世界で一番売れているスマートウォッチはAppleの「Apple Watch」なのは誰もが知るところでしょう。カウンターポイントの調査によると、2021年第2四半期のApple Watchのシェアは28%で堂々の1位。それに次ぐのがシェア9.3%のファーウェイ、さらに7.6%のサムスンと続きます。では4位はどのメーカーでしょうか? シャオミやガーミンなどの名前がでてくるかもしれませんが、実は大手3社のあとを追いかけているのはimooというメーカーです。
実はimooは1年前の2020年第2四半期にはサムスンを抜いて世界シェア3位でした。ここまで大きなメーカーにも関わらず日本で全く知られていないのは中国メーカーということもありますが、imooは子供向け、すなわち「キッズ・スマートウォッチ」専業なのです。日本でも子供向けのスマートウォッチはいくつか出ていますが、imooは中国で複数の製品を展開、しかも高性能カメラを搭載するなど大人向けのスマートウォッチ顔負けの機能を搭載しています。
imooはグローバル向けの名称で、中国国内では「小天才」のブランドで製品を展開しています。「小さい天才」の名前からわかるように、ターゲットは子供。2015年に最初の子供向けのスマートウォッチを出してから、品質の高さやアプリケーションの使いやすさが受け中国国内で人気となっています。中国では子供の誘拐が今でも多いことや、共稼ぎが多いことから子供の安全を守るために子供向けスマートウォッチの需要が高いのです。
子供向けのスマートウォッチは大人向けの製品とは異なる特徴が2つあります。1つは単体で通話もできること。Apple Watchなどは基本的にはスマートフォンからの通知を受ける製品であり、スマートフォンとペアで使います。一方、子供向けスマートウォッチは緊急時に単体でも通話できるように、3Gや4G回線を内蔵し単体で利用できるものが大半です。
2つ目はカメラの搭載です。緊急時にその場の写真を撮って送ったり、あるいはビデオ通話がすぐできるようにと子供向けスマートウォッチはカメラを搭載しています。親元のスマートフォンには専用アプリを入れ、子供からビデオ通話がかかってくるとその場の地図情報も同時に表示できる製品もあるなど、「単体通話」「カメラ」は子供向けスマートウォッチには欠かせない機能なのです。
小天才のスマートウォッチもこの2つの機能を搭載していますが、特徴的なのは内蔵カメラです。上位モデルはカメラを2つ搭載していますが、1つは時計の表面、もう1つは裏側に搭載されているのです。2019年に発売した「Z6」は時計本体がベルト部分から90度起き上がり、表または裏のカメラを使いながらスパイのような感覚でビデオ通話をすることができました。
2020年発売の「Z6 Ultra」はカメラが360度回転するようになり、スマートウォッチの画面部分に親など通話相手の顔を写しながら通話が可能になりました。なおZ6 Ultraについては以前以下の記事で簡単に紹介しています。
そして2021年に登場した最新モデルZ7は、体温計や心拍計を内蔵、本体カラーも落ち着いた色合いのシルバーが登場しました。外観は大人が装着してもいい感じになっています。なお価格は歴代モデルいずれも1,999元(約3万4,000円)。子供用としては高価ですが、それだけの機能を搭載しているのです。
Z7はZ6 Ultra同様に時計部分を90度立ち上げ、360度回転できる機構を採用しています。Z6 Ultraは背面に充電端子を備えていましたが、Z7は端子を側面に移動させ、体温と心拍センサーを搭載しました。それぞれ日々の健康管理に使えますが、体温が設定より高くなると親元のスマートフォンに自動で通知する機能も搭載。子供の健康状態を常に監視してくれます。
カメラを使ったビデオ通話時は、Z7のフロントカメラで自分の顔を、裏のカメラで周囲の状況を同時にビデオで流すことができます。この機能により子供がパニックに陥ってしまっても、周りの風景を見ながら場所を特定しやすくもなるわけです。なおカメラはフロント面が500万画素、裏面には800万画素を搭載します。
本体にはAI機能も搭載。カメラを通して英文字を写し中国語に翻訳してくれる機能や、被写体を認識してそれがなんであるかを図鑑のように教えてくれる機能など、子供の学習に役立つ機能も用意されているのです。翻訳機能は大人向けのスマートウォッチにぜひ欲しい機能でもあり、今後スマートウォッチにカメラが搭載されるようなことがあれば、このような利用方法も十分考えられるでしょう。
Z7はチップセットにクアルコムのウェアラブル端末向けとなるSnapdragon Wear 4100を採用。大人向けのスマートウォッチでもこれより一世代前のチップを搭載している製品が多く、Z7がかなり高性能なスマートウォッチであることがわかります。なおメモリは1GB、ストレージは32GBを搭載します。
時計部分のサイズは57x44x14mmで重さは71.6g。子供向けのスマートウォッチとしてはやや大き目で、むしろ大人が使うのにちょうどいいサイズかもしれません。実は筆者はZ6 Ultra(57.8x44.5x15.9mm、70.8g)を普段から使用しているのですが、違和感なく普通の腕時計として使える大きさです。
「いい大人」の筆者が小天才のスマートウォッチを使っているのは、本体に内蔵されたカメラを使って日常的にメモ代わりの写真撮影がしやすいからです。また本体を引き上げカメラを起動するギミックもスパイ遊びをしているようで楽しいものです。
子供向けのスマートウォッチはまだ中国以外ではそれほど普及していませんが、今後価格が下がっていけば他の国でも利用者は増えるでしょう。たとえばシャオミはカメラ付きでLTE内蔵の子供向けスマートウォッチを中国で399元、約7,000円で販売しています。通信料金も各国で引き下がっている中、シャオミが本気を出せば子供向けスマートウォッチ市場で高いシェアを取る可能性も十分あるでしょう。
そして小天才にはぜひ「大天才」というブランドで大人向けの製品も作ってほしいもの。筆者のような一般的な大人だけではなく、年配者向けの安心スマートウォッチもこれからは需要が高まるでしょう。小天才はいずれApple Watchと並ぶスマートウォッチ市場の巨大メーカーになる可能性を秘めているのです。