10月5日と6日に、茨城県つくば市のつくば国際会議場にて、いきいき茨城ゆめ国体・いきいき茨城ゆめ大会の文化プログラムであるeスポーツ大会「全国都道府県対抗eスポーツ選手権」が開催されました。

この大会では『グランツーリスモSPORT』『ぷよぷよeスポーツ』『ウイニングイレブン 2020』の3タイトルにおける、全国各都道府県の代表が集まり、日本一をかけて争います。5日には予選、6日には決勝大会が行われました。本稿では、6日の決勝大会の様子をお伝えします。

『グランツーリスモSPORT』で下馬評が高かった神奈川県

6日は、まず『グランツーリスモSPORT』の少年の部(6歳~18歳)からスタート。決勝にコマを進めたのは、レース予選通過者8人とタイムトライアル予選通過者4人の計12人。15~18歳がボリュームゾーンとなっているなか、茨城県A代表の小林選手は13歳での決勝進出です。車種はなんと全選手がランボルギーニ ウラカンを選択。車の性能差がまったくないレースになりました。なお、レギュレーションは、タイヤの摩耗倍率や燃料消費倍率などが「なし」ルールです。

  • 決勝戦は大ホールで行われました

  • 大ホールは1,200人以上が収容できるすり鉢状の客席です。ゆったりと観戦できました

決勝のグリッド順を決めるタイムトライアルでは、神奈川県代表の緒方選手が最速タイムを叩きだし、そのあとに愛知県代表の水野選手、福岡県代表の龍選手が続きました。ただ、車種が同じうえに、決勝に残るほどの猛者たちです。12位までのタイム差は1秒以内という接戦でした。

しかし、いざ決勝ラウンドがはじまると、予選1位の緒方選手が最初のコーナーでコースアウト。タイムトライアル2位の水野選手がトップを爆走します。2位に位置した龍選手が猛追するも届かず、愛知県代表の水野選手が優勝しました。

  • 試合の様子はストリーミングでも配信。実況にモータースポーツ実況でお馴染みの辻野ヒロシアナウンサー、解説にポリフォニー・デジタルのYAM氏が起用されていました

次は『グランツーリスモSPORT』の一般の部(18歳以上)です。一般の部では日本が誇る鈴鹿サーキットを10周。少年の部が1人のプレイだったのに対して、一般の部はペアでの参戦となり、最低でも1人3周以上走行しなくてはなりません。

また、燃料消費倍率が3倍、タイヤ摩耗倍率が10倍のルールのため、周回するごとにコンディションは大きく変化。それに対応する必要も出てきます。さらに、タイヤは「ハード」と「ミディアム」から選択。走るにつれて性能は落ちやすいが序盤はバツグンのグリップ力を発揮するミディアム、ミディアムほどのグリップ力はないものの周回を重ねても安定しているハードのどちらにするか、戦略も重要になってきます。

タイムトライアル予選は、下馬評の高かった神奈川県チームが2位に0.135秒差をつけて1位を獲得。そのあとを、兵庫、愛知、栃木と続きます。愛知県チームや栃木県チームの選手は、『グランツーリスモSPORT』の世界大会でも活躍しており、優勝候補の一角といえるでしょう。

決勝レースで、多くのチームが選んだ車種は日産GTR。そんななか、静岡県チームがフォードGTを、香川県チームがアウディR8を選び、気を吐いてしました。優勝候補である愛知県チームが勝ちにこだわる車種を選んだのはわかりますが、ここはトヨタ車を選んで欲しかったですね。

レースは序盤、2週目に神奈川県チームがシケインをショートカットするようなコース取りをしてしまい、一気に順位を落としました。そのあと、トップに立った兵庫県チームが順調に周回を重ねた7週目、スプーンカーブで2位の栃木県チームが兵庫県チームを追い抜くと、3位の愛知県チームも兵庫県チームを抜き去っていきます。さらに大阪府チームにも抜かされた兵庫県は一気に4位に転落。その後は、このままの順位を保ったままチェッカーフラッグを受け、栃木県チームが優勝しました。

  • 一般の部で優勝した栃木県チーム

  • 少年の部で優勝した水野航希選手

  • 表彰式には、『グランツーリスモSPORT』を手がけるポリフォニー・デジタル 代表取締役の山内一典氏も登場

多くのプロが県を背負って戦った『ぷよぷよ』

次は『ぷよぷよeスポーツ』の一般の部(12歳以上)に向かいました。この部門は、もっとも多くのプロライセンス保持者が出場しています。

茨城県代表のざいろ選手、埼玉県代表のlive選手、岐阜県代表のとりぱん選手、神奈川県代表のぴぽにあ選手、千葉県代表のレイン選手、大阪代表のマッキー選手、奈良県代表のやなせ選手と、決勝ラウンドのベスト16中7名がプロ選手のうえ、ベスト4まで残ったのは全員がプロ選手でした。誰が優勝してもおかしくない状態で、マッキー選手が猛者を破り初代国体チャンピオンに輝きました。

