再始動となった当コラム、今回が仕切り直し後の第1回となります。執筆はともかく毎週のネタ出しがかなりツラいのですが、皆さまからの励ましの声もあり、頑張らねば、と。どうかごひいきにお願いします。

さて、今回は「iTunes 10.3」について。数字だけで判断するとマイナーバージョンアップだが、鳴り物入りで姿を現した「iCloud」の機能の一部にアクセスできる代物だ。日本では機能に制限があるものの、米国在住の知人に協力を得られたため、ここに速報ベースのレビューをお送りする次第。それでは早速、その新機能を検証してみよう。

「iTunes in the Cloud」とは

iTunes 10.3に実装された新機能のうち、もっとも注目が集まるのは「iTunes in the Cloud」。その名が示すとおり、WWDCで発表され今秋に正式運用が開始される予定の「iCloud」を活用した機能で、iTunes Storeで購入したコンテンツを他の(購入に利用した以外の)デバイスでダウンロードすることが可能になるのだ。

たとえば、OS Xを使いiTunes Storeで楽曲を購入したとしよう。この楽曲をiPhoneで聴こうとすると、DockケーブルでMac/Windowsと接続し転送するか、iOS 4.3からサポートされたホームシェアリングを利用することになるが、「iTunes in the Cloud」はその手間がない。最大10台という制約はあるものの、同じApple IDでヒモ付けられたiOSデバイスには、購入した楽曲を自動的にクラウドからダウンロードするよう設定できるのだ。つまり、OS Xで楽曲を購入した直後に、iPhoneでその楽曲を聴くことができる。

ここでは楽曲を例に説明したが、名は違えどプラットフォームは共通のApp StoreとiBook Storeも同じこと。iOSアプリも電子ブックも、楽曲と同じ方法で自動ダウンロードできる。

と、ここまではAppleが発表したことの受け売りに過ぎない。基調講演後間もなくリリースされたiTunes 10.3では、「iTunes in the Cloud」のベータ版がサポートされているというのでこれを入手、実際にどのような操作の流れとなるのかを検証したというわけだ。

クラウドに一部対応した「iTunes 10.3」が公開された

これが「iTunes in the Cloud」だ

テストに利用したiTunesは、ソフトウェアアップデート経由で入手したv10.3.1。最初は7日にAppleのWebサイトで公開されたv10.3を利用したが、ALACでエンコードした曲がときどき音飛びする現象に遭遇した。現在のところv10.3.1では発生していないので、手動ダウンロードしたユーザはソフトウェアアップデートを起動してみよう(iTunes組み込みのアップデート機能は反応しない)。

iTunes 10.3.1に一見変化はないが、環境設定パネルの「Store」タブを開くと違いがわかる。「自動ダウンロード」という項目が追加され、そこに「App」と「ブック」というチェックボックスが用意されているのだ。これをチェックすると、以後他のデバイス(同一Apple IDを使用する他のiTunesまたはiPhone/iPad)で新規ダウンロードしたアプリまたは電子書籍は、自動的にこのiTunesへダウンロードされるようになる。これが、クラウド経由でコンテンツの同期をとる「iTunes in the Cloud」だ。

現在のところ、日本のiTunes Store用アカウントでサインインしているときは、「App」と「ブック」しか自動ダウンロードできない

購入済アプリのリストを表示したところ。このデバイスにない(削除した/未同期の)アプリは、雲のボタンをクリックするとダウンロードできる

iOS 4.3の設定画面にある「Store」。iTunes Storeから自動ダウンロード可能な項目が追加されている

当然、他のデバイスの設定も必要になる。iPhone 4(v4.3.3、WWDC以降アップデートなし)で確認したところ、設定の「Store」にiTunes 10.3同様の「自動ダウンロード」項目が追加されており、これがiTunes in the Cloudのスイッチとなる。実際にiTunesでアプリを新規ダウンロードしたところ、数秒ほど遅れてiPhone 4側で自動ダウンロードが始まり、iPhone 4のホーム画面にアプリのアイコンが現れた。なお、「モバイルデバイス」をオンにしていないと、Wi-Fi通信無効時は自動ダウンロードされない。

すでにダウンロードが完了しているコンテンツは自動ダウンロードの対象外となるため、手動での作業が必要になる。たとえば、iBooksのアップデートをiTunes側で実行しても、iOSデバイスにインストール済のiBooksは自動更新されない。

米国では音楽の同期も可能に

と、ここまでは日本のiTunes Storeを利用する環境での話。米国のiTunes Storeでは、ひと足早く音楽の自動ダウンロードも開始されているのだ。

米国のiTunes Storeに対応したApple IDでログインすると、iTunesの環境設定パネルにある「Store」タブには、「ミュージック」というチェックボックスが現れる。ここをチェックすると、前述のアプリ同様、新規ダウンロードした楽曲は他のデバイスで自動ダウンロードされる。iOSデバイスも同様で、「Store」パネルに米国用のApple IDを登録しておくと、「ミュージック」スイッチが現れる。

手動ダウンロードの方法も、アプリの場合と同じだ。iTunes StoreのQuick Linksにある「Purchased」をクリックするか、「購入したもの」プレイリストを表示して画面右下の「以前購入した項目をダウンロード」をクリックすると、iTunes Storeで購入した楽曲がリストアップされる。iOSデバイスの場合も、アプリ「iTunes」の画面下にある「Purchased」をタップすれば、以前購入した楽曲を手動ダウンロードできる。

米国iTunes Store用のアカウントでサインインすると、Storeタブに「ミュージック」が現れる

iOSの「Store」画面で米国iTunes Store用のアカウントを登録すれば、「ミュージック」が現れる

iTunes Storeで購入した楽曲を表示したところ。このデバイスにないものについては、雲のボタンをクリックすれば再課金なしにダウンロードできる

iOSデバイスでは、アプリ「iTunes」を利用すると曲を再ダウンロードできる。当然、同一アカウントであることが絶対条件だ

以上のように、「新規購入」と「購入済」では扱いが違うものの、iTunes Storeから購入したコンテンツであればどの環境からでも取り出せる、というコンセプトは一貫している。あらゆるデバイスがネットワーク接続を前提としているこの時代、進化の方向としてはかくあるべし、と考えるがいかがだろうか。とはいえ日本のiTunes Storeでは現状音楽コンテンツの同期ができないため、Appleには早期の対応をお願いしたい。