スマートフォンを誰もが使っている時代ですが、通話だけのシンプルなケータイもまだまだ需要があります。スマートフォンとペアで使う通話専用のケータイを持つというのも便利でしょう。とはいえ、市販されている携帯電話はあまり種類は多くなく、また気に入ったデザインの製品を見つけることも難しいかもしれません。しかし「WiPhone」なら自分好みの携帯電話を自作することができるのです。2023年1月にラスベガスで開催された「CES 2023」に出展したSizeable Designブースに実機が展示されていました。
WiPhoneは本来は拡張ボードを取り付けてプログラミングもできる携帯電話です。メタル調のボディーは高級感があり、ミニマリストを意識したようなデザインは一般人が普段使いするにも悪くないでしょう。このWiPhoneは名前から想像できるかもしれませんが、基本スペックはWi-Fiを搭載してWi-Fi通話を行うケータイです。
背面のパネルを外すとバッテリーがすぐに見えます。パネルの取り外しはネジをつかって自由なのでバッテリーが劣化しても自分で交換できますし、あるいは巨大なバッテリーパックを取り付ける改造も出来るでしょう。
拡張ボードは様々なものが提供されます。また将来は自作も可能になるとのこと。WiPhone本体は携帯電話型のWi-Fiモジュールであり、ボードを使ってそれを拡張するという発想の製品なのです。
携帯電話として使うための拡張ボードは2種類提供されます。1つはGSM/GPRSボードで、海外の2G通信が可能になります。もう1つはLTEボードで、これを取り付ければ高速なLTE通信が利用できるわけです。LTEボードはホットスポット機能も搭載しており、WiPhone本体のWi-Fiと連動してWiPhoneを4G通信ルーターとして使えるわけです。
どちらのボードにもクアルコムなどの通信モデムを使った通信モジュールが搭載されているため、モジュールを変えれば様々な通信方式に対応できる可能性を秘めています。通信モジュールには多くのメーカーが参入しており、大手ならたとえばSIMCom社が有名です。すでに各メーカーは5G通信モジュールも販売しているので、WiPhone用の5Gモデム拡張ボードが登場する可能性も十分あります。なかなか登場しそうにない「5Gケータイ」もWiPhoneをベースに作れるかもしれません。
他にもIoT通信規格のLoRAモデムボードも提供されているため、WiPhoneをセンサーにつないで毎日数回データを送る、といった用途にも応用が可能。センサーを開発する会社が通信テストのためにWiPhoneを使うというのもありでしょう。WiPhoneの内部にはコネクタがあり、プログラミングボードの「Arduino」との互換もあるとのこと。自分で開発したボードの通信部分にWiPhoneを使うこともできるそうです。
ちょっと変わったところではタイヤのついた自走ボードや、LEDライトを多数貼り付けたライトボードなどもあります。どちらも子供のプログラミング教育用途にも使えるでしょうし、LEDボードはメッセージを受けて特定の色を光らせる、といったエンタメアプリの開発にも応用できそうです。
WiPhoneは拡張性を考えた設計なので本体には若干厚みがあります。とはいえフラットな金属仕上げで高級感がありますね。拡張ボードをつけると本体の厚みが増すため、背面には透明カバーを取り付けるようになっています。このカバーも3Dプリンターで自分好みの色やデザインのものを印刷することもできるでしょう。
ところでトップで紹介した写真には何枚かアンテナが付いていますが、これはWiPhoneをベースに安全性を高めたソフトウェアを搭載したWi-Fi通話モデルの「0xFF Grid Phone」(オフグリッドフォン)。プログラミングもできるWiPhoneだからこそ、このようなカスタマイズもできるというわけです。
スマートフォンの普及により「安全な使い方」のような教育も学校で求められる時代になりました。一方で「スマートフォンはどうしてネットにつながるのか」といった、技術の教育もこれから必要になっていくでしょう。通信技術に興味を持った子供や学生たちに、WiPhoneのような通信モジュール型携帯電話を使ったプログラミング教育もこれから人気になるかもしれませんね。