パナソニックは、単身世帯や共働き夫婦、セカンドライフ層といった小世帯向け家電の提案活動を強化する。
同社が開発した8つのカテゴリーの製品を通じて、小世帯のくらしに寄り添った「コンパクトなのに、上質で心地よく過ごせる家電」を提案。「最後までおいしく食べきれる」「時間と空間にゆとりを作る」「自分のからだと向き合う」といった切り口から、パナソニックならではの小世帯向け家電の特徴を訴求することになる。
海外家電メーカーやプライベートブランド家電による価格攻勢が激化するなか、価値や安心という観点から、拡大する小世帯に向けた家電を提案することで、新たな市場開拓につなげる考えだ。
生活スタイルと価値観の変化、「小世帯」に商機あり
パナソニックが、20代~60代の1人暮らし、あるいは2人暮らしの男女1000人を対象に調査したところ、「小世帯のくらしにあう家電で、シンプルで上質な小さいくらしに興味がある」との回答者は85.3%にのぼり、とくに、セカンドライフの夫婦では、「手間をかけず、楽な生活をしたい」との回答が52.7%と最も多く、次いで「子育て中にはできなかった少し贅沢でゆとりのある暮らしをしたい」が32.0%を占めた。
同社では、小世帯では、生活の質を向上させるために、住空間の有効活用や、家具を家電に置き換えることによる空間づくりの需要があること、豊かに過ごせる時間を増やすために、家電を活用した家事分担を行ったり、家電を「時間を生むための投資」と考えていたりすること、「自分時間」の優先順位が高く、家電による「時間の質」の転換に期待していることなどに着目。「自分に必要な機能が搭載され、自分が納得したものだけを、まわりに置きたいというニーズがある。量より質の時代になっている。手間をかけない生活や、少しの贅沢とゆとりが求められている」と分析し、小世帯向け家電の需要を想定している。
また、ひとり暮らしでは「スぺパ(空間効率)の限界」という課題があり、共働き夫婦では「タイパ(時間効率)」や「家事放置」の課題がある一方、セカンドライフ夫婦では「手間をかけない生活」や「少しの贅沢とゆとり」を求めていることを指摘。「小世帯では、コンパクトで、厳選された機能を持ち、省エネを実現する家電へのニーズが高い。物価高であり、多忙な時代だからこそ、家事は家電にまかせ、家電によって生み出した空間と時間を有効活用できるようになる」とした。
パナソニックが取り組む小世帯向け家電は、「上質で心地よく過ごせる家電」を提案するものになる。
2025年8月から、小世帯向け家電の提案を開始しており、春の新生活需要シーズンにあわせて、この取り組みを本格化させることになる。
パナソニック デザインセンターデザイン戦略部インサイトリサーチ課エキスパートリサーチャーの船引伸恵氏は、「過去10年間の生活活動を分析したところ、全世代で、時間、空間を、無駄なく、意味あるものにしたいというニーズと、自分のための豊かな時間を大切にしたいという価値観が高まっている。また、小世帯では、自分時間を過ごす、効率的に済ます、楽しみをわかちあうといった暮らしを、心地よいと感じている」と述べる一方、「小世帯の暮らしには、好きなもので揃えられたライフスタイルと空間がある。そこに家電がそっと加わり、調和する存在であることを目指した」と位置づけた。
安心して長く使え、シンプルで、生活にフィットする家電
小世帯が家電を選択する際に重視するポイントは、大きいことや多機能ではなく、安心して長く使えること、シンプルであること、生活にフィットすることであり、同時に、「最後までおいしく食べきれる」、「時間と空間にゆとりを作る」、「自分のからだと向き合う」という3つの暮らし価値の提案が重要であると判断した。
「小世帯の暮らしに寄り添うために、3つの暮らし価値を実現。フラッグシップに搭載されている機能を、厳選して搭載することで、私にも、2人にも心地よい家電を提供することができる」としている。
暮らし価値のひとつめである「最後までおいしく食べきれる」では、冷蔵庫、電子レンジ、コンパクトベーカリーを提案する。
冷蔵庫「NR-C33JS2」は、高さが約170cmと低めで使いやすいことに加えて、奥行が60cmの薄い冷蔵庫であるため、狭小キッチンにもフィットすることを訴求。326Lタイプでありながらも、上位モデルに搭載している「サクッと切れる微凍結(パーシャル)」や「フルオープン野菜室」により、食材をムダなく食べきれる暮らしをサポートするという。
