Flashアニメ作家・青池良輔がクリエイターになる方法を熱く伝授する連載「創作番長クリエイタ」。連載第8回ではショートコンテンツ(短編作品)の創り方を考察する。

キャラクターを創ったら物語を考えよう

キャラクターの見た目で悩みその性格を考えて沸いてくる不安を乗り越えやっとキャラクターを自分のものにしました。と大げさに書いちゃいましたが、ここまでの作業に数カ月かかる場合もあれば、2~3時間でできてしまう事もあります。時間をかければそれだけ良い物ができるかといえば、一瞬のヒラメキの方が輝いていることもあるのが怖い所です。でもまぁ、紆余局背があるにしろないにしろ自由に扱えるマイキャラの誕生は素晴らしい事です。

ここからさらに、「物語」を考えてゆくことになりますが、これはなかなか話すと長くなりますので、本屋に行って好きな小説の作法や、脚本の書き方というような教則本を読まれてみるのが良いのではないでしょうか? 数多くの本の中から、自分が共感できるものを見つけて熟読される事をお勧めします。ただ、この連載で目的としているようなショートコンテンツ(短編作品)に関して言えば、話の膨らませ方が長編作品とは随分違います。ショートコンテンツの場合は、多くの書籍で語られている手法を意識してアレンジしてゆかなければならないと思います。

「簡単そう」と誤解される短編作品

ショートコンテンツの物語の作法について多くが語られないのは、「簡単そう」に見えてしまうからだと思いますし「だって短いし、まぁ起承転結でいいんじゃないの」というちょっとなめたノリもあると思います。大筋間違ってもいないのですが、ショートにはショートの面白さを追求できる特性というものもあると思います。

例えば2分の作品を作ろうとした場合、シナリオの作法によれば、おおよそ400字詰め原稿用紙2枚の内容になります。2枚と言えば確かに簡単に聞こえますが、頑張ればそこそこの物語の展開を詰め込む事ができる微妙な長さでもあります。ワンカットの会話劇でも十分に楽しめる作品は作れますし、作り込んでカット数の多いアクションの快感を伝える事もできます。

「削ぎ落とし」が短編のクオリティ上げる

僕の場合は、2分目安の作品を作る場合には、まず3分前後の脚本を書き、そこから「何を削るか」という点に集中します。この「削ぎ落とし」がショートコンテンツの作法のキモだと思います。どんな長さの脚本でも削ぎ落としはするのですが、100キロの人が10キロ痩せる場合と、30キロの人が10キロ痩せる場合では大きな違いがあるように、短編作品だとその効果が劇的に出るので、ストーリーテリングの練習には最適です。この「削ぎ落とし」は、ただの「脚本の整理」と思われるかもしれませんが、長編と違い短編の場合は、目の届く範囲、手の届く範囲で全体をいじりまわすことができるので、その「手を付けよう」というきっかけ作りのためにも、まず長めにして、「削る」という作業をしながら「こねまわす」のです。

脚本を読み、物語の時間をイメージし、内容を吟味する

ざっくりと思いついた話の流れをまとめてみて、それが丁度2分ぐらいと思われても、あえて分量を増やします。初めの頃は、「どのぐらいで何分?」という予想が難しいかもしれませんが、脚本のセリフ、効果音、BGMなどを、すべて自分で読み上げれば大体の時間感触は掴めると思います。慣れてくると、自分の愛用しているテキストエディット系アプリ、原稿用紙などで、「自分の1分」が読める様になってきます。そして「これでだいだい3分だなぁ」という分量になったところで、セリフのひとつひとつ、アクションのひとつひとつを精査し取捨選択してゆきます。2分ぐらいのコンテンツなら、この作業の過程でストーリーの流れやオチが変わってしまっても、全体が大きく破綻してしまうというより、全体を作りかえてしまえばいいので構わないと思います。

全景を確認しながら、前後を入れ替える。余計な登場人物を発見する。話の筋がクリアなのか、余分な説明が必要になっていないか、そしてなにより「自分のやろうとしている事のコア」が明確になっているのか。まずはその辺りから大鉈を振るいます。そうしているうちに、自分がやろうとしていたストーリーの大枠が明確になり「面白いと言われるかどうか」の感触が見えてくるのではないでしょうか。次回は、「ショートコンテンツの作法」について、さらに深く考えてみたいと思います。

青池良輔


1972年、山口県出身。大阪芸術大学映像学科卒業後、カナダに渡り映像ディレクター、プロデューサーとして活動。その後、Flashアニメで様々な作品を発表。短編アニメやCFを多数手がける。最新作はDVD『CATMAN』(2008年)、『ペレストロイカ ハラペコトリオの満腹革命』(2008年)。『藤子・F・不二雄のパラレル・スペース DVD-BOX』(2009年)では、 谷村美月主演の実写作品「征地球論」の監督と脚本を担当。森永アロエヨーグルトのWebサイトで、最新Flashアニメ『GIRLS BATTLE アロ恵』公開中。