6月半ばに新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)が厚生労働省からリリースされたことを覚えているだろうか。

配信から一か月以上経って、ダウンロード数は全国民の10%にも満たないという「他のことに金を使って欲しい」という国民の皆さま方の強い意思を感じる結果になっているため、COCOAがどういうアプリなのかも知らない人が多いと思う。

まず、COCOAが機能するには、接触した人間同士がお互いにCOCOAをスマホにインストールしていなければならず、さらにBluetoothを起動している必要があるそうだ。

この時点でもう運命レベルの出会いなのである。小学生だったら「お前ら結婚しちゃえよ」と囃し立ててしまうかもしれない。

奇跡的にCOCOAを持っていてBluetoothを起動させている者同士がミートし15分以上接触した場合、お互いのスマホに「接触情報」が記録されるが、その時点ではそれが誰であるかなどは特定できないようになっている。

そして、コロナ感染が発覚した場合、保健所から発行される処理番号を感染者本人がCOCOAに入力することで、感染者と接触した者に通知がいくという仕組みになっている。

つまり感染者が「コロナに罹りました」と自己申告しない限りは意味がないのだ。

真実はどうあれ、ネットではコロナ感染者が迫害を受けているというニュースが毎日流れてくる。そんな情況の中自ら「罹っちゃった」というのはなかなか度胸がいる。

一応感染者が特定されないような仕組みにしてはいるのだが、逆に「情況からしてあいつに違いない」という憶測や疑心暗鬼を呼ぶ恐れがある。やはり自身の感染情報をみずから流すというのは、ゴールデンカムイの杉本のように己の家を焼いて二年ぐらい出奔する覚悟がなければ難しい。

だが逆に、本人の意志とは関係なく、問答無用で感染者の情報が登録され流れて来るアプリだったらもっと大ごとになっていただろう。プライバシー保護、そして感染者の身の安全を考えれば、このぐらいが限界だったのだとは思う。

ところで、ストーカーのGPS利用が無罪になるって本当?

実は本題はここからなのだが、つい最近、「GPSを無断で取りつけ相手の位置情報を知るのはストーカー規制法の『見張り行為』にあたるか」という二件の事件に対する裁判が行われ、「見張りにはあたらない」という判決が出たそうだ。

ただし、いずれの事件も「GPSを取り付ける際に見張り行為があった」として完全に無罪になったわけではないようだが、今のところ無断でGPSを取りつけ相手の位置情報を知るだけなら、少なくとも「見張り行為」にあたる罪にならないということである。

確かにこれを罪にしてしまうと、認知症の人にGPSを取り付けるのも罪になるのかなど、話が複雑になってしまうのだが、ストーカー行為のためのGPS取り付けには何かしら規制が必要なのではないだろうか。

  • 「今」いるところをつぶやかないとか、SNSテクが求められる昨今…。

    「今」いるところをつぶやかないとか、SNSテクが求められる昨今…。

だがそれ以前に、ストーカー行為規制法があるのは知っているが、何がストーカー行為に当たるか正確に理解している人も少ないのではないかと思う。

おそらく、自分は絶対そんなことはしないと思っている人が大半だからだとは思うが、ネット上での誹謗中傷が一向になくならないのも、それが罪になると理解していないからだと思われる。

どれだけ暑くても、外に全裸の人間がほとんどいないのは、みんなそれが犯罪だと知っているからだ。知らなければ常時10人ぐらいはいるはずである。

ストーカー行為も、それが犯罪であると知らなければ、やってしまう恐れは誰にでも十分あるのだ。

ストーカー行為は主に「つきまとい・待ち伏せ・押し掛け・うろつき等」「監視していると告げる行為」「面会や交際の要求」「乱暴な言動」「無言電話、拒否後の連続した電話・ファクシミリ・電子メール・SNS等」の五つになる。

どれも1歩間違えたらやってしまいかねないのではないだろうか。

「良かれと思ってポリス沙汰」という言葉もあるように、良かれと思って、元交際相手や意中の相手の家のドアノブに毎日スポドリとかをかけておくような行為も、相手が恐怖を感じ通報したら十分ストーカー行為になってしまうし、ごんぎつねの世界観だったら射殺されている。

ごんぎつねであれば、相手は「お前だったのか…」と後悔し、読者は号泣だが、人間だったらそうはいかない。ただのストーカー野郎と言われるだけだし、国語の教科書にも載らない、防犯ガイドブックに載るのがせいぜいだ。

このようにストーカー行為というのは本人が「嫌がらせ」と思っていないケースも多いため、ますます自分が犯罪行為をしているという自覚がなくなってしまうのだ。

オタクがキャラにハマるとまず何はなくともキャラの身長・体重・誕生日・血液型など「プロフィール」を調べ、心臓に焼き付けるように、好意は「相手のことを知りたい」という気持ちに直結する。

それがエスカレートして「つきまとい」に発展したり、これだけあなたのことを理解しているとわかってほしくて「監視していると告げる行為」になってしまったりするのだ。

「愛情の裏返しは憎しみではなく無関心」という、マザー・テレサの言葉と見せかけて結局誰が言ったのか判然としない言葉がある。つまり、愛情による他者への異常な興味は、憎しみより性質が悪いという事だ。

先述の通り、ストーカー行為というのは無意識に行われることが多いため、自分は絶対そんなことはしないなどとは思わずに、常に自身の行動が法に触れていないか疑うぐらいの方が自分のためにも相手のためにも良い。

ちなみに二次元キャラの良いところは「淫行やクスリで捕まらない」そして「こちらを訴えてこない」という点である。

どれだけ相手の事を調べ上げても罪に問われない二次元キャラはやはり最高だ。