最近のスマートフォンのカメラなら、日常的なスナップ写真を撮っても十分満足できる画質が得られるでしょう。それほどまでに最近のスマートフォンのカメラ性能は高まっています。ハイエンドモデルのカメラの性能はさらに進化しており、高画質なデジタルカメラに迫る機能の搭載が進んでいます。

vivoが2022年11月23日に海外で発売した「vivo X90 Pro+」は5,000万画素クラスのカメラを4つも搭載し、ソニーXperiaシリーズと同じ老舗カメラメーカーのツアイスと提携、そして高級デジカメと同じ大きさの1インチセンサーを搭載するなど、世界最強のカメラスマートフォンと呼べる製品です。X90 Pro+はスマートフォンを使った写真撮影を「記録」から「記憶」という体験に変えようとしているのです。

  • 高級一眼カメラに迫る美しい写真が撮れるvivoのX90 Pro+

X90 Pro+はチップセットにクアルコムの最新モデル「Snapdragon 8 Gen 2」を搭載しています。このチップセットは2022年11月15日に発表されたばかりで、X90 Pro+はサムスンなどに先駆けて世界で最初に採用しています。またディスプレイは6.78インチ、3,200x1,400ピクセルと高い解像度。バッテリーは4,700mAhで80Wの急速充電に対応、満充電に要する時間は33分です。さらに無線充電も50Wと高速で、ワイヤレスでも1時間以内に充電を終えることができます。X90 Pro+はスマートフォンとしての性能も最強です。

  • スマートフォンとしても世界最高クラスの性能を誇る

そして自慢のカメラは5,000万画素+5,000万画素+6,400万画素+4,800万画素の4つを搭載します。これだけでもかなりのハイグレードなカメラ構成ですが、X90 Pro+のカメラは画質が高いだけではありません。まるで一眼カメラの交換レンズのように、それぞれのカメラに特徴があるのです。

  • 4つのカメラそれぞれに大きな特徴がある

まずメインの5,000万画素カメラはデジタルカメラと同等の1インチの超大型センサー、ソニー「IMX989」を搭載しています。このセンサーはシャープの「AQUOS R7」や発売になったばかりのライカ「LEITZ PHONE 2」、海外ではシャオミのライカコラボモデル「Xiaomi 12S Ultra」が搭載してるもの。光を受けるセンサーサイズが大きければクリアな画像の表現ができますし、夜景撮影にも強みを発揮します。さらにレンズは8層構造、ツァイスのT*コーティングを施したことで内部反射などを抑えてクリアな画像が得られます。

  • 1インチセンサーにT*コーティングのレンズ構成。もはや高級デジタルカメラのようだ

続いて2つ目のカメラは4,800万画素の超広角。一般的なスマートフォンでは超広角カメラの画素数は800万や1,300万などのものが多いのですが、X90 Pro+はそれらより倍以上も画素を確保し、風景や集合写真などワイド撮影をより美しく残せます。ゆがみ補正機能も備えており、ビルなどを撮影したときに画面の端の被写体のゆがみを正してくれます。

  • 一般的な超広角カメラは被写体の両端がゆがむ(左)。X90 Pro+は補正してくれる(右)

3つ目のカメラは望遠。6,400万画素で焦点距離は90mm、望遠倍率3.5倍となります。デジタルでは最大100倍までに対応し、X90 Pro+の撮影範囲を大きく伸ばしてくれます。また90mmは人物撮影にも適しており、適度なボケも得意とします。

  • 1倍の写真の遠くに見える灯台を100倍で写す。さすがに画像は荒れるがディテールはわかる

そして4つ目のカメラは焦点距離が50mm。但しこちらはF1.6と明るくしており、人物撮影にフォーカスしたものとなっています。カメラを使ったことのある人ならわかると思いますが、ポートレート撮影はちょっと焦点距離の長いレンズを使い、やや離れた距離から撮影すると美しいボケのある人物像を写せます。iPhoneなどでもポートレートモードを選ぶと2倍になるのはその理由からです。X90 Pro+はこの50mmと90mmの2つを使い、ポートレート撮影に最適な製品であることもアピールしています。

  • 50mm(上)と90mm(下2枚)によるポートレート撮影

ポートレート撮影では効果的な「ボケ」も演出できます。最近のスマートフォンのカメラアプリにはポートレート機能が搭載されており、F値を操作することでデジタルでボケの度合いを調節できます。それに対してX90 Pro+はボケの「味」そのものを選べるのです。X90 Pro+に搭載されているボケのフィルターはツァイスの歴代の名レンズと呼ばれるものを模したもので、古くからのカメラユーザーやオールドレンズを愛用する人にとってはおなじみのものでしょう。ツァイスの4つのレンズのボケをフィルターで提供しています。

  • X90 Pro+はツァイスの名レンズのボケを再現できる

夜景撮影に対しての強みでは、星空を手持ちで撮影することも可能です。星空を明るく写すだけではなく、三脚不要で撮影できるため先日の皆既月食などもX90 Pro+なら美しく撮影できたかもしれません。

  • 左がX90 Pro+で手持ち撮影した星空。一般的なスマートフォン(右)より明るい

動画の撮影も夜間では強く、ネオンライトなど光のコントラストが激しい部分も明かりをつぶさずに再現して録画できます。なお動画撮影は8Kまでに対応、他社のスマートフォンでも8K録画可能なモデルがありますが、フレームレートは24fps。これに対してX90 Pro+は8K 30fpsの録画が可能です。

  • X90 Pro+(上)と他社のスマートフォン(下)で夜間の動画を撮影。ネオンライトのあたりに表現の差が出る

X90 Pro+のカメラの優れた性能は他にもありますが、このように強力な性能を実現するためにハイスペックなSnapdragon 8 Gen 2を搭載するだけではなく、vivoが独自に開発したイメージングプロセッサ「V2」も搭載しています。V2は画像・映像部分の処理をSnapdragonに代わり行うことでより高速なAI処理などを可能にするのです。スマートフォンを動かす心臓はクアルコムのチップセットを使い、カメラ周りだけは自社チップを使うことで最強のカメラフォンを生み出すこととなったわけです。

  • X90 Pro+のカメラ処理を高速化させるV2チップ

X90 Pro+の価格は中国で6,499元(約12万3,000円)。本体背面のビーガンレザー仕上げもカメラのような風合いにしており、高級デジタルカメラのようなイメージを演出しています。

vivoは日本には進出していませんが、「写真を撮影することそのもの」を楽しめる同社のハイエンドスマートフォンなら、日本でも意外と人気になるかもしれません。ぜひ日本でも発売してほしい製品です。

  • 高級カメラのような仕上げも魅力がある