LINEのAIアシスタント「Clova」を搭載するスマートミラーが商品化され、これを設置した国内のIoT住宅も登場しました。今回、スマートミラーの日本総販売代理店である日栄インテック、IoT住宅を提供するリバブルアセットマネジメント、Clovaを手がけるLINEの担当者に集まっていただき、各社が考えるスマートミラーのある豊かな暮らしの可能性をうかがいました。

  • LINE、Clova、スマートミラー
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    LINEのAIアシスタント「Clova」を載せたスマートミラーが、リバブルアセットマネジメントの賃貸住宅を通して提供されることに。商品を担当する日栄インテックを含む各社の担当者に、スマートミラーの特徴と使いこなしを聞いてきました

Clova搭載スマートミラーはどんな製品?

日栄インテックが発売した「M10H00」「M15C10」は、中国のShenzhen Atte Smart Tech社のanthouseブランドが開発した、Android OS搭載のスマートミラーです。本体には10型または15型のタッチ対応液晶タブレットが組み込まれています。Shenzhen Atte Smart Techの同じ製品をベースにしたスマートミラーも海外で先行発売されていますが、日栄インテックが発売する日本仕様の製品にて、初めてAIアシスタントを搭載しました。

  • 10インチのタッチ液晶ディスプレイを搭載する「M10H00」

  • LINE、Clova、スマートミラー

    壁掛け設置にもフィットする15インチの「M15C10」

スマートミラー本体はマイクとスピーカーを内蔵し、Clovaを音声で操作できます。インターネット接続はWi-Fi、電源はACアダプターによる有線供給です。Clovaが対応するスキルは、天気、ニュース、占いなど十数種類をプリセット。約5,500万曲の音楽が聴き放題のLINE MUISCも楽しめます。Google Playストアにも対応しているため、ユーザーがSNSや動画配信のアプリをインストールすることもできます。

  • LINE、Clova、スマートミラー

    LINE MUSICのストリーミング再生にも、内蔵スキルで対応します

  • LINE、Clova、スマートミラー

    Google PlayストアからAndroid対応のモバイルアプリをインストールして、タッチ操作で使えます

  • LINE、Clova、スマートミラー

    10インチのM10H00。テーブルトップに置く場合は、卓上カレンダーのように一体型スタンドで立てかけます。電源はACアダプターで、バッテリーは内蔵していません

東急リバブルのIoT住宅に入居すると使える

Clova搭載スマートミラーは、東急リバブルの子会社であるリバブルアセットマネジメントが所有する、IoT対応の賃貸住宅を通じて入居者に提供されます。初の物件は2019年10月に竣工した「リバーレ日本橋三越前」の住戸(ファミリータイプ)になります。同社の末次俊介氏にClova搭載スマートミラーを採用した経緯を聞きました。

「当社ではこれまでにもIoT賃貸物件に力を入れてきました。引き続き新しい試みに挑戦したいと考えていたところ、LINEのClovaを搭載するスマートミラーと出会い、その斬新さに注目して導入を決めました」(末次氏)

  • リバブルアセットマネジメント 末次氏

    スマートミラーを採用した理由を語るリバブルアセットマネジメントの末次俊介氏

導入後の内覧会では、上々の反響だったとのこと。実際に使ってみると、その良さがわかるという意見も寄せられているそうです。今後もアンケートなどを通じて、スマートミラーが入居する決め手に、あるいは長く住むきっかけになったかなど反響を確かめていきたいと、末次氏が意気込みを語っています。

「鏡」は家族が毎日必ず使うもの。だからスマート化する必然性がある

日本は欧米に比べてスマート家電の立ち上がりが遅れていると言われていますが、スマートミラーがブレイクのきっかけを作るのでしょうか。日栄インテックの増田努氏は期待を寄せます。

「鏡は洗面所やメイキングルームなど、日常の生活空間で家族全員が毎日利用する必需品です。その鏡がスマート化したときに、どのようなサービスが必要とされ、また提供できるのかを注目しています」(増田氏)

  • 日本インテック 増田努氏

    日本インテック 開発事業部 照明・IoTソリューショングループ マネージャーの増田努氏

anthouseのスマートミラーにLINEのClovaが搭載されることが決まった理由としては、東急リバブルの高津逸美氏が「コミュニケーションプラットフォームとして日本国内で広く普及するLINEの親しみやすさと、Clovaが日本語によるスムーズな音声操作に対応していること」を挙げました。また、ハードウェアにAIアシスタントを組み込んでいく過程で、LINE側のチームと呼吸を合わせながら開発を進められたことが大きかったと、増田氏は振り返ります。

