2019年10月5日と6日、ベルサール渋谷ガーデンにて、格闘技とeスポーツの融合イベント「ONE マーシャルアーツ・ファンフェス」が開催されました。主催者のOne Championshipは、シンガポールを中心に東南アジア各地でマーシャルアーツなどの格闘技イベントを開催している団体。2019年3月に日本に初上陸し、10月13日には日本での2回目のイベントが開催されます。今回はそれに先立ち、格闘技とeスポーツを組み合わせた、ファンフェスを開催したというわけです。

ファンフェス会場に入ると、まず大きなリングが目に飛び込んできます。その奥に巨大なディスプレイ、そしていくつもの対戦台がズラリ。バチバチとアーケードコントローラーのボタンを打ち込む音が聞こえたかと思えば、ドスドスと拳の交わる音が響く、リアルとデジタルが同居する空間でした。

  • ゲームをプレイするエリアのすぐ横にリングが。空き時間の対戦台では、来場者同士が自由に対戦をしていました

チームによる『鉄拳』国際トーナメント、制したのは?

5日のeスポーツイベントでは『鉄拳7』の3人1組のチームによる大会が実施されました。まずは招待された3チームによる三つ巴戦と、ワンデイトーナメントである「コミュニティトーナメント」を同時に開催。そのあとにトーナメント優勝チームと招待チームの4チームによる変則トーナメント「トーキョー・インビテーショナル」が開催されました。

  • コミュニティトーナメントは、仲間とチームを組んで参加する3on3の大会。優勝チームはトーキョー・インビテーショナルのセミファイナル出場権が与えられます。参加者のなかには、有名プレイヤーのたぬかな選手の姿も

  • プロゲーミングチームの「Tema YAMASA」YUU選手(写真左)NOBI選手(写真中)タケ。選手(写真右)もコミュニティトーナメントに参加

招待されたチームは、開催国である日本のトッププレイヤーを集結した「チーム・ジャパン」、鉄拳では“修羅の国”と呼ばれるほど強豪がそろっている「チーム・コリア」、それ以外の国と地域が手を組んだ「チーム・オールスター」の3チームです。

コミュニティトーナメントは、申請すれば誰でも参加できるオープン大会ながら、プロライセンス保持者のチームや韓国から来たチームなど、強豪が多数。招待チームを脅かすには十分な実力者が集いました。

  • 招待チーム同士が戦うリーグ戦。プロ選手の技量を目の前で観戦できます

  • 約60ものチームが参加。会場は大賑わいです

コミュニティトーナメントで優勝したのは、プロゲーマーの3人、破壊王選手、加齢選手、ちりちり選手を擁する「チーム・破壊王」。三つ巴戦では、1位がチーム・コリア、2位がチーム・ジャパン、3位がチーム・オールスターに決まります。

そして、決勝トーナメント1回戦は、チーム・破壊王とチーム・オールスターです。ここでは、チーム・破壊王が先制するも、最後はオールスターが勝利し、招待チームの意地を見せました。

  • コミュニティトーナメントを勝ち抜き、トーキョー・インビテーショナルのセミファイナル出場権を獲得したチーム・破壊王。左からちりちり選手、加齢選手、破壊王選手

2回戦はチーム・オールスターとチーム・ジャパン。じょうたろう。選手の活躍により、チーム・ジャパンが勝利しました。

そして、迎えた決勝戦。三つ巴戦で1位のチーム・コリアと2位チーム・ジャパンの戦いです。先手を取り、チーム・コリアの大将ULSANを早々に引きずり出したチーム・ジャパンでしたが、ここからULSANが怒涛の3連勝。チーム・コリアが優勝しました。

  • 優勝したのはチーム・コリア。優勝賞金99万円を獲得しました。3on3らしく、3人で割れる金額です。ちなみに2~4位も3で割れる賞金でした

また、6日には『ストリートファイターV アーケードエディション(ストV)』の大会が行われました。こちらも3on3のチーム戦。HumanBomb選手、Xiao Hai選手、Xian選手の「チーム・オールスターズ」、GamerBee選手、Oil King選手、RB選手の「チーム・タイワン」、Verloren選手、NL選手、SigurRos選手の「チーム・コリア」が招待チームとして決まっており、プロゲーマーのボンちゃん選手と当日の「オープンコミュニティトーナメント」で勝ち上がった2人の選手を加えた「チーム・ボンちゃん」の計4チームによる、ダブルイリミネーショントーナメントです。

