この季節、新生活を始めるに当たって、電化製品を揃えようと思っている人は多いだろう。当コラムでも、新生活に必要な電化製品について、情報を提供していきたいと思う。しかし、新生活に必要な電化製品といっても、その種類は多い。限られた期間ですべてを取り上げていくと、1つ1つの内容は希薄になってしまうので、当コラムでは、新生活に必要な電化製品の中から、たった1つだけに絞って紹介したい。

新生活に当たって最低限必要な電化製品は?

さて、新生活を始める際に最も重要な電化製品は何だろうか。筆者は、洗濯機だと考えている。新生活向けとして販売されているほかの電化製品に関しては、なくても何とかなるという場合も多い。

例えば、調理家電関係は、自炊をしないと決めてしまえば、揃える必要は一切なくなる。空調や照明に関しては必要なものではあるが、もともと備えつけてあるという物件も少なくない。それに対して、洗濯機がない場合はコインランドリーなどを利用することになるのだが、そのコストや手間を考えると、やはり圧倒的に必要性は高いといえるだろう。

しかし、洗濯機を取り上げるのには1つ問題がある。洗濯機は、予算と設置できるサイズの中で、順当なものを選択すればOKなのだ。予算があるのなら、パナソニックのヒートポンプ式プチドラム「NA-VH300L」や、日立アプライアンスのビッグドラムスリム「BD-S7500L」といった製品を選んでおけば、おそらく快適な生活が送れるだろう。

洗濯機は置けるサイズのものを選べばOKだ。あとは予算の範囲内で、どれだけ快適な製品を選ぶかという話になる。写真は、パナソニックのヒートポンプ式プチドラム「NA-VH300L」(左)と、日立アプライアンスのビッグドラムスリム「BD-S7500L」(右)

サイズに関しては、新しい部屋の洗濯機置き場に備えつけてある防水パンのサイズと排水口の位置、そして搬入の際の経路の幅の2点に注意する必要がある。ドラム式の洗濯乾燥機の場合、ドアが手前に開く関係上、洗濯機を設置した際にそのスペースが確保できるかというのも大きなポイントとなる。しかしいずれにせよ、ファミリー向けの製品を選択する際とさほど大きな違いはない。

というわけで、今回はクリーナー、しかもスティック型のクリーナーに絞って話を進めていこうと思う。

必要なときにサッと手に取れるスティック型クリーナー

さて、いきなりだが、クリーナーを使わないという選択肢もある。もちろん、掃除を一切しないという選択肢ではない。その選択肢は筆者には勧められない。

筆者が提示したいのは、手軽な掃除グッズを使って済ましてしまうという選択肢だ。床がフローリングの場合、花王が販売している「クイックルワイパー」などの掃除グッズは、それだけでも相当に効果を発揮する。

しかし、クイックルワイパーでも取りにくいタイプの汚れはある。綿埃などに対してはキレイにからめ取れるクイックルワイパーが有効なのだが、粒子状の物体には、そこまでの効果はない。例えば、エスプレッソマシン用に挽いたコーヒー豆を床にぶちまけてしまったような場合、クイックルワイパーだけでは少々てこずる。粘着タイプのクリーナー、俗にいう"コロコロ"を併用するか、それとも昔ながらのやり方で、ホウキとチリトリを使うのが妥当なところだろう。

床の上の掃除はそれで良いだろう。しかし、それ以外の場所も掃除は必要だ、棚の上や机の上などでは、柄の長いクイックルワイパーはかえって使いにくい。そういう場所では、同じく花王の「クイックルワイパー ハンディ」が役に立つ。

……と、このように、掃除のための道具はどんどん増えていく。これらは日常的には、どこかにしまっておかれ、必要な場合にのみ、収納場所から取り出してきて使用されることになる。

さて、ここからが今回の本題だ。スティック型のクリーナーは、そのまま部屋の隅に立て掛けておけるので、必要なときにすぐ掃除ができる。あまり広くない部屋で、床だけでなくほかの部分も掃除できるのが、スティック型クリーナーだ。

ツインバード工業の「パワージェットサイクロン220」

パナソニックの「MC-SU110A」

スティック型クリーナーは、大きく2種類に分類される。1つは、ハンディタイプのクリーナーに取っ手を付けたようなスタイルを採用している製品だ。このなかには充電式のモデルも存在する。代表的な製品は、エレクトロラックスの「エルゴラピード」や、ツインバード工業が数多くリリースしている一連のクリーナーだろう。このタイプは、床側からしか空気を吸わない。もう1つが、空気の流れる経路を2系統持つ製品だ。このタイプは、本体上部に設けられたホース側からも空気を吸うことができ、それを使って棚の上などの掃除を行うことも可能だ。今回取り上げるクリーナーは、この2番目のタイプだ。

さて、国内でクリーナーとして一般的なのは、キャニスター型だ。初めに断っておくが、キャニスター型のクリーナーと比べて、今回取り上げるスティック型のクリーナーには、いくつかのデメリットがある。

スティック型クリーナーのメリットとは?

まずは、キャニスター型に比べて、ある程度の"力"がいるという点だ。キャニスター型の場合、ホースが動ける範囲ならば、掃除を行うのにそれほど力は必要ないが、スティック型では常にクリーナー全体を動かして掃除を行うので、それなりに力が必要になる。

次に、多くのキャニスター型クリーナーに比べてスティック型はパワーが弱いという点だ。常に本体を動かし続けるスティック型では、なるべく本体を軽量化したいため、必然的に大パワーのモーターは積めないということになる。

また、ヘッドが本体に直結しているので、ベッドの下など、高さのない場所の掃除を行う場合には家具を動かす必要がある。キャニスター型と比べると、掃除機を収納場所から出してくることが面倒なのか、掃除自体が面倒なのかに違いがあるといえよう。もっともキャニスター型でも、手を抜かずにしっかりと掃除をしようと思ったら、やはり家具は動かさなければならないので、結局のところ大差はないのかもしれない。

機能面でも違いがある。気密性の高いボディやフィルターの自動クリーニングは当然採用されていないし、最近では、キャニスター型のミドルクラスにも付いている脱臭機能なども搭載されていない。これは仕方のないところだろう。スティック型のクリーナーは、キャニスター型のクリーナーに比べると価格が抑えられており、機能面ではやはり及ばない部分が多い。

機能面だけではない。筆者は、クリーナーでは紙パック式が好みなのだが、残念ながら、このクラスでは、サイクロン式以外の選択肢がほぼ存在しない。さらに、ダストカップの容量が少ないというおまけまで付いている。最後に、作りが華奢で重厚感がないという点も、筆者のような家電好きには大きな問題だ。

さて、このように、キャニスター型に比べると劣る点が少なくないスティック型なのだが、部屋の中に置ける手軽なスタイルと、ホース部分を引き抜いて床以外の掃除にも使える汎用性の高さは、キャニスター型にはない特性だ。

というわけで今回、筆者はスティック型のクリーナーの実際の使い勝手について紹介するために、1台購入してみた。購入したのは、シャープの「EC-ST20」だ。

シャープのスティック型クリーナー「EC-ST20」

今回、この機種を取り上げるに当たって、同社に話を伺ったのだが、やはりメインの製品ではないので、「発売のときにプレスリリースも出さないような製品」という感じの扱いであった。ところがEC-ST20は、なかなかユニークな製品なのだ。次回は、このEC-ST20の実際の使い勝手についてお届けしたい。

わが家に届いたシャープの「EC-ST20」