Clovaの音声操作がスムーズ。Android対応アプリも動く

インタビューの途中、スマートミラーのデモンストレーションを体験しました。筆者も自宅でClova搭載のスマートスピーカーを使っていますが、AIアシスタントの快調なレスポンスと日本語の高い認識精度を、スマートミラーもそのまま引き継いでいます。洗面所で鏡を見ながら身支度をしている最中は、汚れている手で鏡に触れたくないですよね。音声操作がとても理にかなっていると感じました。

LINEのトークやビデオ通話に対応していない理由を日栄インテックに聞いたところ、スマートミラーは家族で共有することが想定されるので、プライベートな情報にアクセスできる機能を制限したそうです。今後、顔認識や声紋認識といった生体認証技術を組み合わせれば、パーソナルな情報の出し分け表示もできるのではないでしょうか。なお、今回のスマートミラーはAndroid搭載でマイクやカメラが内蔵されているので、実はアプリを追加すればビデオ通話やFacebookも使えます。

  • LINE、Clova、スマートミラー
  • LINE、Clova、スマートミラー

    Clovaを搭載するスマートミラーは、もちろん音声入力によるハンズフリー操作に対応。本体のボトム側にマイクが内蔵されています。水に濡れていたり、化粧品が付着している指でタッチしなくても、声で操作可能。これは「ミラー」タイプの製品にとって非常に大事なことです

スマートミラーは最も親しみが持てるスマート家電になれる

LINEもいま、AIアシスタントに関連するビジネスの立ち上げを、BtoBでもBtoCでも強化しています。スマートミラーは、「これまでAIアシスタント搭載デバイスが入り込めなかった生活空間にも、Clovaが利便性を提供する絶好の機会になる」と、LINEの名田尚弘氏と永野玲氏が口をそろえます。

  • LINE AIカンパニー 名田尚弘氏

    LINE AIカンパニー Search&Clovaセンター Clova事業企画室 Clovaアライアンスチームの名田尚弘氏

スマートミラーは、ビューティーケアやヘルスケア関連のクラウドサービスと結びつくことによって、よりいっそうの魅力を放つスマート家電になること間違いなしと筆者は思います。

例えばカメラで顔を認識して、家族それぞれに合わせた健康維持に役立つアドバイスをくれたり、髪型やメイクのバーチャルフィッティング、その日の気候に合わせたお肌のケア情報など、パーソナライズされた情報が参照できれば、スマート家電が豊かにしてくれる生活のカタチが明快に見えてきそうです。

  • LINE、Clova、スマートミラー

    鏡は毎日使うアイテムだからこそ、親しみが持てるスマート家電になりそうです。将来的には、ユーザーごとにパーソナライズされた情報を、AIアシスタントを使って音声で呼び出せるようになるかもしれません

LINEの名田氏は、今後もユーザーが親しみを感じられるスマートデバイスを提供していきたいと意気込みを語っています。人気キャラクターとのコラボや音声アシスタントのカスタマイゼーションなど、Clovaを搭載するスマートスピーカーから得られた知見を生かすことによって、LINEらしさが発揮できるのではないでしょうか。

スマートミラーのバリエーションとして、全身を映せる姿見や、洗面所の壁面全体を鏡にした大型商品といった展開にもぜひ期待します。なぜならその先には、家電の枠を超えて、家をまるごとスマート化するAIアシスタントの究極形も見えてくるような気がするからです。

  • LINE AIカンパニー 永野玲氏、リバブルアセットマネジメント 末次俊介氏、日本インテック 高間香瑠氏

    左から、LINE AIカンパニー Search&Clovaセンター Clova企画室 Clovaデバイス企画チームの永野玲氏、リバブルアセットマネジメント プロジェクトマネージャーの末次俊介氏、日本インテック 開発事業部 照明・IoTソリューショングループ 主任の高間香瑠氏(高の漢字は「はしごだか」)

著者 : 山本敦(やまもとあつし)

ジャーナリスト兼ライター。オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。独ベルリンで開催されるエレクトロニクスショー「IFA」を毎年取材してきたことから、特に欧州のスマート家電やIoT関連の最新事情に精通。オーディオ・ビジュアル分野にも造詣が深く、ハイレゾから音楽配信、4KやVODまで幅広くカバー。堪能な英語と仏語を生かし、国内から海外までイベントの取材、開発者へのインタビューを数多くこなす。