ドイツの名門カメラメーカーであるライカのスマートフォン「LEITZ PHONE 1」の後継モデル「LEITZ PHONE 2」が登場しました。カメラ機能が注目のこのスマホ、新モデルではカメラ機能をさらに充実させました。

  • LEITZ PHONE 2

    ライカのスマートフォン「LEITZ PHONE 2」

優れたカメラ機能はさらに楽しく

「LEITZ PHONE 2」は、ライカとソフトバンクが協業して開発したスマートフォン。製造はシャープで、これは「LEITZ PHONE 1」と同じ組み合わせ。今回も日本向けの端末となります。

ベースとなるのはシャープの「AQUOS R7」。そのため、カメラを含む内部のハードウェアは共通となっています。大きく異なるのは、そのデザインとカメラのソフトウェア部分になります。

まずは注目のカメラから。センサーは1型/約4,720万画素で、ピクセルビニングによって画素ピッチを大型化して画質向上を図っています。像面位相差AFのOcta PD-AFを搭載してAF速度が改善。レンズはF1.9、35mm判換算19mmの「SUMMICRON 1:1.9/19 ASPH.」を採用しています。カメラがもう1つ配置されていますが、これはポートレートなどで使う測距用のセンサーです。

  • カメラ部

    カメラ部がレンズマウントのように大きくなっているのは従来通り。向かって右側にあるのがLED、左側にあるのが測距用カメラです

レンズは一眼の19mmですが、その中央部分を使った24mm相当の画角が「1倍」となり、その「0.7倍」として19mmを使用する方式となっています。2倍以降はデジタルズームで、デジタル4倍になるとピクセルビニングを解除して撮影するという機能を搭載。

  • SUMICRONレンズ

    レンズは前モデルと同じ、19mmのSUMMICRONレンズ

このあたりのスペックは「AQUOS R7」と共通しています。もともとライカと協業してカメラに関して共同開発をしているので、基本的な部分に変更はありません。

違いとしてはまずUIの変更があります。英数字のフォントがライカフォントとなり、イメージが変わっています。細かい部分の表記も異なっていますが、右端の「AI」ボタンがなくなってハンバーガーメニューに置き換わっています。

  • カメラ画面のUI

    「LEITZ PHONE 2」のカメラ画面。英語のフォントがライカのフォントになっています。中央下にあるズームアイコンの右側にハンバーガーメニューがあります

ハンバーガーメニューのアイコンをタッチするとメニュー画面が表示され、セルフタイマーやフラッシュの設定に加え、グリッド表示/AI/ヒストグラム表示の有無が選択できます。「AQUOS R7」では、セルフタイマーとフラッシュは設定からアイコンをメイン画面に表示してワンボタンで設定できるようになっており、「LEITZ PHONE 2」でもそれが可能なのですが、このメニュー画面があるので、スッキリとした画面表示となります。

  • 標準の写真モードのメニュー画面

    標準の写真モードのメニュー画面。AIモードやセルフタイマーの設定などができます

  • メニュー画面2

    なお、後述するLEITZ LOOKSでは項目が変わり、HDRのオンオフができるようになります

「LEITZ PHONE 2」独自の設定としてはブライトフレーム機能があります。M型ライカのファインダーはレンズにあわせた見え方にならないため、装着したレンズの画角を白い枠で表示する――というのがブライトフレームです。これを模したのが「LEITZ PHONE 2」のブライトフレーム機能で、レンズそのものの画角である19mmで画面を表示し、設定している画角の写る範囲はブライトフレームで表示します。

  • ブライトフレームを含めた写真の設定

    設定画面からブライトフレームのオンオフが設定可能

機能自体は「LEITZ PHONE 1」にも搭載されていたものですが、今までブライトフレームに慣れていた人でないと使い方は難しいかもしれません。

  • 等倍時のブライトフレーム

    1倍(24mm)のブライトフレームの表示

  • 0.7倍時のブライトフレーム

    0.7倍(19mm)だとフレームが消えます。24mmのときとディスプレイ上の表示は変わりません

  • 2倍ズーム時のブライトフレーム

    2倍にしたところ。ブライトフレームの周囲は画角外です

注目は「LEITZ LOOKS」。これまではMonochromeモードを搭載して、ライカらしいモノクロ写真の撮影を楽しめましたが、カラーモードとして新たにCinema Classic/Cinema Contemporaryの2種類を追加。名称に反して動画モードでは使えませんが、“古いシネマのような色合い”というモードです。Classicは彩度とコントラストが上げられているようで、Contemporaryは彩度とコントラストを抑えた古びたフィルムを思わせます。通常のカラーモードと合わせて4種類から楽しめて、写真の雰囲気を高められます。

  • LEITZ LOOKS

    LEITZ LOOKSでは、レンズを左右スワイプで切り替え、レンズ銘の左側にあるアイコンでカラーモードと切り替えます

  • CINEMA CLASSIC

    カラーモードは4種類。最初はOriginalモードなので通常のカラーになります

加えて、レンズシミュレーションも搭載し、「SUMMILUX 28」「SUMMILUX 35」「NOCTILUX 50」という3本のレンズモードが追加されています。それぞれ、カラーモードも切り替えられます。

