• パナソニックの研究開発の新拠点「Technology CUBE」

    パナソニックの研究開発の新拠点「Technology CUBE」

パナソニック ホールディングス技術部門は、大阪府門真市に研究開発の中核拠点となる「Technology CUBE(テクノロジー・キューブ)」を開設し、2026年4月から本格稼働させる。

本社技術部門が研究開発棟を新設したのは、1993年に、京都府精華町の関西文化学術研究都市(けいはんな学研都市)に設置して以来、33年ぶりとなる。

パソナニックは、1953年に大阪府門真市に、最初の中央研究所を発足。1963年に生産技術研究所を分離しており、研究から開発、試作、量産化設計までの技術者を集約した拠点は、63年ぶりとなる。

  • パナソニックは、1953年に大阪府門真市に中央研究所を設立。基礎研究と各事業部の製品開発の指導援助、モノづくり、製品デザインも包含した総合的な研究施設だった

    パナソニックは、1953年に大阪府門真市に中央研究所を設立。基礎研究と各事業部の製品開発の指導援助、モノづくり、製品デザインも包含した総合的な研究施設だった

  • パナソニックの研究開発体制

    パナソニックの研究開発体制

働く場、働き方そのものもR&Dする研究開発の中核拠点

パナソニック ホールディングス グループCTOの小川立夫氏は、「AIやセキュリティ、材料プロセスの技術者だけでなく、生産技術や生産機械などのモノづくり関連の技術者もひとつの建屋のなかに入り、研究開発から社会実装までを一気通貫で行える拠点を完成させた。専門性が異なる技術者が混ざり合って、予想外のものを発見するといったセレンディピティ(Serendipity)の確率を高めるとともに、社会実装までの速度をあげることができる拠点にしたい」との考えを示した。

  • パナソニック ホールディングス グループCTOの小川立夫氏

    パナソニック ホールディングス グループCTOの小川立夫氏

また、「フレキシビリティとサステナビリティが高い建物であり、研究開発のプロジェクトにあわせて、部屋を自由に区切って、レイアウトを変えられるようにしている。これからの100年も、最先端を走ることができる拠点として、研究開発の形を変え、人を育み、共創による社会との接点をつくりあげていく」とも述べた。

Technology CUBEは、同社西門真地区と呼ばれるエリア内に新設。京阪電車の西三荘駅から徒歩約3分の位置にある。

地上8階建て、高さ54mで、敷地面積は6万8268㎡、建築面積は6047㎡、延べ面積は4万2094㎡となっている。

2023年3月に着工し、2025年8月に竣工。西門真地区にあったAIおよびデジタル関連の研究開発部門、北門真地区にあった生産技術の研究開発部門、守口拠点にあった環境技術やバイオ、デバイスなどの研究開発部門の合計約1000人の技術者をTechnology CUBEに集結。研究から開発、試作、量産化設計までを一気通貫で推進する体制を確立した。2025年11月から一部の実験室などが稼働していた。

「基礎研究の技術者から、量産を行う装置を開発する部門までが集結することで、事業会社との連携をより深めたり、社会実装までの速度をあげたりすることができる」(小川グループCTO)という。

技術が確立してから量産を考えるのではなく、社会実装を前提にしながら技術開発を進める体制を、拠点への統合により、物理的に実現。開発リードタイムの短縮と社会実装の確実性向上を両立できるとしている。

また、AIを独立した形で研究開発するのではなく、材料、デバイス、モノづくりなどに展開していけるように統合するという。

  • 拠点の集約し、研究・開発・生産技術が一体化

    拠点の集約し、研究・開発・生産技術が一体化

Technology CUBEでは、「誰かがつくったではなく、自ら考え、つくり、更新する」ことを目指し、それを実現するために3つのコンセプトを掲げている。

ひとつめが、選択肢の自由度があり、安心・快適な多様な居場所を提供する「Well‐Being」である。ワイガヤも、ハイブリッドも、集中もできる環境を用意するとともに、音や光、空気質制御による居心地のいい環境を実現しており、人が健康で、創造性を発揮できることを目指す。

2つめが、人と自然の共助を生み、双方の健康を促進する場を実現する「Sustainability」。バイオフィリアの実現や、持続可能なマテリアルの選択、オール電化などを採用するとともに、環境に関するフィールド実証の場としても活用する。

そして3つめが、企業や社会、地域、社員をつなぐ現在進行形の実験場となる「Flexibility」である。AIから生産技術までの多様な技術特区を用意するとともに、アップデートしやすい設備と空間を用意する。完成がなく、変わり続ける拠点になると位置づけている。

