2023年1月5日から8日までラスベガスで開催された世界最大のIT関連イベント「CES 2023」では様々な製品が展示されました。新技術のお披露目から「これは面白い!」と思えるアイディア製品まで、世界各国のメーカーが知恵を絞った製品が並べられていたのです。その中からいくつかを紹介しましょう。

庭にやってくる小鳥たちの写真を自動で収集

郊外などに住んでいれば庭にある木に小鳥たちがやってくることでしょう。また都会でもベランダにスズメなどがよく来るかもしれません。「Bird Buddy」は小鳥用の給餌巣箱ですが、小型のカメラが搭載されています。使い方は簡単で、あらかじめ小鳥用の餌を入れて、あとはスマートフォンと接続させておけば、小鳥がやってくるたびに通知が届き、餌を食べているときの姿を自動で撮影してくれます。撮影記録は「コレクション」として自動的にアルバム化されます。

  • やってくる小鳥を自動撮影する「Bird Buddy」

    やってくる小鳥を自動撮影する「Bird Buddy」

小鳥を撮影するために、餌を使っていわばおびき寄せているような仕組みですが、小鳥好きな人にとっては1日中巣箱を観察していなくてもカメラが自動で撮影してくれるため、自宅付近の鳥の生態をより深く理解できるでしょう。また一般の人でも自分が会社や学校に行っている間に様々な鳥がやってくることを知れば日々の生活の楽しみも増えるのではないでしょうか。

  • 毎日のコレクションを見れば、どんな小鳥がいつやってきたかがわかる

電子レンジの扉が透明になる!

電子レンジで調理をしながら、中の様子を見ようと時どき扉を開けてしまうことは誰でもあるはず。ですが、電子レンジの前面のガラスには身体に有害な電磁波が外に飛ばないようにメッシュ状の金網が貼ってあり、そのため内部を見ることができません。

Metamaterialsはナノ構造の薄い金属層による透明な金属メッシュ素材「METAWEB」を開発しました。これを電子レンジのガラスに貼り付けることで、シースルーで中が見える電子レンジの製品化が可能になります。調理具合を見られるのでドアを何度も開け閉めする必要はありませんし、調理がはやく終わったら即座にタイマーを切れるので省電力にもつながります。また電子レンジの前にWEBカメラを置いて、隣の部屋から調理の様子を見る、といったこともできるわけです。

  • 「METAWEB」を使った透明ドアの電子レンジ

ところでこのMetamaterialsは積水化学とDOCOMO Innovationsと共同で5Gと6Gで使える透明フレキシブル電波反射フィルムもすでに開発しています。5Gの電波は3Gや4Gと比べ高い周波数を使うため、室内などで障害物があると回りこみにくいという弱点があります。透明フレキシブル電波反射フィルムを部屋の壁や天井に貼り付ければ電波のデッドゾーンをなくせますし、透明なので貼り付けていることもわかりません。今後5Gの利用が広がっていく中で、このフィルムは様々なところで利用されていくことでしょう。

  • 5Gと6Gに対応する透明フレキシブル電波反射フィルム。室内カバレッジを広げられる

脱プラスチックを実現する木材樹脂で地球環境を守ろう

韓国の東南リアライズは木の主成分であるセルロース成分を主体とした高分子「CXP(Cellulose Cross-linked Polymer)」を開発しました。簡単に言えばプラスチックと同じように成形できる素材なのに、原材料は木材なのです。いまやSDGsが声高に叫ばれ、どの企業も環境問題抜きに製品開発に取り組むことはできません。CXPは今使われている多くのプラスチック製品を環境にやさしい製品に変えられるわけです。たとえばスマートフォンのケースは年間「億個」の単位で捨てられていますが、素材にCXPを採用することで環境汚染の低減が期待できます。