電子レンジ「NE-FB2D」では、「一番使うあたためにはこだわりたい」という提案を行い、「高精細・64眼スピードセンサー」と3D形状アンテナによって、食品の温度を瞬時に検知。ごはんやおかずもムラを抑えてあたためることができるのが特徴だ。温度が異なる冷凍と冷蔵の2品を同時にあたためることも可能だ。同社によると、計画比で約1.7倍の売れ行きを見せているという。
コンパクトベーカリー「SD-CB1」は、業界最小のコンパクト設計を実現。約0.6斤の食べきりやすいサイズで焼くことができ、小世帯でも焼きたてのパンをおいしく食べきれる。「焼きたての香りを毎日ふたりで」を提案する。同製品の発売以降、ホームベーカリー全体の販売は前年比1.2倍の実績になっている。
2つめの「時間と空間にゆとりを作る」では、洗濯機、食洗機、レイアウトフリーテレビ、空気清浄機を提案する。
ななめドラム洗濯乾燥機「NA-SD10UBL/NA-SD10HBL」は、限られたスペースにも置けるコンパクト設計ながら、洗剤自動投入や温水洗浄、スマホ連携のほか、ダウンジャケットの洗浄まで行える。「コンパクトで、使いやすい。忙しい毎日にゆとり時間」を提案する。タテ型洗濯機からの置き換え提案も行うことも目指している。計画比で約1.3倍の売れ行きとなっているという。
食器洗い乾燥機「NP-TSK2」は、約29 cmの奥行と、リフトアップオープンドアにより、狭いスペースにも設置ができるスリムサイズを実現。それでいながら、フライパンなどの調理器具や、2人分の食器12点が一度に洗える大容量モデルとなっている。「ふたりの食後にゆとりをつくる」ことを提案する。
レイアウトフリーテレビの「TH-43LF2/TH-43LF2L」は、「好きな場所に動かせる。空間を広く使える」ことをコンセプトとした4K液晶テレビ。チューナー部とモニターをワイヤレス接続し、アンテナ線のある場所に縛られず、好きな場所に移動して利用できる。ひとり時間も、ふたり時間も快適に、空間を広く使える。前年比で約1.6倍の売れ行きになっているという。
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レイアウトフリーテレビ「TH-43LF2/TH-43LF2L」。好きな場所に動かして、空間を広く使える4K液晶テレビ
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チューナー部とモニターをワイヤレス接続し、アンテナ線のある場所に縛られず、好きな場所に移動して利用できる
空気清浄機の「F-PX70C」は、従来モデルに比べて、設置面積を2分の1としながらも、パワフルな集じん力を維持しているのが特徴だ。壁際や家具のすき間に置くことができ、清潔な空気と暮らすことができる。同製品を発売して以降、空気清浄機全体で前年比約1.4倍の実績となった。
3つめの「自分のからだと向き合う」においては、マッサージチェアを提案する。「リアルプロ カーサライン EP-MA110」は、「ソファのようなたたずまいで充実のマッサージ」をコンセプトに、リアルプロシリーズならではのマッサージと、家具調デザインを両立したスリムモデルだ。忙しい日常の中で、自分だけのリラックスできるひとときを叶えることができる。
また、小世帯向け家電に関しても、全国約100拠点、年間約160万件の修理実績を持つパナソニックのサポート体制の強みを生かし、安心して利用できる環境を実現することを訴求。「長く、安心して使ってもらえる家電として提案していく」という。
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オーブンレンジ「NE-FS2E」。常温も冷凍も、裏返しなしでトーストが焼ける。2026年2月に発売した
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衣類スチーマー「NI-FS70C」。シワをしっかりのばせるスチーム機能と使いやすさにこだわった。2026年3月から発売
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アイブロウスムースピック「ES-EF10」。眉に沿ってなぞるだけの電動眉毛抜き。2026年3月から発売
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VIOブラシフォリエ「ES-WB20」。ふわふわの極細ブラシで、手洗いの2倍の汚れが落ちる。2026年3月から発売
生活に余裕を生み出す新しい家電のカタチ
