既報のように、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は1月15日、イプシロンロケット3号機の打ち上げ延期を決めた。この日の内之浦は快晴で、コートが不要なほどの暖かさだったが、打ち上げ予定日だった17日朝にかけて天候の悪化が予想されるため、18日以降に延期する。

  • 1月15日の内之浦宇宙空間観測所

    1月15日の内之浦宇宙空間観測所。絶好の打ち上げ日和だった

  • 内之浦の週間天気予報

    内之浦の週間天気予報。ピンポイントで17日朝だけが悪い…

同日開催されたプレス向けブリーフィングには、イプシロンロケットの井元隆行プロジェクトマネージャが出席、状況について説明した。まず機体の状態は、すべて健全。先週、打ち上げ当日のリハーサル作業が実施されているが、結果は良好だったという。

  • イプシロンロケットの井元隆行プロジェクトマネージャ

    イプシロンロケットの井元隆行プロジェクトマネージャ

今回の延期の理由は天候だ。ロケットの打ち上げにはさまざまな制約条件があって、そのすべてを満たしていないと打ち上げることができない。今回、特に問題となったのは雷。ちょうど打ち上げ時間帯に発雷の可能性があり、上空の雲に氷結層の発生も予想された。氷結層が存在すると、ロケットが通過するときに雷でダメージを受ける恐れがある。

  • イプシロンロケット3号機の打ち上げ制約条件

    イプシロンロケット3号機の打ち上げ制約条件。雨や風の条件もある

17日午後から天候は回復する見込みのため、無理はせず、1日延期して万全を期した。なお新たな打ち上げ日は「18日以降」と表現されているが、正確な日時については、打ち上げの2日前に公表される予定だ。なので、もし18日の打ち上げであれば、16日午後に発表されることになるだろう。

氷結層は冬期に発生しやすく、天候の問題であれば延期も仕方ない。仕切り直しとなったが、井元プロマネは、「これまでと変わらず、大切な衛星の打ち上げを成功させるために、全力を尽くす」と意気込みを述べた。

  • 打ち上げ当日のスケジュール

    打ち上げ当日のスケジュール。ランチャー旋回で機体が出るのは3時間前

  • 現在の射点の様子

    現在の射点の様子。ロケットはまだ整備棟の内部にあり、外からは見えない

なお、イプシロンロケット3号機の延期はこれが2回目。当初、2017年11月12日に打ち上げる予定だったが、射場作業中に電気系統に不適合が見つかり、大幅に延期されていた。このとき、問題が起きたのは、第2段に搭載したデータ収集装置(DAU-E)。内部の部品がショートしていることが見つかったのだ。

その後の調査で、破損の原因は、静電気であることが分かった。機体の点検に使う中継ケーブルを引き回した際、床との摩擦で静電気が帯電。除電ブラシを使って静電気を除去したつもりだったが、効果が十分ではなく、ケーブルを接続したときに放電が起き、部品を損傷したと見られている。

対策として、影響を受けた可能性のあるボードをすべて交換。試験で正常に機能することを確認した。同時に、より確実に静電気を除去できるやり方を確認し、作業手順として定めたという。

  • 前回の延期の概要

    前回の延期の概要。静電気が機器内部の部品を壊していた