海外渡航の制限緩和が広がりつつある今、海外出張や海外旅行を再開しようと考えている人も人も増えているでしょう。今やスマートフォンは海外渡航時の必需品ですが、ドコモなど日本のキャリアの多くは海外でそのまま使える国際ローミングサービスを提供しています。しかしその多くが海外利用時には追加料金が必要となります。

ところがahamoなど一部のキャリア回線は海外で使っても追加料金がかかりません。海外渡航が多い人ほど、基本料金だけで日本と海外でシームレスに使えるキャリアと契約するのもお得かもしれません。今回は「ahamo」「楽天モバイル」「X-mobileのスマートWiFi」を台湾と韓国で使ってみました。

  • 日本のスマホ、3社の回線を台湾とソウルで使ってみた

まずは各社の基本料金を見ていきましょう。今回は海外利用に絡んだ料金のみを見ていきますので、日本用に別途追加で契約できるサービスや料金は別途各社のWEBページで確認してください。

  • ahamo:2,970円/月(日本と海外で20GB)
  • 楽天モバイル:1,078円〜3,278円/月(海外2GBのみ)、1GB/500円を海外用にチャージ可能
  • X-mobile スマートWiFi:2,728円/月(日本と海外5GB)、3,278円/月(同20GB)、5,478円/月(同50GB)、別途スマートWiFiの購入が必要

ahamoはドコモのMVNOで海外82か国でそのまま利用できます。韓国など一部の国では5Gローミングも可能。日本と海外で20GBを使い切ると128Kbpsに速度制限されます。また海外渡航が15日を超えると128Kbpsに速度制限されます。これは使い始めの日の日本時間から換算し、15日目を過ぎた深夜0時までを15日間と換算します。そのため海外に長期に出ている場合は、15日を過ぎると日本に帰国するまで速度規制は解除されません。

  • 20GBを海外でつかえるahamo。ただし15日規制がある

楽天モバイルは海外67の国で利用できます。無料利用分は2GBと一番少なく、2GBを越えると128Kbpsに速度規制されます。しかし1GBあたり500円をチャージすれば通常速度で使うことが可能になります。

  • 楽天モバイルは2GBと利用できる量は少ないが追加チャージに対応

X-mobileのスマートWiFiは専用のスマートフォン「スマートWiFi」の利用が必須です。スマートWiFiの価格は43,560円。ただし2年間継続利用すると端末代がキャッシュバックされ実質無料となります。なお自分のスマートフォンを使いたい場合は、スマートWiFiをモバイルルーターとして使うことができます。

  • XmobileのスマートWiFi。単体でも使えるスマホだが、モバイルルーターモードもある

利用可能な国は95か国。海外では1日あたり1GBの利用制限があり、1GBを越えるとその日は速度制限がかかりますが、翌日には解除されます。ahamoのように日数制限が無いため1か月など海外の長期滞在時もそのまま利用可能です。なお50GBプランに加入しても海外で通常速度で利用できるのは最大31GB(31日間)なので、海外利用が主な人は20GBプランか5GBプランでもいいかもしれません。

このように三者三様のサービスを提供していますが、実際に海外ではどれくらいの速度で使えるのでしょうか?そこで今回は日本人の渡航先として最も多いであろう、台湾・台北と韓国・ソウルで3つのサービスを実際に使ってみました。

【その1 台湾・台北編】

台北でテストした端末はahamoがOPPO Reno7 A、楽天モバイルはRakuten Hand 5G、XmobileはスマートWiFiです。なおahamoは5Gローミングもできるのですが、今回は4Gのみのテストを行いました。速度はそれぞれ単体での通信テストと、テザリング機能を使いそれぞれをモバイルルーターとして複数計測してみました。3社ともテザリングが利用できるため、別途自分のスマートフォンを使っても通信は自由に行えます。

  • 台北は市内を昼夜徘徊しながらスピードテストを行った

台北桃園空港に到着後、3台のスマートフォンの電源を入れるとすぐに現地の電波をつかみ、アンテナピクトが立ちました。但し楽天モバイルとXmobileは現地キャリアの名前は表示されません(これはソウルでも同様)。ahamoと楽天モバイルはSMSが届き、海外利用可能なことが通知されます。

  • ahamo(左)と楽天モバイル(右)にはSMS通知が届く(ahamoは都合により別のスマホの画面をスクショ)

まずは台北駅の駅前で3社の速度を数回計測してみました。

  • ahamo:下り30-60Mbps、上り30-40Mbps
  • 楽天モバイル:下り20-30Mbps、上り20-40Mpbs
  • Xmoible:下り10Mpbis前後、上り10Mbps前後

ahamoが楽天モバイルよりやや速い結果となりましたが、楽天モバイルも悪くはありません。これだけの速度があれば一般的な使い方には困らないでしょう。Xmobileは使用している日本の回線がIoT向けのものということもあってか速度は10Mpbs台とやや低速。それでもSMSのテキストのタイムラインを見るなら十分でした。動画の入ったタイムラインを表示するとやや時間がかかるな、といった感じです。

