NetflixやYouTubeなどストリーミング動画配信サービスの普及で、TVを見なくなった人も増えているようです。自宅に戻ってもスマートフォンをそのまま使って動画を見る、なんて人も多いのではないでしょうか。最近のTVはWi-Fi内蔵でスマートフォンを接続して使えるものもあります。しかしTVの画面サイズは映画などを見るのにはいいでしょうが、Tiktokやインスタグラムなど画面を縦方向に使うアプリでは、TVの中央にスマートフォンの縦向きの画面が小さく表示されるだけ。あまり見やすいものではありません。
スマートフォンならYouTubeを見る時は横向きサイズ、ちょっとSNSが気になったら縦向きに持ち替えて使うことができますが、TVは画面の向きが横方向で固定されています。ところがスマートフォンのように縦向きに画面を回転できるTVが出てきました。しかもスマートフォンの画面も投影できます。
サムスンが海外で販売中の「The Sero」は43インチの4K表示可能なTVです。TVそのものはスマートTVで、単体でWi-Fi接続によりネットアクセスが可能。Google検索やYouTube動画をThe Seroから直接見ることができます。とはいえTV画面に向かって文字入力をするのは、画面上のソフトキーボードを使うなどちょっと面倒なもの。だったらスマートフォンをWi-Fiで接続し、スマートフォンの画面をそのまま投影して使うのが便利でしょう。手のひらサイズのスマートフォンの表示を43インチで見れば迫力もありますし臨場感も味わえます。
The Seroが普通のTVと違うのは、ディスプレイがモーターで90度回転する構造になっている点。そのため薄型TVですが本体下部にスタンド部分が一体化した構造になっています。そのスタンド部分に大型スピーカーが内蔵されているので、動画や音楽再生時にもかなりいい音で再生できるという特徴もあります。
The Seroにスマートフォンを接続すれば今までには味わえなかった「スマートフォンと同じ縦方向の表示を43インチの大画面で見る」ことができるのです。この大きさでTiktokを見たら思わずその前で一緒に踊りたくなってしまうかもしれません。インスタグラムのストーリーも見るのが楽しくなるでしょう。
The Seroのスマートフォン接続は使いやすい機能も搭載されています。ソファーに座りながらThe Seroの画面を横向きにしてNetflixを見ているとき、Twitterを見たくなり手で持っているスマートフォンを縦向きに動かすと、The Seroも自動的に縦向きに回転してくれる「自動回転機能」を搭載しているのです。スマートフォンの画面を覗き込まなくても、The Seroの画面を縦横自在に動かして好みのコンテンツを表示できるわけです。
The Seroはカフェや雑貨屋などお店で使うのにも適していそうです。お昼時はランチメニューを縦画面で表示、ティータイムはケーキやパイなどのデザートや軽食を横表示にして動画で流す、なんてこともできるわけです。実際に韓国ではThe Seroをデジタルサイネージ用途に使っているショップがかなり多いそうです。
さてTV業界でサムスンのライバルでもあるTCLはThe Seroより大きい55インチの「XESS A200Pro」を中国で販売中です。こちらもWi-Fi内蔵の4K TVで単体でネットアクセスできますし、スマートフォンの画面を投影して表示することもできます。
縦横切り替えはモーター式。サムスンはスマホを傾けると自動的にTV画面が90度回転しましたが、TCLはスマホを持ったまま軽く振ると画面が回転するというモーション操作による方式を取っています。どちらもリモコンを探したりTV本体に触れる必要が無いのは便利でしょう。
TCLは縦画面でシューティングゲームを行ったり、ライブ配信でコメントや投げ銭をもらうなんて事例を見せています。確かに縦画面のライブ配信を行う際は、語り系ならスマートフォンの画面でも十分ですが、歌を歌ったりダンスを見せる、なんて場合はTVの大画面の前でパフォーマンスしたほうがやりやすそうです。
なおXESS A200Proは1080pのポップアップ式フロントカメラも搭載しています。ちなみにチップセットはメディアテックのMT6952を採用。もはやTVやスマートTVというよりも、超大型のタブレットと言えるスペックです。数年もすればここに5Gのモデムが内蔵され、どんな場所においても使えるようになるのでしょう。
サムスンもTCLも日本でビジネス展開していますから、これらの製品もぜひ日本で販売してほしいもの。ただし先進的な機能を搭載しているからか価格はやや割高です。サムスンのThe Seroは2020年12月時点で1,699ドル(約17万6,000円)、TCLのXESS A200Proは7,999元(約12万7,000円)。同じクラスの回転しない4K TVなら中国ノーブランド品で4万円台、日本メーカーの低価格品でも7-8万円台です。日本でこのままの価格で出すには割高感があります。
回転するという付加価値に倍以上の価格を出すのはごく一部の消費者やB2B市場くらいでしょう。おそらくサムスンとTCLも世界各国で回転式TVをまずは出して、市場の様子を見ていると考えられます。コンシューマーを意識した30インチ台の回転式TVが10万円を切る価格で出てくるようになれば、独り暮らしの必需品がスマートフォンと回転式TVになる、なんて時代がやってくるかもしれません。