熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の違いについて、ここではオムレツを例に説明します(図1)。まず、卵とスライスチーズ、それに熱したフライパンを用意します。卵の最初の状態はコロイド状の液体です。それを熱したフライパンに落とすと、「固体」になります。それに対してチーズは、固体ですが、適度に熱すると、粘性をもった「液体」になります。卵の場合は冷ましても、再加熱しても固体から再び液体の状態に戻ることはありません。これがまさに熱硬化性樹脂の特性です。ところがチーズの場合には、温度を下げれば固体に戻りますし、再加熱をすれば再び流動性を持つようになります。これは、熱可塑性樹脂と同じ特性なのです。

図1:卵と熱硬化性樹脂に起きる変化は不可逆的で恒久的なものですが、チーズと熱可塑性樹脂に起きる変化は可逆性です。

熱硬化性樹脂の特性はほとんどの場合、分子間の架橋結合の構造によって支配されています。熱硬化性樹脂の分子結合の構造は、安定性があって強固で、熱や化学的な影響に対しても耐性を備えています(図2)。わかりやすい例は、ゴムのようにやわらかい性質をもったシリコン製の耐熱皿です。分子の結合の中に架橋結合をもっているため、オーブン内の200℃を超える高温にも容易に耐え、融けだして料理にくっつくということもありません。まさに調理に使用する耐熱皿として理想的な特性を備えているのです。ただ、硬い熱硬化性樹脂は、熱可塑性樹脂ほどの耐衝撃性がなく、落としたり、ぶつけたりした場合には砕けてしまう傾向があります。また、材料を再利用することができないという性質もあります。

図2:熱可塑性樹脂 対 熱硬化性樹脂

Protomold射出成形で熱硬化性樹脂に対応しているか、というご質問をいただくことがありますが、残念ながら、Protomoldでは対応しておりません。なぜなら、熱硬化性の材料では常温の材料を熱した金型にて成形することになりますが、熱可塑性樹脂を使用するProtomoldのプロセスでは、材料を溶かした状態にして金型に高圧で射出し、成形品は冷却されてから離型(エジェクト)されるというフローになり、製造方法や設備が大きく異なるからです。ただし、高温下での使用が想定されていない場合であれば、ゴム、加硫ゴム、シリコン、あるいは一部のウレタンのような弾性を持つ熱硬化性樹脂の代替として、熱可塑性樹脂をご提案することが可能です。試作目的だけでなく、量産品であっても問題ないと判断できる可能性もあります。

プロトラブズでは、さまざまな種類の熱可塑性エラストマー(TPE)、熱可塑性加硫エラストマー(TPV)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)などの成形を行っています。これらの材料は、熱硬化性樹脂と同様の弾性や硬さの性質を備えています(例示したシリコンの耐熱性を除き)。これらの樹脂でProtomold射出成形による機能テストに適した試作パーツを、熱硬化性樹脂を使用するよりも早く、安価に製造することができます。実際に樹脂を選択するにあたって、熱可塑性樹脂の特性について詳しく知りたい時には、いつでも弊社のカスタマーサービス宛てにご連絡ください。試作のみを熱可塑性樹脂で行い、量産は熱硬化性樹脂を使用するか、あるいは量産も熱可塑性樹脂でできるのかをご相談ください。

ご参考:

プロトラブズ樹脂部品設計ガイド
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本コラムは、プロトラブズ合同会社から毎月配信されているメールマガジン「Protomold Design Tips」より転載したものです。