には、まずはマウンター(アダプター)を取り付け、その上にレンズを載せます。このあたりは高級デジタルカメラで昔のライカのレンズを使う際と同様の方法を採っているわけです。そもそもがカメラのレンズからフィルム面までの距離は焦点が合うように決まっていますから、それと同じ距離を稼ぐ必要があり、スマートフォン本体に直接ライカのレンズを取り付けることはできません。

  • まずはマウンターを取り付ける

  • ライカのレンズを取り付ける

今やスマートフォンで十分高画質な写真を撮影できますが、スマートフォンカメラのレンズは小さく、カメラ用の大型レンズと比べれば周辺部のゆがみや色の表現に差が出ます。またライカなどカメラメーカーのレンズはレンズごとに独特の色味やボケ味を持っています。ツァイスと提携したVivoのスマートフォンがツァイスのオールドレンズ数種類のボケモードをデジタルで再現しているように、スマートフォンカメラの高性能化が進めば進むほど、逆にフィルムカメラ時代の味わいある「作品」を撮りたいと思うユーザーも増えてくるでしょう。

  • ライカのレンズを楽しみながら撮影

  • ピント合わせを手動で行い作品を作っていく

Xiaomi 12S Ultra Conceptはテスト用に数台が作られ、そのうち2台を実際にMWCの会場で見ることができました。残念ながら製品ではないため販売予定もありませんが、レンズ交換式のスマートフォンが実はすでに販売されているのです。それは中国のカメラ関連メーカー、永諾撮影器材(Yongnuo)が販売中の「YN455」です。

  • 正面から見るとレンズ交換式カメラのYN455

YN455の外観はデジタルカメラそのもの。本体サイズは162×85×56mmと大きく、質量も670gもあります。レンズはマイクロフォーサーズ規格なので、日本で販売されているパナソニックやオリンパスなどのレンズも装着可能。展示品にはYongnuoのレンズが装着されていました。

  • マイクロフォーサーズのレンズを交換可能

この外観からは「レンズ交換式スマートフォン」というよりも「Android OS搭載のデジタルカメラ」と呼んだほうが正しいのかもしれませんね。背面には5インチのディスプレイを備え、LTEを内蔵。Android OS 10が動きます。価格は3,888元(約7万5,000円)です。

  • チルト式の5インチディスプレイを搭載

YN455は豊富なレンズを利用でき、野鳥撮影用の兆望遠レンズから独特の絵が撮れる魚眼レンズまで、マイクロフォーサーズ規格に則ったレンズを自由に使うことができます。とくに望遠側に関してはスマートフォンの小さいレンズでは太刀打ちできません。そしてアプリを入れることができるので写真やビデオを本体上で加工できます。この点は高性能デジカメには出来ない技です。さらにLTE内蔵で撮影後の写真・動画をそのままクラウドへバックアップしたり、SNSアプリを入れてすぐに投稿もできます。

  • 電池切れで画面は点灯しなかったが、Androidアプリを自由に使える

シャオミのコンセプトモデルはデジタル時代のアンチテーゼでもあり、一方、永諾の製品はスマートフォンではできない撮影体験を提供してくれます。スマートフォンカメラの性能はまだまだこれからも高められていくでしょうが、今回紹介したレンズ交換式の2つの製品は、その流れとは別の進化の道を歩もうとしているのです。