シャープの「AQUOS R7」や海外で発売になったシャオミの「Xiaomi 12S Ultra」など、1インチの大型カメラセンサーを搭載したスマートフォンが次々と登場しています。デジタルカメラと同等サイズのセンサーを搭載することでスマートフォンのカメラは次のステップへと大きく進化しはじめているのです。でもその進化はメインカメラだけではありません。セルフィーやビデオ会議に利用できるフロントカメラもこの1年で高性能化が進みました。その理由は今話題のあのサービスが大きく影響しているようです。
vivoが販売中の「V23 5G」はiPhoneのようなノッチが画面の上部に見えます。iPhoneはフロントカメラの他にセンサーを搭載するためにノッチデザインとなっていますが、V23 5Gはフロントカメラを2つ搭載したことでこのようなデザインになっているのです。V23 5Gのフロントカメラは5,000万画素の広角と800万画素の超広角。つまりフロントカメラでもメインカメラと変わらぬ高画質な写真が撮れるだけではなく、複数人が一緒に写るワイドセルフィーにも対応するのです。ちなみにメインカメラは6,400万画素広角、800万画素超広角、200万画素マクロの3つを搭載、こちらも高画質です。
vivoはかなり前からフロントカメラ性能に力を入れたメーカーで、インドでセルフィーが流行ったときは現地で大人気のブランドとなりました。最近はメインカメラの高性能化に注力しており、世界初のジンバル機能搭載カメラモデルを出しています。V23 5Gは各メーカーが競い合うメインカメラの高画質化には背を向け、ひたすらフロントカメラの性能を追求したスマートフォンとも言えるのです。
V23 5Gは多彩な美顔モードを内蔵しており、女性の顔をナチュラルに美しく写し出してくれます。さらにAiを利用した夜間撮影モードにも対応しており、暗い室内でも顔を明るく写せます。フラッシュ不要で明るいセルフィーが撮れるため不自然な仕上がりにはなりません。また暗いところではデュアルフラッシュライトが威力を発揮します。V23 5Gはノッチの左右にフラッシュライトを1つずつ、合計2つ搭載、コールド・ニュートラル・暖色と3つのライティングを切替できるため撮影シーンに応じて最適なセルフィーの撮影も可能です。
一方、シャオミはvivoとは異なるアプローチでセルフィーをより楽しませてくれます。それは女性と男性を区別して自動的に美顔効果をかけてくれる機能です。この機能はもともと2022年4月に発売した女性向けスマートフォン「Civi 1s」に搭載されたもの。女性と男性では肌の質が異なることから美顔のアルゴリズムも異なるものを用意し、男女が一緒に写るセルフィーでも、それぞれの顔を最適な美しさに仕上げます。
最新の「Xiaomi 12S」シリーズにもこの機能は搭載され、シャオミの上位モデルの標準機能になるようです。Xiaomi 12Sシリーズはライカとコラボしたカメラを搭載していることから男性ユーザーが多いようですが、ボケを生かしたポートレートだけではなくSNS映えする美顔撮影を男性にも提供してくれるというわけです。
さてvivo V23 5Gは5,000万画素という超高画質なフロントカメラを搭載しているのですが、ファーウェイが7月に発売した「nova 10」シリーズはさらに高画質な6,000万画素のフロントカメラを搭載しています。ここまで高画質なら、もはやメインカメラ代わりに使うこともできるでしょう。nova 10シリーズにはフロント単眼6,000万画素カメラの「nova 10」と、6,000万画素+800万画素の「nova 10 Pro」の2機種があります。
美しいセルフィーを撮りたいという需要はこれからも無くならないでしょう。とはいえvivoやファーウェイの高画質化はやりすぎとも思えるかもしれません。セルフィーを撮るだけならここまで高画質でなくとも十分でもあるからです。しかしスマートフォンの機能や使い方が時に目覚ましい進化を遂げるのは理由があります。今回紹介したモデルのように、最近のフロントカメラの高画質化が急に進んでいるのはTikTokに代表される縦型動画の利用が一般的になってきたからでしょう。
縦型動画を撮るには友人などにメインカメラを使って撮影してもらうか、フロントカメラを使ってプレビューを見ながら自撮りする必要があります。でも自分で撮影するときに、画質の低いフロントカメラでは動画の仕上がりも今一つになってしまいます。一生懸命撮った動画が低画質では友人たちからの評価も上がらないかもしれませんよね。vivo V23 5Gもnova 10もどちらもフロントカメラで4K動画が撮影可能。メインカメラと変わらぬ高画質な動画をSNSにアップロードできるわけです。
またvivo V23 5Gはフロントカメラが目の瞳を認識してフォーカスを合わせてくれ、さらに動画撮影時にも美顔モードが利用可能です。前後カメラを使ったデュアルビューティービデオなど、動画でも美しいセルフィーを撮影することができます。
縦型動画サービスの人気がさらに高まれば、他のメーカーもメインカメラだけではなくフロントカメラの高画質化・高性能化を進めることでしょう。ASUSの「Zenfone 8 flip」のようにメインカメラが回転してフロントカメラにもなるようなモデルも脚光を浴びそうです。今は姿を消してしまったポップアップ式カメラなども、縦型動画の普及で復活するかもしれません。