  • 通常の写真モード

    通常の写真モード。高い描写力でカメラ的な、スマホカメラっぽくない描写です

  • SUMMILUX 28

    SUMMILUX 28での撮影。Cinema Contemporaryです

  • SUMMILUX 35

    SUMMILUX 35。スマートフォン画面で見る限りはそうでもないですが、拡大すると描写が甘くなっています

  • NOCTILUX 50

    NOCTILUX 50。さらに甘くなっています。LEITZ LOOKSにすると通常の写真モードよりも背景がボケていますが、被写体までの距離があるため、不自然なほどではありません

SUMMILUXは、ライカのレンズ銘として、F1.4の明るさのレンズに与えられます。NOCTILUXはおおむねF1.0前後(F0.95~F1.2あたり)のレンズ。ただし、「LEITZ PHONE 2」の実レンズはSUMMICRON(おおむねF2.0のレンズ、「LEITZ PHONE 2」はF1.9)なので、名称にF値は記載されていません。

  • NOCTILUX 50のOriginal

    被写体に近づくと背景ボケが強く出ます。これはNOCTILUX 50のOriginal

  • NOCTILUX 50のMonochrome

    Monochrome

  • NOCTILUX 50のCinema Classic

    Cinema Classic

  • NOCTILUX 50のCinema Contemporary

    Cinema Contemporary

LEITZ LOOKSでは、それぞれの焦点距離と、ソフトウェアによる背景ボケのシミュレーションで再現をしています。ボケ量は基本的に焦点距離/F値/被写体までの距離で決まりますが、これをシミュレートしたのが今回の機能。開発陣に聞いても、特にそれぞれのレンズの描写を再現したという話はないようです。

  • Cinema Contemporaryの撮影例

    Cinema Contemporaryだと色が強く出ます

  • Monochromeの撮影例

    Monochromeだと、多少の甘さもノイズも味に見えなくもありません

ただ、これがとにかく楽しいのです。通常の撮影モードとLEITZ LOOKSモードを切り替えて使えば、SUMMICRONの19mm/24mm、SUMMILUXの28mm/35mm、NOCTILUXの50mmという形で、いわば5本のレンズを切り替えて撮影する感覚です。

  • NOCTILUX 50で花を撮影

    NOCTILUX 50で花を撮影。拡大すると甘いのですが、ボケがいい感じです

  • Cinema Contemporaryの撮影例

    Cinema Contemporaryでちょっと懐かしい感じのイメージが醸し出されます

同じような使い方はソニーの「Xperia」シリーズにもあり、「レンズ交換するように」という使い方をしています。LEITZ LOOKSの場合は同じセンサーとレンズを使ったデジタルズームとボケのシミュレーションとなりますが、レンズとカラーモードの切り替えを行っていると撮影が楽しくなります。

  • 19mmの撮影例

    19mmでの撮影。暗部の粘りは1型センサーならではでしょうか

  • 24mmの撮影例

    24mm。リアルな描写です

  • 2倍ズームの撮影例

    2倍ズームぐらいだと、デジタルズームでもそれなりの描写をします

  • SUMILUX 28、Monochromeモードの撮影例

    SUMMILUX 28のMonochromeモード。モノクロセンサーではないので、ダイナミックレンジが特別広くなるというわけではありません

LEITZ LOOKSモードに切り替えるとデジタルズームはできないため、それぞれのレンズの画角に固定され、単焦点レンズの撮影感覚になります。しかも28mm/35mm/50mmと使いやすい画角で、かつカラーモードと組み合わせると、色々な雰囲気の写真が撮れます。やはり、単に「○倍ズーム」などと表現されるより、単焦点レンズを交換するように画角を切り替わるのは扱いやすいものです。

  • オートHDRモード/LEITZ LOOKSモードの撮影例

    オートHDRモードにすると、記録時間が伸びてしまいます。特に背景ボケをソフトウェア処理しているLEITZ LOOKSモードで顕著です

  • オートHDRモードを利用しない撮影例

    どちらかといえば、1型センサーを生かして露出補正でカバーした方が、自然な描写ですし記録待ちも短いので、よさそうです

もちろん実際は全てデジタルズームなので、デジタル処理に伴う画質の劣化はあります。さすがに味とまでは言えませんが、描写が甘くなってはいるものの拡大表示さえしなければ見られる写真に仕上がります。高画質というわけではありませんが、スマホカメラとしては標準的で、使い方の提案というスタイルです。

  • 彫刻作品の撮影例

    ソフトウェア処理なので、シーンによって背景処理に失敗することもあります。このあたりはもう一息ソフトウェアの改善を期待したいところです

  • 近接撮影の例

    近接して撮影するとかなり背景は大きくボケます

大口径レンズをシミュレートしているため、背景ボケも強めに生成されます。基本的には比較的近距離の被写体があって、「人と背景」「奥行きのある被写体」の場合に背景をぼかす処理となっています。そのため、平坦な被写体、風景写真では無理に動作しません。ポートレートモードと同じ仕組みですが、F値を変えたり美肌にしたりといった機能はありません。

