動画サイトの動画ダウンロードにも対応した
定番ディスクライティングソフト【2009年4月号掲載】


Mac OS Xは標準機能でCD/DVDの作成機能を備えているが、それでも「Toast(トースト)」は、高機能なライティング機能と手軽な動画変換機能により、定番人気のソフトとして支持されている。本バージョンは、前バージョンの発売から1年未満のリリースとなったが、動画サイトの自動ダウンロード機能、AVCHD対応カメラからの直接転送といった数々の機能強化を図り、CD/DVD周りの統合ソフトとして更なる進化を遂げている。


スペック

[開発元] ソニック・ソルーションズ  [販売元] ダウンロード版:ソニック・ソルーションズ/店頭のパッケージ版:ラネクシー  [価格] 1万7,640円(パッケージ版、ダウンロード版共通標準価格)  [OS] Mac OS X 10.5.x  [HD] 800MB以上  [備考] PowerPC G5またはインテルCPUを搭載したMac。AVCHD規格のDVD/ブルーレイビデオのオーサリングは別途プラグインの購入が必要(ダウンロード販売のみ:2,625円)  [掲載号] 「Mac Fan」2009年4月号

OVERVIEW

ディスク作成ソフトとして熟成を重ねてきた「Toast(トースト)」は、ここ数回のバージョンアップでは主に動画のフォーマット変換やネットワークでの映像配信機能などを強化してきた。単にディスクの作成だけでなく、動画を扱うユーティリティソフトとしての強化が進んでいるという印象だ。

(1) 充実の付属アプリケーションも魅力の1つ
ディスクのカタログ管理、オーディオファイルの録音・編集、動画ストリーミング、ディスク盤面のデザイン、バックアップなどさまざまなツールがバンドルされている

今回のバージョンでも、やはりその方向性に沿った機能向上を遂げている。そんな新機能の中でも特に注目なのは、動画サイトから動画をダウンロードしてiPodなどに書き出す機能や、AVCHD規格のカメラから動画を取り込む機能だろう。

また、数多くのユーティリティソフトが付属しているのも本製品の特徴だ。中でもストリーミング再生ソフトの「Streamer(ストリーマ)」では、同社が公開するiPhone用アプリケーションを使って、iPhoneで簡単にMac内の動画を視聴できるようになった。

FOCUS ON

新機能のWEBビデオ抽出機能は、WEBブラウザ上で表示している動画をそのままToast上に持っていける機能だ。Toastを同時に起ち上げていれば、WEBブラウザで表示しているサイトの動画がメディアブラウザに自動的にインポートされる。Toastでの利用が前提のため、変換せずに元動画の収集だけを行う用途にはやや不向きだが、YouTubeやニコニコ動画など主要な動画共有サイトなら、なんら複雑な操作をすることなく動画を収集できる。欲をいえば、他の動画ダウンロード専用ソフトにあるようなキーワード検索機能も欲しかったが、収集の手軽さはなかなかのものだ。

(2) 動画共有サイトの動画をトーストに読み込み
Toastを起動したままWEBブラウザで動画を再生していくと、[メディアブラウザ]パネルの[ウェブビデオ]にリストアップされていく。その中から保存したい動画を選んで、トーストのメインウインドウにドラッグ&ドロップして変換処理を行なう。一連の操作はスムーズで使い勝手がいい。なお、ニコニコ動画の場合、一部の動画(On2 VP6形式)には非対応だ

次に、AVCHDカメラの取り込み機能についてだが、取り込んだ動画はブルーレイビデオの規格に沿ったファイル構成となり、再エンコードせずにブルーレイビデオまたはAVCHD規格のDVDディスクとして書き出せる。iMovie09でも、AVCHDカメラの映像をそのままアーカイブする機能を搭載したが、直接書き出す機能は備えていない。Toast 10でディスクに書き出せるのは、大きなメリットといえる。

(3) AVCHDから取り込んで、ブルーレイに出力できる
高解像度ビデオをブルーレイプレーヤで再生可能な形式で出力可能(AVCHDおよびブルーレイのビデオの編集には別途プラグインが必要)。設定は自動でも問題ないが、カスタムで細かく設定することもできる。完成したブルーレイディスクはMacでは再生できないが、PS3や家庭用ブルーレイプレーヤで再生できる

(4) ウィンドウズ用のブルーレイ対応ドライブも使用可能
Macでブルーレイディスクを作成するには、外付けの対応ドライブが必要となる。Toastでは、Mac OS Xに対応していないUSB接続のウィンドウズ用ブルーレイドライブも、大半は問題なく使用できる。図は、バッファロー製の「BRHC-6316U2」の情報をToastで表示させたところ

最後にストリーマについても触れておきたい。このソフトでは、Mac内の動画をインターネット越しにストリーミング配信できるものだ。自分の環境のネットワーク速度に応じて画質調整もできるため、iPhoneでは無線LANではなく3G回線でも快適に動画を視聴できるのはありがたい。ただし、ブラウザでの動画一覧画面ではファイル作成日が大きく扱われ、任意のタイトルが付けられない点がやや気になった。一覧画面ではファイル名で並び替えができるので、わかりやすいファイル名をつけておくのがいいだろう。

(5) ストリーマの設定画面
Macのハードディスク内にある動画をインターネット越しに再生できるのがストリーマだ。公開する側のマシンでURLを設定し、再生したいマシンでそのURLにアクセスする仕組み。企業内のLANなどネットワーク設定によって使えない場合もあるが、個人での使用が前提の場合は問題はないだろう。ポート番号の指定も可能だ

(6) iPhoneでMac内の動画を視聴
ストリーマで設定したURLにSafariでアクセスするとパスワード入力画面が表示され、入力すると動画一覧が表示される。3G回線でも快適に再生が可能。また、App Storeでは専用のビューワソフト「Roxio Streamer」を無償でダウンロードできる。その都度URLやパスワードを入力する手間が不要になるが、このアプリはWi-Fi専用で3G回線では再生ができないのが残念

AFTER REVIEW

AVCHDとブルーレイ関連の編集に関しては別途「HD/BD プラグイン」の購入が必須となるのが残念だが、コーデックなどのライセンス料を考えると仕方がないところだろう。ライティングに関する機能は以前のバージョンでも充実していただけに、特に旧バージョンのユーザにとっては新機能に魅力を感じるかが導入の判断となる。AVCHDカメラやブルーレイドライブなど、最新のハードウェアを十分に活用したいと考えるならば、積極的に導入を検討したいところだ。