  • 台北駅前でahamo(左)、楽天モバイル(中)、Xmobile(右)

次に繁華街である西門へ行っての計測。夕方でかなり人の多い状況でした。

  • ahamo:下り80-120Mbps、上り30-60Mbps
  • 楽天モバイル:下り20-40Mbps、上り20-50Mpbs
  • Xmoible:下り10Mpbis前後、上り10Mbps前後

ここではahamoがかなり高速で、常時100Mbpsと快適な速度で使えました。ここまで速いと動画の再生もかなりスムーズです。楽天モバイルも台北駅前よりやや速く感じました。Xmobileはここでも10Mpbis前後ですが、しっかりと接続されています。

  • 西門の夕方、人の多い中でテスト。ahamo(左)、楽天モバイル(中)、Xmobile(右)

最後に台湾の夜を代表する観光地でもある士林夜市へ。平日夜で小雨模様だったためか観光客の姿はまばら。それでも屋台には活気があり、台北に来ていることを実感できる時間です。

  • ahamo:下り140-180Mbps、上り5-40Mbps
  • 楽天モバイル:下り10Mpbis前後、上り10Mbps前後
  • Xmoible:下り10-20Mbps、上り10-20Mbps

士林ではahamoが爆速となり、200Mbpsに迫る勢いでした。一方、楽天モバイルは10Mbps前後。Xmobileはここでは逆に20Mbps弱まで出して速度を上げていました。

  • 士林ではahamoが爆速、Xmobileも速度を上げた

【その2 韓国・ソウル編】

ソウルでは端末の準備の都合からahamoは海外販売のサムスンGalaxy S21 Ultra、他2社は台湾同様、楽天モバイルはRakuten Hand 5G、XmobileはスマートWiFiを使いました。

ソウル仁川空港に到着後に3社の電源を入れてみると、ahamoとXmobileはすぐにアンテナマークが立ちましたが、楽天モバイルはなかなかアンテナが立たないために手動でネットワーク(現地のKT)を選択しました。ahamoと楽天モバイルは台北同様にSMSが届き海外で利用できることが通知されます。

  • ソウルの冬は寒い。サムゲタンを食べつつスピードテスト

通信速度は繁華街で計測したほうがいいだろうと、ソウル・ミョンドンにあるロッテデパート前でスピードテストを行ってみました。ahamoは5Gローミングにも対応しているため、4Gと5Gに切り替えて速度を計測してみました。こちらの結果は端末のスクショとなります。

  • ahamo 4G:下り80-100Mbps、上り20-40Mbps
  • ahamo 5G:下り350-420Mbps、上り80-120Mbps
  • 楽天モバイル:下り10-20Mbps、上り10-40Mbps
  • Xmobile::下り15-25Mbps、上り15-25Mbps

ahamoは4Gでも十分高速でストレスは一切感じませんでした。5Gに切り替えるとさらに速く、日本にいるときと同じ感覚でスマートフォンを使っているように思えます。

  • ahamoは4Gでも快適だが(左)、5Gで使うと爆速だ(右)

楽天モバイルは3社の中で下りは一番低速でした。やはりこの速度ではタイムラインに動画があると表示は遅くなります。とはいえ最低限の接続には十分使えるでしょう。上りが意外と健闘しており、写真や動画のアップロードはストレスを感じません。Xmobileの下り速度は、ソウルの他のエリアでも楽天モバイルより速い傾向です。

  • 楽天モバイル(左)とXmobile(右)。ソウルでは楽天モバイルよりXmobileのほうが速度が速く感じた

【まとめ】

ahamoはどちらの国でも安定した速度を出していました。海外利用を考えると最も快適です。ただし15日を越える長期滞在時や20GBを越えたときは速度制限に達し、海外では低速利用となります。楽天モバイルは速度は遅いものの2GBまでしか基本料金内で使えないことを考えると、この速度でSNSなどを中心に使うのがよさそうです。万が一2GBを越えても1GBずつチャージできるのは親切でしょう。XmobileはスマートWiFiを購入する必要があるものの、海外での日数制限もなく長期の出張や旅行に向いています。また3つの料金を毎月変更できるので(25日までに申請必要)、渡航頻度に合わせて5GBと20GBプランを自由に切り替えできます。

3社の回線を台北とソウルで使ってみて感じたことは、日本で契約したスマートフォンや回線をそのまま海外で使え、しかも別途ローミングのデータ購入申込なども不要、追加料金もかからないのはとても便利でした。海外出張が頻繁な人や、コロナ禍前のように毎週末のようにアジアなどの近距離海外に出かけるような人は、契約を検討するのもいいでしょう。また割り切って海外用回線としての契約もありかもしれません。2023年は海外渡航がより自由になるでしょうから、海外でスマートフォンを使う際の参考にしてください。