Twitterはガンジス川である。毎日クソと死体が流れてくるが、その中に有益情報が混じっている場合もある。

しかし、Twitterに流れてくる医療情報を鵜呑みにするというのは、道端に落ちている謎の錠剤を水なしで飲むのに近い。

それが、今まさに必要としているロキソニソだったということもあるが、そうでなかった時のリスクがでかすぎる。

医療情報など、健康や命に関わる情報はネットではなく専門機関を尋ねるのが身のためだ。Twitterは「腕を曲げて間接部分の肉を指で寄せるとケツに見える」など、もっとどうでも良い情報を集めるところである。

これなら「皮膚がたるみすぎていて割れ目が4つあるケツになった」など、情報通りにいかなかったとしても大した被害にはならない。

全員がその程度の情報収集で満足しておけばよいと思うのだが、人間は欲深いため「もう少し役に立つ情報が知りたい」と、エンタメ情報や美容情報、そして料理のレシピなどをSNSから拾ってきてしまう場合がある。

確かに料理レシピなら、医療情報と違い、専門家でなくとも「まずどこのご家庭の冷蔵庫にもある青酸化合物を用意します」と言い出した時点で異変に気づく。少なくとも材料が食べ物であれば、不味くても食べ物ができるはずだ。

ただ、油断は禁物である。元が食べ物なのに調理によってポイズンが完成する、錬金術レシピもこの世には存在する。

ありがちなのは、ナチュラルやオーガニックレシピという名目で、普通にカビや腐敗物の作り方を教えてくれるパターンだ。

これは発信している側も悪意がなく、本気でそれが健康に良いと信じており、注意喚起をしても「添加物に脳と心を毒された奴の発想」ということになってしまうため、結局何が正しいのかわからないままになりがちだ。

大人であれば、多少腐ったものを食ってもしばらく便所に住むだけで済むが、乳幼児や老の口に入る物のレシピは慎重になった方がいいだろう。

最近そんな「危険なネットレシピ」がまた流布され、関係者がもう何回目かもわからない注意喚起をする羽目になったそうだ。

「注意書きにないからセーフ」の暴論、アイラップ炊飯レシピで爆発の恐れ

問題となったのは「アイラップを炊く」レシピである。

いくら火を通してもラップを食ったら腹を壊すに決まっているのだが、正確には「袋型のラップに食材を入れ炊飯器で米と一緒に炊く」調理法だ。

そのレシピにどんな危険性があるかというと「爆発」する恐れがあるそうだ。

念のために言うが、食った人間が爆発四散する料理ができる北斗神拳レシピというわけではなく、調理段階で炊飯器の蒸気口をアイラップがふさぎ、爆発の恐れがある、ということだ。

そんなこと言われなくてもわかっている、と思うかもしれないが、そんなことを言わないとわからない連中が多すぎて、アイラップの注意書きがオタクのお気持ちのように長くなりつつあるらしい。

実際、アイラップを炊くレシピを紹介したユーチューバーの中には「そんなこと注意書きに書いていない」と開き直る者もいたようだ。

「注意書きに書いていなかった」という理由で裁判を起こし勝ってしまう悪い欧米式が日本にも広まりつつあるのかもしれない。

「尻に入れないでください」をはじめ、あらゆるやってはいけないことを注意書きの中に書こうと思ったら「注意書きは別途ダウンロードしてください」になってしまうし、そもそも危険な使い方をする人間は注意書きを最初から読んでいないため無意味だったりする。

そしてメーカーが想定していない「やってはいけないこと」を思いつく逆天才が必ず現れるためキリがないのだ。

よって、メーカーが想定している使い方以外は間違っていると考えた方が無難である。電マもマッサージ以外に使う時は爆発の覚悟を持って使って欲しい。

しかし、アイラップの炊飯器調理はメーカーが何度目だと嘆くレベルで定期的にネットで広まるようである。アイラップに限らず、炊飯器を使った調理というのはバズりやすい傾向があるようだ。

まず、青酸化合物に比べれば「炊飯器」はどこの家庭にもあるので真似がしやすい。そして現代人は忙しいので、できるだけ「時短」をしたいと考えている。

よって、米を炊くついでにおかずも作れるという、炊飯器レシピは受け入れられやすいのだろう。

しかしここまで人々が炊飯と同時におかずを作りたがっているのなら、すでに正規の同時調理炊飯器も存在するのではないかと思ったが、やはりすでに作られているようである。

値段は有名なもので2万円程度と炊飯器にしては高いかもしれないが、炊飯器を爆破させるよりはコスパがいいと思われる。

だがそれよりも「アイラップを炊いても爆発しない炊飯器」を作った方が早い。人間は何度言っても理解できないので、家電の方に頑張ってもらうしかないのだ。