日本AMDのSam Rogan氏という名前は、特にちょっと昔から自作PCをやっていた方には聞き覚えがある筈だ。氏は日本AMDのMarketingに携わり、N-Benchを作った事で有名でもあるが(Photo01)、それ以前にも(まだ再開発が始まる前の)秋葉原のイベントでパネルディスカッションなどに登場したりしており、氏の流暢ながら独特の日本語を耳にした方も居られよう。
そのSam Rogan氏、AMDがFlash Memoryの製造・販売部門をSpansionという形でスピンアウトした際にSpansionに移籍。以後はSpansionでマーケティングに携わってきたが、昨年ザイリンクスに転籍。今年5月にはザイリンクスの社長に就任した。今年9月に来日した米Xilinx CEOのMoshe Gavrielov氏へのインタビューの最後にもちょろっと顔を出しているが、このSam Rogan氏とインタビューの機会を持つ事が出来た。実を言うとRogan氏との付き合いは、筆者が専業ライターとしてPC系の取材を本格的に始めた頃からだから、既に10年を超えている。ただし氏がSpansionに移ってからは会う機会が殆どなくなっており、そういう意味では久しぶりに対面といった感じではある。
ちなみにインタビューには、Rogan社長以外にマーケティング本部 部長の白土神一氏も同席された。
Q: まず社長の略歴などから始めましょう。AMDからSpansionに移られて、そこから突然ザイリンクスに入られて、社長になられて、もう5カ月ですか? Learningも終わって、いよいよ本領発揮という時期だと思うのですが、そもそもなんでザイリンクスに入られたのか、そして社長になられたのかというあたりをお伺いしたいと。
Rogan: いい質問ですね。僕、ご存知のようにAMDを辞めたじゃないですか? AMDでは結構楽しかったし、色々成功したんですよ。日本でも成功したし、たぶん覚えていると思うけど韓国とかインドとか、同時に複数の国を見ていたんですよ。
ただ、プロセッサビジネスを長くやりましたので、もう少し別のシステムに触るのも面白いんじゃないかとも思っていたんですよ。で、丁度SpansionがAMDから独立する時だったので、チャンスかなと思ってたんですよ。
ただ実際にSpansionに行ってみると、確かにまあフラッシュメモリはユビキタスですから、どこにでも使われるんです。ですがやはり汎用品ですから、システムメーカーがどういうアーキテクチャの判断をしているか(フラッシュメモリを使うのか)、彼らは理解していても、それは我々には判らない。勿論Spansionで沢山成功はありました。ご存知の通り、小さな(売り上げの)数字を大きくしたんですよ。ただやはり、システムアーキテクチャという観点で言えば、やっぱりメモリメーカーとしてはあまり深くまで入れなかった。
で、ザイリンクスは二つの理由で、やはり面白いと思ったんですよ。一つは、やっぱりシステムアーキテクチャや、色々なアプリケーションに触ることが出来るということ。あともう一つですけど、僕はASICのProbabilityは、将来はもっと下がると思っているんですよ。で、ここに来てからもっと色々勉強して、やはり楽しい話じゃないかと僕は思ってたんですよね。
で、対ASICの話で言うと、昔からFPGAメーカーは、将来はASICを、何と言うか、やっつけたいと思っていたわけです。で、今は経済的にやっとその時代になっているんじゃないか、と。コスト的に言うと、ASICとFPGAはこんな関係にあるわけです(図1)。
つまりASCIを製造するためのコストは、プロセスを微細化するとどんどん高くなっていく。FPGAは個数あたりの価格は一定だから、ここでクロスするポイントがどのあたりかが問題になってくる。130nmの頃は、ちょっと作ればASICがFPGAより安くなったけど、45nmとかだと100万個とか200万個作らないと(FPGAよりも安く)ならない。
で今、色々なお客様にお会いする時、良くあるパターンですけれど、名刺交換するんです。で、頂いた名刺を拝見すると、ASICエンジニアと書いてあるんですよ。ただ僕からすると、ASICエンジニアは正しく無いだろうと。回路エンジニアじゃないですか? と。回路エンジニアで、メディアはASICですよね?と。
Q: あー、なるほど。
Rogan: で、同じ回路をFPGAに入れると、生活が良くなるじゃないですか? と。
(続く)