  • 木材が原料となる樹脂「CXP」で作ったスマホケース

本来硬いセルロースを樹脂のように熱で柔らかくなる素材にするにはノウハウがあるとのこと。CXPは3Dプリンター用のフィラメントも開発しているので、3Dプリンターで様々なものを試作したり自作する人でも環境を考えたモノづくりを行うことができます。CXPで作られた製品はどことなく木や天然素材を感じさせる淡い色合いになるので、普段使いする日用品にも向いていそうです。

  • 3Dプリンターでも木材ベースの成形物を作ることができる

  • CXPで作られた日用品など。色合いがいい感じ

快適な睡眠を光と音でサポート

Hutchの「Restore」はスマートスピーカーですが、ベッドルームに設置して睡眠をサポートしてくれる製品です。ユーザーがベッドに入ってから、朝になって起きるまで、音楽とライティングで快適な睡眠環境を提供してくれるのです。

  • 睡眠サポートライトの「Restore」

ベッドに入ると、まずはRestoreのライトが読書をするのに最適な光量で点きます。またあらかじめスマートフォンで設定していた音楽を鳴らしてくれます。この音楽はHutchがリラックスや落ち着きを与える音楽ライブラリを提供、自然な眠りにつけるようサポートしてくれるわけです。そして読書を終えてRestoreをタッチすると、ライトの光は弱くなり、さらに4-7-8というサイクルで点灯を繰り返します。これは眠るときの呼吸のタイミングに合わせているそうです。そしてある程度時間がたつと消灯、また設定しておいた心地よい睡眠音楽が小さい音量で流れます。

朝になりアラームをセットした時間になると目覚めの音楽が鳴り、ライトも明るい色で光り今度は起床を促します。こうしてRestoreを毎日使い続けることで実際に睡眠状態が改善され、それにより目覚めもすっきりする効果を得たユーザーがたくさんいるとのことです。

  • 睡眠スタイルにあわせて光り音楽を再生

たった3つのカートリッジで24種類の香りが楽しめる

「Wemorii」は部屋の香りをコントロールできるスマートフレグランスと呼べる製品です。本体に3つのカートリッジをいれるだけで、スマートフォンにプリセットされた24種類の香りを楽しめます。対応する部屋の広さは最大1,000平方メートルなので、一般的な家庭なら十分カバーできます。香りは4つのカテゴリ「睡眠」「エネルギー」「免疫」「癒し」それぞれに6種類、合計24種類がセットされているので、その時の気分に応じてスマートフォンからセット可能になっています。外出先からのリモート操作にも対応するので、疲れて自宅に戻ったときに、部屋の中が森林の癒しの香りになっている、といった操作も行えます。また自分好みの香りをカスタマイズすることもできるそうです。

  • 気分に応じた香りを選べる

いつでも咄嗟に録音できるクレジットカードサイズの録音機

台湾の「Slimca」はクレジットカードとほぼ同じ大きさ、厚さ2mmの薄型のカードで、この中にバッテリーも内蔵しています。録音機能を搭載しており、マイクなどをつながずとも本体のボタンを押すだけで録音が始まります。最大録音時間は180分で、これはバッテリーの最大使用時間とも同じです。専用マグネットケーブルでの充電が必要ですが、1度充電すれば1年間いつでも録音可能とのこと。またBluetooth/Wi-Fiを内蔵しており、録音した音声はスマートフォンにそのまま自動転送されます。

  • クレジットカード型の録音機「Slimca」

録音をするためならスマートフォンを使えば十分ですよね。しかし緊急の時などにスマートフォンで録音をするのは意外と大変なもの。事故などのトラブル時にスマートフォンを操作していればさらにトラブルを重ねる要因になりますが、ポケットに忍ばせたSlimcaのボタンを押すなら簡単です。録音距離は最大7メートル、サイフの中に入れておいても5メートルまで録音できるとのこと。また電話中にスマートフォンの裏側にSlimcaを貼り付けるようにして持ち、ハンズフリーモードに切り替えれば会話の録音もできます。他にも塾などでの学習用途など、場所を取らずに持ち運べるため利用シーンは多岐に渡るでしょう。

  • サイフやカード入れにも収まる薄さ