2022年は円安の影響でスマートフォンの値段が大幅に上がり、消費者を落胆させました。2023年のスマートフォンの価格はどうなるのでしょうか? 実は円安以外にもう1つ、スマートフォンを安く購入するうえで重要な“値引き”にも大きな変化が起きる可能性が高く、消費者はその買い時で難しい判断が求められることとなりそうです。

円高が進んでもスマホの価格は急に安くはならない

円安であらゆるモノの価格が大幅に値上げされ、家計を圧迫した2022年。スマートフォンもその例外ではなく、2022年7月には発売済みの「iPhone 13」シリーズなどが大幅に値上げされ、秋に発売した「iPhone 14」シリーズも従来より値段が高くなるなど、とりわけ年の後半からは円安の影響を強く受けて価格上昇が進んだ1年となりました。

  • 2022年の新機種「iPhone 14」シリーズは、ベースの価格上昇に加え、急速に進んだ円安が直撃したことで価格が高騰。全モデルが10万円を超え、買いづらくなってしまった

となると気になるのは2023年、スマートフォンの価格はどうなるのか?ということではないでしょうか。2023年も、iPhoneをはじめとして多くのスマートフォンの新機種が登場すると考えられますが、スマートフォンは海外で製造することが多いだけにもともと為替の影響を受けやすく、2023年もその価格は為替事情に大きく左右されることとなりそうです。

ただ、2022年後半からの為替相場を見ると、一時は1ドル150円台を記録していたドル円相場も、2023年初頭には一時130円を割り込むなど、徐々に円高が進みつつあるようです。もしこの傾向が続くならば、1ドル110円台を記録していた2022年初頭の頃と同じ水準とはいかないまでも、円安の影響もある程度抑えられることが考えられます。

ですが、2022年も年の後半から円安による値上げの影響が本格化したように、円高になったからといってすぐスマートフォンの価格が安くなるわけではありません。もし円高が進んだとしても、それがスマートフォンの価格に反映されて安くなるのは年の後半からと考えられます。そのことから、年の前半は現在の価格水準が維持され、高止まり傾向が続くこととなるでしょう。

2023年後半には「1円スマホ」が規制、買い時はいつ?

であれば、スマートフォンを購入するのは2023年の後半からがベストなのか?というと、実は必ずしもそうとはいえません。なぜなら、2023年の後半になると、スマートフォンの値引きに再び規制がなされてしまうからです。

それは、いわゆる「1円スマホ」に関する規制です。現在、携帯電話ショップや量販店の店頭で「一括1円」「実質23円」など非常に安い価格でスマートフォンが販売されているケースを多く見かけますが、この値引き手法は通信契約とセットで端末を値引く手法を禁止した電気通信事業法に触れないよう、携帯電話の通信契約をせず、端末だけを購入する人にもある程度の値引きが適用される仕組みです。なので、そこに目を付けた“転売ヤー”が値引きした端末を買い占めてしまうという問題が多発しているのです。

  • 総務省「競争ルールの検証に関するWG」第36回会合資料より。現在の「1円スマホ」は法に触れず大幅値引きを実現するため、端末自体の価格を誰でも安く買えるよう値引きしていることが転売ヤーに狙われ、大きな問題となっている

ですが、現在の電気通信事業法によって通信契約の“縛り”がほぼなくなり、顧客の奪い合い競争が激化している現状、顧客獲得の非常に強力な武器となっている端末の大幅値引きを1社だけで止めることが困難だというのもまた確か。そこで総務省が主導する形で、2022年末より有識者会議「競争ルールの検証に関するWG」で1円スマホに関する規制に関する議論が進められている最中なのです。

  • 総務省「競争ルールの検証に関するWG」第37回会合のNTTドコモ提出資料より。1円スマホの規制に向けては、中古価格を下回らないことを基準とするなど、現在さまざまなアイデア出しがなされている最中だ

その報告書が取りまとめられるのは2023年夏ごろとされていることから、少なくともそのころには総務省から何らかのガイドラインが出されるなどして、1円スマホのような販売手法ができなくなるものと考えられます。それゆえ、2023年後半まで待つと、むしろ値引き規制でスマートフォンを安く買えなくなる可能性が高いといえます。

では、スマートフォンを安く買えるのはいつなのか?といいますと、その規制が実施される前で、なおかつスマートフォンの値引き競争がもっとも活性化するであろう、3月前後の春商戦が狙い目ということになるでしょう。ただ、大幅値引き販売される端末は最新機種とは限らないこと、そして何より総務省はかねてからスマートフォンの大幅値引きを撲滅したいと考えているだけに、規制が早まる可能性があることにも注意が必要です。

最新のスマートフォンをより安く買いたいというのであれば、やはり為替の動向を注視する必要がありそうです。そのうえで、円高が進んでから半年程度時間を置いたタイミングで販売された端末を選べば、2022年よりは割安に新機種を購入できる可能性が高まるのではないでしょうか。

一方で、円安が進んでいた2022年に、あえて最新スマートフォン「Pixel 7」を安く販売したグーグルのような事例も存在することから、メーカー側が勝負に出て端末を安く販売することに期待する向きもあるかもしれません。ですが、円安の最中にそれだけの値引きができるのは体力のあるごく一部のメーカーに限られることから、あまり期待はできないというのが正直なところです。

値引き規制に加え、もし再び円安が進んだとなれば、スマートフォンのさらなる価格高騰は避けられないでしょう。2023年はユーザーだけでなく、スマートフォンメーカーにとっても厳しい1年となる可能性が高いといえそうです。