今まで全く触れたこともない話題なのに、世間で何か大きなことが起こった途端、急にその件に一枚噛みだす者が続出するのはよくあることだ。
例としては、炎上したとたん「実は前からあいつはおかしいと思っていた」と言い出したり、訃報が出た途端、急にファンだったといって追悼ファンアートをアップしはじめる感じであり、身近なところで言うと漫画の連載打ち切りが発表されてから「読んでたのに」と言って姿を現すステルス読者などである。
これらの行為に対して、多勢にならないと自分の好き嫌いすら言えないのか、人の死を使って売名すな、などの厳しい意見もあるのだが、それ自体、人の死に乗じて「他人の訃報に急に乗っかる奴が嫌い」という己の好き嫌いの表明をしてしまっている合体技とも言える。
漫画家としては死ぬ前に応援してほしかったという気持ちはもちろんあるが、元はと言えば、死でしか注目を集められない、勢い余った高所系ユーチューバーみたいな作品しか描けなかった自分が悪いし、母親の股間から顔を出した時も誰もいなかったが、葬式も無人という寂しい人生よりは、「読んでいたのに」と急に知らない人が花を手向けに来てくれた方がよいし、むしろ救われる。
ただ、現実の葬式でこういう人が現れたら香典泥棒の可能性があるので気を付けてほしい。
103万円の壁だってそうだったでしょ?
それに「機」に乗じるというのも大切なことである。
特に「意見」というのは、正しければ通るというわけではない。どれだけグッドアイデアでも「他に意見がなければ本日の会議はこれで終了いたします」の後で言い出すと賛同を得られづらくなるばかりか、今から帰れば相棒をリアタイできた勢から恨みを買う恐れすらある。
聞いてほしい意見ほど「空気」を読んでいう必要があるし、それを通そうと思えば「数」も重要になってくる。
多数派が正しいというわけではないが、選挙のように、数が多い方が勝ちな場合も多いし、単純に人数が多い方が声がでかくなる。
たまに一人で千人分の声を出すオタクが存在し「こいつが沼ってるジャンル、さぞかし人気なんだな」と思ったら、そいつ一人しかいなかったという怪現象も起こるが、基本的には声は人数が多い方がでかくなり、でかくなるほど無視が難しくなる。
逆に言えば、正当な訴えでも、たった一人の小声だと通らないばかりか、無視されてしまうことも多い。
そんなかつてモスキート音として黙殺された自分の声と同じ声が、クソデカボイスとして注目を集めていたら、便乗ではなく「加勢」として加わるしかないだろう。
そんなわけで、さすがに今回ばかりは、でかくなりすぎたお客様の声を無視できないだろう、と言われているのが、日本最大のフリマサイト「メルカリ」の「返品詐欺」である。
サンフランシスコのダウンタウン気分が味わえるぜ
メルカリと言えば、不用品を匿名で売ったり買ったりできる便利なサービスとして利用者も多いのだが、治安の悪さでも話題に上りやすく、戦後最大の闇市としても有名である。
漫画家の間では「人間不信になりたくなければメルカリで自分のPNを検索するな」と言われている、かどうかは知らないが、実際ファンを名乗る人物に贈ったサインが秒で転売されているのがメルカリであり、私がコラボカフェをやった時に、まだ関係者しか持ってないはずのグッズが何故か出品されていたのも確かメルカリだった。
Xを見ればわかるように、人口が増えれば治安の悪化は免れない。
しかしクライムシティには人口過多だけではなく「警察が機能していない」という特徴もある。
つまり、メルカリの治安が悪いのは、警察である運営が悪質ユーザーを取り締まらないせいと前々から指摘されており、今回「返品詐欺」の問題が大きく取り上げられたことにより、さすがに何らかの対応を取るだろうと言われている。
今回話題の「返品詐欺」とは、購入者が「商品に不備があった」として運営に返品と返金を求め、運営は購入者に返金し返品されたものを出品者に返すのだが、その商品が偽物という詐欺である。
こうすることにより、購入者は実質タダで商品を手に入れ、逆に出品者は商品だけを取られるという被害を受ける。
この被害を受けたユーザーが運営に対応を求めるも、偽物だという証拠がないとし、要約するに「自分で警察に相談するなりして」という、桃屋より塩分濃度が高い対応をしたため、納得できないユーザーが詳細をXで告発、大きく拡散された上、同様の被害報告が相次ぐことになった。
詐欺自体も問題だが、それより問題視されたのは被害報告に対しメルカリが『自分で何とかして』の一点張りだったという点である。
犯罪を犯しても警察は追ってこないし、そもそも被害届を頑なに受理しないマッドポリスの街とわかれば、犯罪者が「ここをキャンプ地とする!」と宣言して根城にするのは当たり前だ。
自分で何とかしろと言われても、個人で犯人を特定し訴訟までするとなったら、そちらの方が高くつく。よって被害者は今まで泣き寝入りするしかない状態だったという。
でも日本はマシな方、警察もメルカリも騒げば動いてくれる
だが、今回ばかりは騒ぎが大きくなりすぎて、メルカリも無視ができなくなったのか、被害者に返金対応をすることになった。だが、被害者は悪質ユーザーの取締りなど、根本的な対応を求めている。
取引相手が詐欺師でないことを祈るしかないフリマサイトなど、怖くて利用できない。さすがのメルカリも今後は何らか詐欺対策を強化していかざるをえないのではないかと言われている。
このように、クレームに対し窓口が舐めた対応をしたことでSNSに書かれ大ごとになるという炎上が昨今増えている。
もはや個人の小さき声なら無視して大丈夫という時代は終わった。むしろノーモーションでSNSに晒す前に窓口に問い合わせてくれたことを感謝し、声が小さいうちに対応すべきだろう。