  • 『ぷよぷよeスポーツ』は、予選から決勝まで多目的ホールで行われました

  • MCを担当したのは、椿彩奈さん(写真左)と橘ゆりかさん(写真右)。プレイヤー解説として、プロ選手が解説に加わりました。この試合での解説はあめみやたいよう選手

小学生の部の決勝では、北海道、東北、北信越、関東の東ブロックリーグから勝ち上がった北海道ブロック代表のかぴーくん選手と東海、近畿、中国・四国、九州・沖縄の西ブロックリーグから勝ち上がった九州・沖縄ブロック代表のこいし♪選手の対戦。かぴーくん選手は、プロ顔負けの13連鎖や速攻など多彩な攻撃を見せますが、冷静に対応したこいし♪選手が小学生の部で優勝しました。

試合途中には、プロ選手のあめみやたいよう選手と小学生によるエキシビションマッチを行ったり、大会終了後には選手同士の交流会や対戦会があったりと、試合以外にも楽しみも満載。参加者だけでなく観戦者も、全国から訪れた甲斐があったのではないでしょうか。

  • わが子の勇姿を見守るお母さんやお父さんの姿も

  • 決勝戦終了後に握手をするマッキー選手(写真左)とぴぽにあ選手(写真右)。全力を尽くしたぴぽにあ選手は思わず涙を見せます

  • 小学生の部の優勝はこいし♪選手

茨城同士の戦いになったウイイレ。そして、総合優勝は……?

最後に決勝が行われたのは『ウイニングイレブン 2020』です。大会ルールは3on3で試合時間は10分、延長、PKあり。まずはオープンの部の準決勝から行われました。

ベスト4に残ったのは、千葉県チーム、愛知県チーム、茨城県第一チーム、茨城県第二チームの4チーム。準決勝は千葉県対茨城県第一、愛知県対茨城県第二の組み合わせで、結果は、なんと両茨城勢の勝利。決勝が茨城ダービーに決まります。

一般の決勝戦の前には、少年の部の決勝戦が行われ、長崎県チームと青森県チームが対戦。長崎県チームはメンバーぎりぎりの3人で決勝まで勝ち抜け、青森県チームはメンバー制限一杯の5人のメンバーで戦ってきました。2点を選手した青森県チームに対して後半に1点を返し、巻き返しをはかる長崎県チーム。しかし、青森県チームがダメ押しの追加点を取り、勝負が決しました。

  • 『ウイニングイレブン 2020』の舞台は、再び大ホールに

  • 実況はラジオDJのMEGURU氏、解説はコナミデジタルエンタテインメントの梅津慧氏、ゲスト解説に元サッカー日本代表の北澤豪氏が起用されていました

  • 少年の部を制したのは、青森県チーム

そして、オープンの部決勝の茨城ダービー。茨城県予選では、第二が第一に敗北しており、雪辱を果たす機会となりました。試合は序盤から第一がペースを握り、後半60分までに3-0のスコアで大きく優位を保ちます。

しかし、ここから第二の怒濤の反撃が始まり、終わってみれば大逆転の3-4。劇的な試合を制したのは県予選のリベンジをした茨城県第二でした。茨城県第二には、アジア競技大会に出場し、金メダリストとなった相原翼選手がおり、アジア競技大会と国体の2冠となりました。

  • 茨城ダービーでは、茨城県第二チームが予選の雪辱を果たしました

最後の閉会式では、各部門の表彰が行われました。また、全国都道府県対抗eスポーツ選手権ということもあり、全試合の結果によるポイント配分で全国1位の県が決まります。

総合3位は『ウイニングイレブン 2020』少年の部3位と『ぷよぷよeスポーツ』一般の部2位を獲得した神奈川県、2位は『ウイニングイレブン 2020』オープンの部3位、『グランツーリスモSPORT』少年の部1位、一般の部2位、『ぷよぷよeスポーツ』小学生の部3位の愛知県、そして1位は『ウイニングイレブン 2020』少年の部3位、オープンの部1位、2位を獲得した茨城県でした。

しかし、茨城県は2チーム出場しているため、その合計点となるのであれば、この結果は果たして正しい結果といえるのか疑問が残る総合優勝でした。普通に考えれば、第一と第二は別チーム扱いで計算すべきだと思うので、実質1位は愛知県なのではないでしょうか。次回も国体でeスポーツを開催するのであれば、このあたりは改善したほうがいいかもしれません。

国体は、日本で開催されるスポーツイベントのなかでは、それほど注目度が高いものではありませんが、今回、文化プログラムのeスポーツイベントに出場し、好成績を残した選手は「勝ててよかった」「参加できてよかった」と口々に言っていました。ともすれば世界選手権やプロ大会での勝利よりもうれしいとの声も聞こえてきました。

  • メダルを受け取る『ぷよぷよeスポーツ』小学生の部の面々

  • 茨城県知事、大井川和彦氏。初めての国体でのeスポーツの成功に喜びを隠せないようでした

eスポーツは「プロ」としての側面だけでなく、こういった名誉のため、全国の人たちと同じ舞台に立つ大会も重要だと改めて思い知らされました。

注目度や配信の視聴者数的に、興行として成功したかの判断はつきかねますが、確実にeスポーツにとっていい歴史が刻めたのではないでしょうか。今後は競技数も増え、多くの人が全国一位を目指せる大会になってほしいところです。

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