新型コロナウイルス感染症の影響でテレワークを導入する企業も多いなか、昭和世代のマネジャーほど在宅勤務ができないという声もある。40代の”昭和マネジャー”はどのように価値観をアップデートし、ITを活用していくべきなのだろうか。

8月4日に開催されたマイナビニューススペシャルセミナー「在宅ワーク成功の手引き」にて、サイボウズ コーポレートブランディング部 部長の大槻幸夫氏が、社内事例を基にテレワークに必要な考え方や心構えを紹介した。

サイボウズ 大槻幸夫氏

サイボウズ コーポレートブランディング部 部長 大槻幸夫氏

「昭和の価値観が当たり前」から働き方先進企業へ

働き方改革先進企業として各メディアが発表するランキングの常連となっているサイボウズ。今年7月にはテレワークの継続を呼びかける「がんばるな、ニッポン。」というTVCMキャンペーンも話題となった。

そんなサイボウズも、最初から現在のような先進的な働き方ができていたわけではない。大槻氏が入社した15年前の同社では、「どんなに遅くまで仕事をしていても翌朝9時までに出社」「副業禁止」「出張は日帰り」「使わない文房具を集める」「2年連続最低評価となるとクビ」といったような、今のカルチャーからは想像できないような制度が当たり前にあったという。

しかし、「それほど違和感はなかった」と大槻氏。その理由について「お父さんは大黒柱、お母さんは専業主婦、皆勤賞は偉い、部活の練習中に水を飲んではいけない、我慢こそが努力……といった画一的で理不尽な昭和の価値観を当たり前だと思っていたから」と話す。

サイボウズが働き方改革に取り組むことになったきっかけの一つは、離職率の高さだ。現在の代表取締役である青野慶久氏が社長に就任した2005年には、離職率が28%にまで上昇していた。また、2007年ごろには、会社の売り上げも踊り場を迎える。

「働き方改革がうまくいかないのは、困っていないから」だとする大槻氏。企業が抱えている困ったことと働き方改革とを結び付ける必要があるという。サイボウズにとって、「困ったこと」は、この離職率の高さと成長の停滞だった。

こうした状況を打破すべく、同社はまず育児休暇制度を導入。男女を問わず、6年間の育児休暇が認められるようになったことにより、出産を理由に退職する社員が0となった。

また、人事制度の多様化も進めていった。導入当時は、3パターンの働き方から選択するものだったが、2018年5月からは、自社製品であるKintoneを使って社員自らが働き方を宣言する形となっている。

人事制度の変遷1 人事制度の変遷2

サイボウズにおける人事制度の変遷

このため、現在では、実家で完全在宅勤務する社員や、副業としてサイボウズの業務に携わる社員、16年間の専業主婦期間を経てから入社した社員など、実にさまざまな人材がさまざまな働き方で活躍している。「100人いれば100通り」という言葉を掲げるサイボウズの働き方改革の本質には、画一性ではなく多様性という考え方がベースにある。

「ダイバーシティはつくりだすものではなく、すでにあるもの。阻害要因や色眼鏡を取り除いて1人1人の個性に向きあい、それらの多様性を受け入れるインクルージョンが重要」(大槻氏)