  • 「誰かがつくったではなく、自ら考え、つくり、更新する」ことを目指し、それを実現するために3つのコンセプトを掲げる

    「誰かがつくったではなく、自ら考え、つくり、更新する」ことを目指し、それを実現するために3つのコンセプトを掲げる

パナソニック ホールディングス 技術部門コーポレートR&D戦略室の𠮷川祐一室長は、「技術部門では、『私たちがいなければ生まれなかった世界をつくる』をミッションに掲げ、技術を創出するだけでなく、社会に意味ある形で技術を届け、新しい文化や風土を形成する役割を担うことを目指している」と前置きしながらも、「これまでの研究開発を振り返ると、創出する技術のレベルは低いものではないが、技術領域や拠点が分散しており、専門性は高いが交わる機会が少なく、研究や開発、生産技術が、物理的にも、時間的にも離れていた。その結果、研究開発段階でいい技術が生まれても、量産性がなかったり、タイミングがずれてしまったりといったことが起こり、社会実装ができないという課題があった。これは、技術の問題ではなく、構造の問題である。小川グループCTOは、『目覚ましい仕事の成果の背景には、素晴らしい仕事のやり方が伴う』と発言しており、それを実現する環境がなければ、技術的進化は起きない。研究開発の中身だけでなく、働き方そのものを変える拠点として、Technology CUBEを活用していく」と位置づけた。

  • パナソニック ホールディングス 技術部門コーポレートR&D戦略室長の𠮷川祐一氏

    パナソニック ホールディングス 技術部門コーポレートR&D戦略室長の𠮷川祐一氏

Technology CUBE は、5階から8階を「イノベーション・共創フロア」とした。建物中央に大きな吹き抜けがあり、共創区やセキュリティ区、GX区、DX区、戦略区、職能区を設置。カフェやラウンジ、セルフビルド可能な実験エリアなどを各所に配置して、専門領域を越えて、技術者同士が自然に対話できる環境を用意。大学や行政、スタートアップ企業、パートナー企業など、社外にも開かれた環境で、オープンイノベーションをもとにした技術開発や技術検証を行えるようにしている。

「カフェやラウンジは分散して配置しており、様々な場所で偶発的な出会いができるようにしている。会議室で物事を決めるのではなく、日常のなかで、専門性が異なる技術者たちが出会うことで、新たなイノベーションの創出を目指す。また、社外との共創が『イベントごと』にならないように、出会いや共創を日常にし、社内、社外を問わず、誰もが主役になれる空間を演出している」(𠮷川室長)とした。

  • 様々な場所で偶発的な出会いができるように設計

    様々な場所で偶発的な出会いができるように設計

イノベーション・共創フロアでは、共同実験やプロトタイプ開発、研究会およびワークショップ、共創イベントの開催のほか、参加者一人ひとりの関心や専門性を起点にした定期的な共創プログラム「Monthly Meetup」を開催するという。

パナソニック ホールディングスの小川グループCTOは、「コンクリートの塊のような建物にはしたくないと考えた。一部では、自然と人との関わりが表現できるようにした。共創エリアの鳥の声は屋久島で録音してきたものであり、20KHzを超える一番上の周波数帯まで拾って再現している。本当の自然の音を聞いたときに現れる人の副交感神経をリラックスさせる効果を取り入れている。共創による化学反応が発生するときに、自然の木や緑、鳥の声などが、どれぐらいの影響を及ぼすのかといったことを、パナソニック エレクトリックワークス社やパナソニックインダストリーのセンサーなどを仕込み、空間のモデリングを行い、人や自然を理解するためのデータを取得する実験場としても活用する」という。

  • 社外との共創を前提とした「イノベーション・共創フロア」

    社外との共創を前提とした「イノベーション・共創フロア」

3階および4階は「技術創造フロア」として、大規模精密実験設備やクリーンルームを設置。研究開発した技術を作り上げ、1階および2階の「事業創造フロア」とし、製造工場を設置し、モノづくりを進めることができる。

なお、「CASBEE(建築環境総合性能評価システム)」において最高ランクとなるSランクを取得したほか、「令和7年度おおさか環境にやさしい建築賞」の最高位となる大阪府知事賞を受賞。高い環境性能と機能性を両立した建築として、総合的な価値が評価されたという。

また、5階および8階フロアは、「WELL Building Standard」における最高ランクの「WELL認証プラチナ」を取得。人の健康や快適性に配慮した空間設計に加え、対話や協働を促す活動・仕組みを含めた取り組みが評価されたという。

Technology CUBEの内部を実際に見てきた

では、Technology CUBEの様子を見てみよう。

  • 大阪府門真市にあるTechnology CUBE

    大阪府門真市にあるTechnology CUBE

  • パナソニックミュージアムの前になる松下幸之助氏の像からもTechnology CUBEを見ることができる

    パナソニックミュージアムの前になる松下幸之助氏の像からもTechnology CUBEを見ることができる

  • 京阪電車の西三荘駅から徒歩3分の場所にある

    京阪電車の西三荘駅から徒歩3分の場所にある

  • Technology CUBEの入口の様子

    Technology CUBEの入口の様子

  • 1階部分にあるモニュメント。左側には、2025年12月に閉館したパナソニックミュージアムものづくりイズム館の中庭に設置していた「Time Waterfall panel#2」(宮島達男氏作)を移設している