当日のコミュニティトーナメントを勝ち上がり、「チーム・ボンちゃん」のメンバーになったのは、ボンちゃん選手と同じレッドブル・アスリートのガチくん選手と、中国最強のユリアン使いとしても名高いQiuqiu選手。トーナメントでは「チーム・ボンちゃん」がストレート勝ちを続けてグランドファイナルまで駆け上がり、ルーザーズで上がってきたチームコリアと接戦の末、優勝を果たしました。

  • 6日には『ストV』のトーナメントが開催されました

表情が伝わる演出に観客もエキサイティング

対戦格闘ゲームではあまり馴染みのない3on3のチーム戦。また、レギュレーションとしても変則的なトーナメントでしたが、その分、展開も速く、会場は大いに盛り上がっていました。

適度にインターバルがあり、その間には「観戦者がプレゼントをもらえるクイズコーナー」を開催。また、同じ会場に設営されていたリングでは、マーシャルアーツや新空手のエキシビションが行われていたので、eスポーツ目当ての人は合間に格闘技を、格闘技目当ての人は合間にeスポーツを観戦できるおいしいイベントだったのではないでしょうか。

  • リングでは白熱した試合が続いていました。初めて格闘技を生で観た人は、その迫力に圧倒されること間違いなし

  • eスポーツイベントのインターバルで行われたプレゼント企画。クイズに正解すると景品がもらえる内容でしたが、MCのはからいで急きょコスプレ大会を開催。見事、ジュリア・チャンのコスプレをしたまどかちゃんが、アーケードスティックのPanthera EVOを獲得しました。この年にして『鉄拳』勢で、使用キャラはラッキークロエとのこと

  • 有名選手やラウンドガールにサインをしてもらい、一緒に写真が撮れる「ミート&グリートコーナー」もあり、多くの人が列を作っていました。まさにファンフェスといった雰囲気

リングはほぼ立ち見での観戦でしたが、それゆえかなり近距離で格闘技の試合を観られました。本番のONE Championshipでもなかなか経験できない距離から迫力ある格闘シーンを目の当たりにできたのは、eスポーツ目当てで来場した人にとってもいい経験になったでしょう。

  • リングは基本的に立ち見での観戦。しかし、これだけ近いと迫力満点!

今回のeスポーツの大会で最も驚いたのは、舞台装置でした。対戦ステージにゲーム画面を大きく映し出すディスプレイが設置されているのは、従来の対戦格闘ゲーム大会の様相でしたが、その両脇に2つの大きな縦型ディスプレイが設置されていたのはあまり見ない演出です。ここには選手の顔がアップで表示されるようになっており、試合中の選手の表情が観客にも伝わるようになっていました。

勝利したとき、敗北したとき、ミスをしたとき、相手から手痛いダメージを受けたときなど、その時々に選手の豊かな表情が映し出されるのは、感情を共有できるいい手段だと感じました。eスポーツは選手に近い場所で観戦できることが多いですが、やはり大きく映らないと細かい表情までは感じ取れないことが、再確認できたともいえます。そのあたりは、ヒーローの物語を伝えることに重きを置くONEならではの演出だったのではないでしょうか。

  • 選手の感情がしっかりと伝わります

さすがは格闘技イベントの興行を99回実施しているだけに、見せ方を知っています。また、ONE日本法人代表の秦氏が話していたように、eスポーツと格闘技の融合もできていたと感じました。eスポーツファンが格闘技を観る機会になっており、格闘技ファンがeスポーツを観る機会にもなっていました。これまでどちらか一方しか興味のなかった人でも、もう片方のジャンルに興味を持った人は少なくないでしょう。

今回はファンフェスということで、本格的にeスポーツ興行をスタートする前のお披露目的な意味合いがあったと思いますが、これから本格始動する「ONE eスポーツ」にも期待が持てます。何にせよ、大会が増え、観る機会が増え、選手にとっては稼ぐチャンスが増えることは喜ばしいことではないでしょうか。今後もONEの活動に注目していきたいところです。

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