Flashアニメ作家・青池良輔がクリエイターになる方法を熱く伝授する連載「創作番長クリエイタ」。連載第20回では、トゥイーンでアニメーションを作成する。

前回は、コマアニメを念頭に置きながら、繰り返し使用できる部分はシンボルとしてトゥイーンを設定し、コマアニメに合わせてゆくという作り方を紹介しましたが、また別のアプローチとして、トゥイーンのみでアニメーションを作る方法もあります。体を関節ごとに分け動かす為に「関節アニメ」と呼ばれることもあります。

基本的には平面で行うことなので、操り人形のようにというとちょっと言い過ぎのきらいがあり、インドの影絵で用いる操り人形を想像してもらうとちょうど良いかもしれません。まずは「頭、首、体、二の腕、上腕、手、腹、腰、太もも、すね、足先」というように動かしたいイメージによって分割したシンボルを準備します。キャラクターのデザインによっては、もっと分割がシンプル(もしくは繊細)な方が良い場合もあると思います。

「CS4」ではボーンツールを使ってIK(インバースキネマティック)という機能が使用できます(Action Script 3.0)。具体的には、複数のシンボルに骨(ボーン)を通してそれらの関連付けを行うことで、ひとつのシンボルの動きが、他のシンボルの動きと連動する様になります。この機能を利用してバラバラに準備された体の各パーツにボーンを通し、関連性を持たせてゆきます。

まず先程、制作したバラバラに作ったパーツをそれぞれシンボルに変換し、その中心点を考えます。この時、人体の関節を意識しながら、頭の付け根、背骨の位置、膝頭など、なるべく回転した時に自然になる場所の目星を付けます。そして、ボーンツールを使ってゆきます。この時、注意しなければいけないのは、一番始めの支点がそのキャラクターの「中心点」となり、全体を移動したり回転したりする起点となるため、一番中心となるポジションから始めて行かなければならないということです。今回は、「腹」を中心に骨を通してゆきます。

ボーンツールで腹の中心点からぐいっとドラッグしてゆくと、大きな矢印のようなものがでますので、それを繋ぎたいシンボルに移動させてゆきます。そして、この矢印の先を、先程考えた関節の位置にもってゆきます。後は体の中心から、末端に向かって順々にパーツを繋いでゆきます。ここで、あまり当たり前の骨を意識すると、「あれ、腕って、肩と肘に関節が……」と思うかもしれません。しかし、各シンボルにつけられる間接はひとつなので、上腕には肩の関節、二の腕には肘の関節と言う風に設定してゆきます。

ひと通り、シンボルの関連性を設定すると、全てのシンボルは、「ポーズレイヤー」に統合されます。この状態で、手足のシンボルを動かしてみると、それぞれ関連性をもって動くようになっているのがわかると思います。このままだと、関節の間が空いていて違和感があるので、Altキー(Windows9またはCommandキー(Macintosh)を押しながら各シンボルの位置を調整します。ここで、位置関係を調整すると、重なりがおかしな部分にも気がつくと思います。各シンボル毎に、シンボルの重なり順を調整し、自分の意図する重なりの順番に修正してゆきます。全ては、1レイヤーに統合されているので、ちょっと混乱しますが、丁寧に作業しましょう。

ここまでやれば、準備は完了です。キーフレームの任意のタイミングで、キーフレームを挿入し、次のポーズを決めてやれば、各シンボルが連動した形で、その間をスムースに移行してくれます。あとは、どんどんキーフレームを突っ込みながら、動きをつけてゆきます。ただ、バシバシ動かしていると「関節グニャグニャじゃん」と感じるとも思います。その場合、プロパティーパネルで、各ボーンに回転する範囲の制限をかけることも出来ます。人として、正しい関節の制限をかけても良いと思います。これで、動きをつけてみると、コマアニメだと大変そうなことが、ある程度上手く表現できるのではないかと思います。

上手く使うと、なかなか楽しいボーン機能ですが、AS3対応であること(全フレームをフレームアニメーションに変換はできます)、どうしても見た目がパペットっぽくなってしまうことなど、癖が強い機能でもあります。個人的にはリアルな人間のアニメーションというよりは、簡略化したキャラクターの平面的なアニメーションには使え、機械的な物に関して面白い表現が出来るのではないかと思います(『ハ○ルの動く○』とか、『ナ○シカ』の王○とか……)。「ボーン」という言葉に捕われずに、楽しい使い方を模索して欲しい機能です。

青池良輔


1972年、山口県出身。大阪芸術大学映像学科卒業後、カナダに渡り映像ディレクター、プロデューサーとして活動。その後、Flashアニメで様々な作品を発表。短編アニメやCFを多数手がける。最新作はDVD『CATMAN』(2008年)、『ペレストロイカ ハラペコトリオの満腹革命』(2008年)。『藤子・F・不二雄のパラレル・スペース DVD-BOX』(2009年)では、 谷村美月主演の実写作品「征地球論」の監督と脚本を担当。森永アロエヨーグルトのWebサイトで、最新Flashアニメ『BABY&GIRLS アロ恵』公開中。全国のTOHOシネマズで本編前に上映されている短編『紙兎ロペ』では、アニメーション制作を担当。