1ドル=130円を超える急激な円安が話題になっています。さまざまな商品やサービスが続々と値上げされていますが、iPhoneの次期モデルの価格はどうなるのか、現行のiPhone 13シリーズの値上げはあるのか、分析してみたいと思います。

  • 急激な円安が進むなか、輸入品であるiPhoneも次期モデルの値上げは避けられないとみられる。現行のiPhone 13シリーズも突然の値上げがあり得るか?

日米のiPhone価格は税別で比較する必要がある

iPhoneの価格を考えるうえで、もっとも分かりやすいのがアップルによる直販価格でしょう。この価格は、米国市場向けのドル建て価格を基本に、国や地域ごとに価格を設定していると考えられます。

  • アップルのイベントでは米ドル建ての税別価格が発表される

日米の価格から為替レートを計算する場合、注意したいのが税金の扱いです。日本では10%の消費税を含む「税込」表記になっていますが、日本の消費税にあたる米国の売上税は州や地方自治体によって異なるため、米国では「税別」表記が基本です。そのため、両者は税別の価格で比較したほうが正確といえます。

2021年9月に登場した現行のiPhone 13の場合、最も安い128GBモデルの価格は98,800円(税別価格は89,819円)です。米国での価格は799ドルなので、単純計算で1ドル=約112.41円になります。同時発売のiPhone 13 Proシリーズもこれに近いレートが採用されており、1ドル=111~113円程度でした。発表前の為替レートと比べて1~2円ほど円安という印象です。

ただ、2022年3月に登場した第3世代iPhone SEの価格は1ドル=120~122円程度で、同時に発売された第5世代iPad Air(1ドル=113円程度)よりも割高(円安)に設定されていました。

逆に、2021年9月に値下げされたiPhone 12 miniは、当時の為替レートと比べてかなり割安(円高)でした。世界的には不人気とされるminiシリーズですが、比較的人気の高い日本で安く売りさばこうという思惑があったのかもしれません。

このように例外的なケースはあるものの、アップル製品全体を俯瞰してみると、おおむね当時の為替レートに準じたオーソドックスな価格設定がなされている印象があります。

「iPhone 14」の値上げは必至か

それでは、2022年秋の登場が期待される新型iPhone(便宜上、iPhone 14とします)の価格がどうなるのか、予想していきます。

最も楽観的なシナリオとしては、iPhone 14の最小構成は799ドルのまま、為替レートは現在と同等水準の1ドル=130円で計算すると、日本での価格は114,257円(税別価格は103,870円)となります。iPhone 13の最安モデルは98,800円で、ぎりぎり10万円以内に収まっていたことを考えると、スタンダードなiPhone 14が11万円を超えてしまうのはやはり衝撃といえます。

もし、秋に1ドル=140円まで円安が進んだ場合は123,046円(税別価格は111,860円)になります。現在のiPhone 13 Proの価格は122,800円なので、iPhone 14がiPhone 13 Proの価格を超えるという恐ろしい事態になります。

上位のiPhone 14 Proシリーズはどこまで高くなるのでしょうか。Pro Maxの最大容量モデルが1599ドルならば、日本版は1ドル=130円の場合に228,657円(税別価格は207,870円)、1ドル=140円になると246,246円(税別価格は223,860円)となり、ついに20万円を超える価格帯に突入する計算になります。

この価格に、大手3キャリアはさらに上乗せしてくる可能性が高いのも悩ましい点です。残価設定型のプログラムやキャンペーンなど、少しでもおトクな買い方を求める人が増えることは間違いないでしょう。

  • 次期iPhoneは価格が軒並み上昇するのはどうやら避けられなさそう。キャリア版はさらに高い価格を提示してきそうだ

旧モデル、米国で値下げしても日本では価格据え置き?

また、新モデルの発表と同時に旧モデルは値下げされるのが通例です。たとえば、2021年のiPhone 13の発表時には、旧モデルとなったiPhone 12が100ドル値下げされて699ドルになっています。

  • iPhone 13発表時のスライド。旧モデルとなったiPhone 12 miniは599ドルに、iPhone 12は699ドルに値下げして販売が続いた

ところが、1ドル=130円だと699ドルは99,957円になり、値下げ前の799ドル(98,800円)よりもわずかに高くなります。値下げ幅よりも、為替レートの変動幅のほうが大きいというわけです。

現行のiPhone 13シリーズ、突然の値上げはあるか

現行のiPhone 13シリーズの値上げも心配されています。アップルは2014年11月、為替変動を理由に「iPhone 6」を値上げしたことがあります。その後、2015年3月にはアップルのイベント開催にあわせて再び値上げを実施しています。

当時、2回の値上げの前後で、ドル円相場はそれぞれ約10円ずつ、あわせて約20円ほど円安方向に動いています。現在はこのとき以上に急速な円安が進んでいることから、突然の値上げがあっても不思議ではない状況です。

  • 完成度の高さで定評のあるiPhone 13シリーズ。購入を考えている人は、不意の値上げでガッカリしないよう、今のうちに手に入れておくのもよいだろう