    1階部分にあるモニュメント。左側には、2025年12月に閉館したパナソニックミュージアムものづくりイズム館の中庭に設置していた「Time Waterfall panel#2」(宮島達男氏作)を移設している

  • 5階から8階部分までを見上げた様子。自然を再現し、屋久島で録音した鳥の声もそのまま再生している

    5階から8階部分までを見上げた様子。自然を再現し、屋久島で録音した鳥の声もそのまま再生している

  • 6階フロアから吹き抜け部分を見てみる

    6階フロアから吹き抜け部分を見てみる

  • 天井部分は自然光を取り入れることができる

    天井部分は自然光を取り入れることができる

  • 吹き抜けのエリアは階段でも移動ができる

    吹き抜けのエリアは階段でも移動ができる

  • 5階フロアのカフェおよびラウンジの様子

    5階フロアのカフェおよびラウンジの様子

  • 自然を意識しながらデザインされたベンチなども用意

    自然を意識しながらデザインされたベンチなども用意

  • 執務エリアの様子

    執務エリアの様子

  • 仕事にあわせて自由に場所を選んで作業が行える

    仕事にあわせて自由に場所を選んで作業が行える

  • 働き方そのものを変える拠点としている

    働き方そのものを変える拠点としている

  • 会議室で物事を決めるのではなく、日常のなかで、専門性が異なる技術者たちが出会う場としている

    会議室で物事を決めるのではなく、日常のなかで、専門性が異なる技術者たちが出会う場としている

  • 執務エリアの一部にもラウンジなどが用意されている

    執務エリアの一部にもラウンジなどが用意されている

  • ペロブスカイト太陽電池を8階フロアに設置。サッシ窓に組み込んだ状態で、初めて建屋内に設置したという。垂直面に設置でき、デザイン性にも優れている。量産技術の開発を行っており、滋賀県長浜市に工場を立ち上げる予定だ

    ペロブスカイト太陽電池を8階フロアに設置。サッシ窓に組み込んだ状態で、初めて建屋内に設置したという。垂直面に設置でき、デザイン性にも優れている。量産技術の開発を行っており、滋賀県長浜市に工場を立ち上げる予定だ

  • ディスプレイ製造で培ったインクジェット技術を活用し、透過度を変化させ、用途にあわせたデザインを採用できる。左端の開口率0%、右端が開口率40%までを展示。発電率がそれぞれに異なる

    ディスプレイ製造で培ったインクジェット技術を活用し、透過度を変化させ、用途にあわせたデザインを採用できる。左端の開口率0%、右端が開口率40%までを展示。発電率がそれぞれに異なる

  • 発電量を計測し、タブレットに表示している

    発電量を計測し、タブレットに表示している

  • 8階のバルコニーの様子

    8階のバルコニーの様子

  • バルコニーからの守口駅方面を見た眺め

    バルコニーからの守口駅方面を見た眺め

  • 8階には気分転換にトレーニングできる機器も設置している

    8階には気分転換にトレーニングできる機器も設置している

  • 3階および4階は「技術創造フロア」として、大規模精密実験設備やクリーンルームを設置

    3階および4階は「技術創造フロア」として、大規模精密実験設備やクリーンルームを設置

  • 3階フロアに設置している次世代AI半導体製造設備。バンプ形成、ダイシング、クリーニングなどの中工程を行う

    3階フロアに設置している次世代AI半導体製造設備。バンプ形成、ダイシング、クリーニングなどの中工程を行う

  • 3階エリアでは、ロボットを活用して家電の自律分解の実証実験を行っている

    3階エリアでは、ロボットを活用して家電の自律分解の実証実験を行っている

  • ロボットで分解作業を行っている様子

    ロボットで分解作業を行っている様子

  • 生産技術などを担当するMI本部では家電の資源再生工場の実現を目指している。その概要を模型で紹介

    生産技術などを担当するMI本部では家電の資源再生工場の実現を目指している。その概要を模型で紹介

  • パナソニック独自の高濃度セルロースファイバー成形材料「Kinari」を紹介

    パナソニック独自の高濃度セルロースファイバー成形材料「Kinari」を紹介

  • 「Kinari」を使用した「S-story(エスストーリー)ペンダント」を展示。2026年6月から発売する

    「Kinari」を使用した「S-story(エスストーリー)ペンダント」を展示。2026年6月から発売する

  • 1階および2階の「事業創造フロア」とし、製造工場を設置し、モノづくりを進めることができる

    1階および2階の「事業創造フロア」とし、製造工場を設置し、モノづくりを進めることができる