洋上の着底式や浮体式や陸上などさまざまな方式はあるが、読者のみなさまがよく目にする風力発電システムは、水平軸型の3つのプロペラがついた形ではないだろうか。

しかし、斬新でちょっと変わった風力発電システムを手がける企業が存在する。

ノルウェーのWind Catchingという企業。彼らは、浮体式洋上風力発電システムという海上に浮かせる形で設置される風力発電システムで、エッフェル塔よりも高く、大型で正方形に近いフレーム内に、多くのプロペラ(タービン)が設置されたタイプを手がける。では、なぜこんな形の風力発電を手掛けているのか、今回は、そんな話題について紹介したいと思う。

ノルウェーのWind Catchingとは?

ノルウェーのWind Catchingは、斬新でちょっと変わった風力発電システムを手がける企業。Linked Inによると、2017年に設立され、現在、社員数は10名以下と小規模でプロジェクトを動かしているようだ。

CEOのOle Andre Heggheim氏やConcept InventorのAsbjørn Nes氏などの創設者たちは、そもそもオランダの風車を見るたびに、これらの方式は最適な風力発電システムなのか、疑問を持っていたという。

そこで彼らは、最適な風力発電システムの模索を開始する。目的は、ある局所地域からの発電を最大化すること。彼らは、多数の小型タービンを設置したもののほうが、大型タービンよりも面積あたりの発電量がはるかに優れていることがわかったというのだ。

そして彼らは、2017年に最初の基本設計が完了したのち、石油、ガス、洋上風力発電を手がけるAibelやノルウェーのIFE(the Institute for Energy Technology)などへと売り込みに行った。そして、現在、Aibel、IFEと技術連携しながら、2022年にはこの浮体式洋上風力発電システムの商用化を目指しているのだ。

  • Wind Catchingの陣営

    Wind Catchingの陣営(出典:Wind Catching)

Wind Catchingの浮上式洋上風力発電システムとは?

海上には、ビルなどの建造物や山、森林などもない、そのため、風を遮るものがなく陸上の風力発電システムと比較すると、強く安定した風力を利用できるケースがある。

しかし、景観が美しい海であったり、集落が近くにあったり、海岸線から近い海上では洋上風力発電システムの建設には、しばしば建設に反対の声が上がってしまう事実もある。

しかし、浮体式であれば、海岸から比較的遠方で風力発電システムを浮かすことができる。水深が深すぎると、着底式の洋上風力タービンが建設できないことがあるが、浮体式を利用することで、そのような場所でも風力発電を行うことが可能となる。

浮体式は一般的に、錘を海底に沈め、ケーブルは錘と浮上している風力発電システムを接続されているものであり、一般的には水深50mを超えると着底式の場合、採算性が悪くなるので、50mから200mの水深で設置を行う傾向にあるというが、 Wind Catchingの浮上式洋上風力発電システムを設置する水深や浮体方式について、詳細は不明だ。

彼らの浮上式洋上風力発電システムは、下図のとおり、非常に大型。自由の女神はもちろんのこと、エッフェル塔とほぼ同じで、高さは300mあるという。 これにより、普通の風力発電機より約2倍の掃引面積を持つので、システム全体で約5倍となる高効率化を実現しているという。

  • Wind Catchingの浮体式風力発電システム

    Wind Catchingの浮体式風力発電システム(出典:Wind Catching)

普通は、風が強すぎると、壊れてしまうためプロペラの回転に制限をかけるが、Wind Catchingの浮上式洋上風力発電システムは、風が強くても問題なく稼働できる。そして、強風によって、2.5倍効率を上げることができるという。

このシステム1つで、約8万世帯に必要なエネルギーを供給することができるようだ。プロペラ自体が小型化されているため、通常の風力発電システムを設置するのに比べて、製造やメンテナンスコストも大幅に低減できるのもメリットだという。

いかがだっただろうか。Wind Catchingの浮体式風力発電システムの記事を書きながら、ジュール・ヴェルヌの「人間が想像できることは人間が必ず実現できる」という言葉を久しぶりに思い出した。2022年の商用化がとても楽しみだ。