電気炊飯器が普及して、消えた物がある。今からさかのぼること50年。当時のご飯には「おこげ」があったのだ。もっと昔には、かまどに薪をくべて炊事する時代があった。先日、私が夕食の支度をしていると、娘は私に言った。
「おばあちゃん家のようなおこげのご飯が食べたい」
実は、姑の家ではおこげができる炊飯器を使っている。どうやら娘は姑宅で食べたおこげの美味しさにはまってしまったようである。

最近、食育について考えさせられる機会が多くなった。2005年に食育基本法が成立したこともあって、食育に力を入れる学校が増えている。とはいえ、食育にはいろいろなアプローチが存在する。おはしの持ち方、栄養素の知識など、食には大切なことが沢山あるのだ。そんな中、親として伝えるべきことは何だろうか。学校と同じでは新鮮味に欠ける。家庭でできる独自のことって何だろう?

それは、食卓を楽しいものにすることではないだろうか。親子で食についておしゃべりを楽しみながら食事をいただくことって、当たり前すぎて忘れてしまいがちだ。服部栄養専門学校校長の服部幸應氏は監修した本の中で「食卓での家族間の会話は、料理の栄養素と同じくらい子どもにとって大切なもの」とおっしゃっていた。その通りだと思う。

今はスイッチひとつで当たり前のようにお米が炊ける時代だ。無洗米が出現して、米をとぐことも少なくなった。
「昔の人はかまどで炊いていたから、始めと中頃で火加減を変えなくてはいけなかったの」
食事をしながらこんな会話を子どもとするのが、私はステキだと思う。

おこげで会話を盛り上げよう

おこげが食べたいという娘の願いを叶えたいのだが、今さら家にかまどを作るわけにもいかない。そこで、私の心に留まったのが、おこげができるタイガー魔法瓶の土鍋IH炊飯ジャー「JKE-A550」。日本の食文化に触れたい人にぴったりの製品だ。おこげができるところが特長のひとつだが、それだけではない。中の鍋がその名の通り「土鍋」なのである。炊飯器の中鍋はフッ素コートが施してある軽いものをよく見かけるが、「JKE-A550」では、素焼きから仕上げまで三度も焼いたという本物の土鍋なのである。手にすると、ずっしりと重みがある。

土鍋IH炊飯ジャー 炊きたてミニ「JKE-A550」(3合炊き)

かつて、日本人はかまどで炊いたご飯をおひつに移して食べていた。「JKE-A550」では内釜がおひつになる。写真1のように、内釜を取り出し、付属の土鍋ふたをかぶせることができるのだ。さらに、付属の鍋敷きの上に置けば、雰囲気満点である。 ふたについた水蒸気が垂れ落ちて、ご飯が水っぽくならないように、つゆとり布もついている。

(写真1)土鍋にふたをつければおひつに。鍋敷きも付属品

食卓におひつを置くなら、分厚い木でできた日本風のテーブルが似合う。メニューは鍋も良いが、さんまと味噌汁の和食が良いだろう。加えて、季節野菜と高野豆腐の炊き合わせ。そして漬物があったら最高だ。と想像したところで、今は春。どこにさんまがあるのだ? ということで、おかずはいつもと変わらないメニューになってしまうが、まあよしとしよう。

「おこげがおいしい~」と娘も大満足だ

炊き上がって炊飯ジャーのふたを開けると、おこげの香ばしい匂いが漂う。
「おこげいっぱいちょうだいね~」
その時点で、娘は大喜び。親に似て単純である。

おこげを多くしたいのなら、「火かげん」を強に設定し、水は気持ち少なめのほうが良いようだ。水を多めにして炊いたら、おこげは少なめに仕上がった。
「昔の人はね……」
と説明を始める私の横で、おこげをほお張り話を聞かない娘。会話がかみ合わなくても良いのである。家族で食卓を囲んで会話をはぐくむ、そんな楽しい食育が大切なのである。

イラスト:YO-CO