  • 28mm相当の撮影例
  • 35mm相当の撮影例
  • 50mm相当の撮影例
  • 28mm/35mm/50mmで、それぞれ被写体の大きさが同じになるようにして撮影してみました。きちんとボケ量が変化しているようです

個人的には、LEITZ LOOKSを使うときは単にシャッターを押すだけでなく、露出も気にして撮影したくなります。露出補正は撮影の基本でもあるので、もう少し補正操作がしやすくなれば良かったところ。

いずれにしても、1型センサー&ライカレンズという高い基本性能に加えて、レンズシミュレーションによってレンズ交換の楽しさも追加されていて、カメラらしさがさらに増しているように感じました。

  • LEITZ LOOKSの撮影例

    少し気になったのが、LEITZ LOOKSにすると露出が明るめになることが多かった点。個人的には少しマイナス補正した方が印象はいいと感じたのですが……

  • LEITZ LOOKSの撮影例

    とはいえ、その辺りもシーン次第ではあります

  • 撮影例1
  • 撮影例2
  • 撮影例3
  • 撮影例4

扱いやすくなった大画面スマートフォン

デザインは、背面のホワイトに赤いLEITZロゴがまぶしいデザイン。「ライカM8ホワイト」にインスパイアされたという本体カラーは、光沢のあるクリアなホワイトでインパクトがあります。

  • 本体正面

    スマートフォンとしても使いやすい大画面

  • 本体背面

    クリアなホワイトカラーに赤いロゴがアクセント

ディスプレイは約6.6型Pro IGZO OLED WUXGA+(2,730×1,260ドット)。SoCはSnapdragon 8 Gen 1、メモリは12GB、ストレージは512GB、5Gはミリ波にも対応し、物理SIMとeSIMのデュアルSIM構成。

こうしたスペックはおおむね「AQUOS R7」と共通しています。防水防塵/おサイフケータイ/ワイヤレス充電など、機能はてんこ盛りのハイエンドスマートフォンです。

背面はわずかに側面がカーブして手のひらへのフィット感を高めつつ、ディスプレイはフラットになり、操作性を改善しました。側面がカーブしたディスプレイは、全面を画面がカバーしてくれる反面、手で握ったときに側面に触れて誤操作しやすくなる難点もありました。「LEITZ PHONE 2」ではディスプレイがフラットになったので、そうした誤操作はしにくくなっています。カメラとして構えるときも使いやすくなっています。

  • 背面のカーブ

    わずかにカーブした背面

  • カメラ部の出っ張り

    カメラの出っ張りは小さめです

  • 左側面
  • 右側面
  • 天面
  • 背面

    ぐるっと周囲を確認。基本的にハードウェアの配置はAQUOS R7と共通。ディスプレイ側(下側)がフラットなのが分かります

側面には従来通りレンズのピントリングなどにあるギザギザのローレット加工が施されています。滑りにくいデザインで、特にカメラのように構えた時に安心して持てます。

  • 側面のローレット加工

    側面にローレット加工

スマートフォンとしては大型なので、コンパクトに持ち歩くという感じではありませんが、ハイスペックなので、カメラからゲーム、動画視聴など、これ一台で全てをまかなえるスマートフォンです。

次の表は、「Galaxy Z Flip4」とベンチマーク結果を比較したものです。 ベンチマークテストを実施してみると、最新のSnapdragon 8+ Gen 1を搭載した「Galaxy Z Flip4」に比べてGPU性能で多少違いはありますが、極端な差があるわけではなく、十分なハイパフォーマンス。普段の利用で問題を感じる場面は少ないでしょう。

ベンチマークテスト LEITZ PHONE 2 Z Flip4
3DMark Wild Life Extreme 2,434 2,848
GeekBench Single-Core 1,219 1,318
Multi-Core 3,618 4,173
GFXBench マンハッタン3.1 3,682 5,568
マンハッタン3.1オフスクリーン 6,952 6,042
Aztec Ruins OpenGL High Tier 2,508 2,107
Aztec Ruins Vulkan High Tier 1,974 2,356
GeekBench ML CPU 506 514
GPU 2,101 2,125
NNAPI 3,132 2,821
  • GFXBenchの結果

    ベンチマークの結果の一例。こちらはGFXBench

  • 3DMark

    3DMarkの結果

「LEITZ PHONE 2」は、ソフトバンク/シャープと連携した第2弾のライカスマートフォンです。シャープ側のカメラ性能向上によって普段遣いのスマホカメラとしても実用的になりましたが、LEITZ LOOKSの進化によるレンズシミュレーションは、じっくり構えて撮影するというカメラとしての使い方をさらに追求しているようで、撮影が楽しくなるスマホカメラです。