今回の提案では、統一的なブランドは設けず、すでに販売している商品や、小世帯を意識して新たに開発した商品などを組み合わせている。2024年9月に発売したコンパクトベーカリーから、2025年12月に発売したマッサージチェアまでを用意。今回新たに、2025年10月に発売した空気清浄機を提案のなかに加えた。
パナソニック デザインセンターの船引氏は、「デザインコンセプトには、ちょうどいいサイズ、ニュートラルな形、上質でやさしい仕上げとしている。コンセプトカラーは、グレージュとしているが、ひとつの色に統一するのではなく、ホワイトからグレージュまでのグラデーションにより、緩やかにつなぐことで、それぞれの家電が、それぞれの空間で、最適なたたずまいを持ち、暮らしを豊かにすることを目指した」という。
こうした取り組みの場合、トータル提案が中心となり、量販店店頭でも群展示による訴求が行われる場合が多いが、今回の小世帯向け家電では、必要な家電だけを購入してもらうという提案にしている点が特徴といえる。
また、これまでの家電の場合、新製品を発売した際には、フラッグシップモデルの訴求が中心となっているが、パナソニック コンシューマーマーケティング ジャパン本部プロモーション戦略センタープロモーション戦略企画部の岡橋藍部長は、「ライフスタイルの変化にあわせた提案が中心となる。大容量、フルスペックの訴求ではなく、小世帯が求める大きさや機能にフォーカスした家電であり、フラッグシップとは別のもうひとつの新たな柱の提案になる。各事業部門が、時代の変化を捉えて開発したものであり、横断的に商品提案を行うことになる」とした。
国立社会保障・人口問題研究所の調査によると、1980年には全体の約32%だった「小世帯」は、2020年時点で約58%を占め、今後も増加することが予測されている。また、厚生労働省の調べによると、1世帯あたりの平均人員は、1986年には3.22人だったものが、2024年には過去最少の2.2人となり、約40年間に、ひとつの世帯から、1人分の生活が失われているという。さらに、都心部ではコンパクトマンションの需要が、10年間で2倍以上に増加するという結果が出ており、求められる家電の姿も大きく変化している。
日本は、高度成長期に4人構成の核家族が増加し、それ以前の3世代や4世代で住む大家族からは構成人員が減り、それがさらに進展。未婚率の上昇や離婚率の上昇、出生率の減少、教育費の増大などが、世帯あたりの人員数の減少につながっている。
説明会では、経済ジャーナリストの荻原博子氏が登壇。「日本では、家族で幸せに暮らすことが遠くなりつつある。奨学金を返済できずに破綻するという状況すら生まれている。さらに、家賃や住宅価格が高く、コンパクトな家にしか住めないという実態もある」と指摘し、小世帯が増加している背景を示した。
一方、パナソニックの調査によると、過去に家電の購入を諦めたり、サイズダウンをしたりといった経験があるとした回答者は38.9%を占めたという。理由として最も多いのが「価格が高すぎて手がでなかったから」が60.2%に達し、次いで、「部屋が狭く設置する十分なスペースがなかったから」が42.2%となった。この結果を単身者に限定して分析すると、順位が入れ替わり、最も多いのが「部屋が狭く設置する十分なスペースがなかったから」となり、55.5%を占めてトップになった。
荻原氏も、「私自身、洗濯機を購入する際には、設置できるサイズかどうかで選んでいる」とする。
また、子供のいない共働き夫婦では、65.4%の回答者が、「忙しくて家事がおろそかになり、手をつけられずに放置してしまった経験がある」と回答。単身者では、40.6%の回答者が「食後の食器洗いを放置してしまいがち」だとし、「平日にパートナーとの時間を十分に取れていないと感じている」とした回答者が34.5%に達しているという結果も出たという。
さらに、「仕事や家事に追われ、自分らしい上質な暮らし(余白の時間)が損なわれていると感じる」という回答者は44.2%、「日々の暮らしに余白は必要だと思う」との回答は、83.1%に達した。
荻原氏は、「家電が、余白の時間を作るためのコンシェルジェとなり、お手伝いさんとしての役割を果たしてくれる。これからは自分にとって、楽な生活を追求していったほうがいい」と述べたほか、「国産家電がピンチである。家電の修理などを考えると、国産家電にがんばってほしい」と、パナソニックにエールを贈った。


































