HHKBにポインティングデバイスがあったら──という夢が叶う

原(PC部)───ハッピーハッキングキーボード新製品、「HHKB Studio」出ましたね。X(旧Twitter)での予告は多くの人の目に触れたようで、話題になってるのを見ました。あまり隠す意図もなかったのか、仕様は推測しやすい感じで、予想が当たっていた人も多かったような気がします。

細田(モバイル部)───「HHKBにトラックポイントがついたら」ってifは前々からよく語られがちで、熱烈なファンの願望が叶った……と思いきや予想と違った部分もあって、SNSではだいぶ話題になってましたね。

  • 「HHKB Studio」について話します

原───いきなり存在価値について聞いてみたいんですが、デスクでゆったりマウスが使えるのが別売りキーボードなのに、トラックポイントって割とほしくなるものなんですか?

細田───私は自宅の作業環境は小型デスクトップPCに、ThinkPad Track Point Keyboard IIとロジクールのM575(トラックボール)、会社の作業環境はHHKBと同じくM575なので、まさに「HHKBにトラックポイントがついたらいいな」と思っていた側です。

原───なんと、僕はスペースさえあればノートPCでも必ずマウス派でした。やはりほしい人もいるんですね。

  • 一部のThinkPad用も流用して装着できます

細田───私の場合はトラックポイントをメインのポインティングデバイスとしては使っていなくて、トラックボール(マウス)をメインにしつつ、左手側でもちょっとマウス操作ができる補助デバイスがあったらうれしいなという程度の扱いですね。もちろん、ガンガン持ち運んで使っている人ならまた話が違うと思います。

原───なるほど……。こんな身近にもトラックポイント搭載キーボード愛用者がいるということは、もしかして潜在的にはかなりいるんでしょうか。ノートPCでいうとLenovoでしか見ない仕様だし、HHKBのこれはニッチ戦略の一種かと思っていたのですが、別にニッチでもなかったのかも……。

メカニカル採用はさすがに予見できなかった

原───で、新要素はトラックポイントにとどまらずスイッチにもありました。なんとHHKBの代名詞でもあった(?)静電容量無接点スイッチではなく、まさかのメカニカルスイッチが採用されています。これはサプライズだったのでは。

細田───いや~、メカニカル化はさすがに予想できなかったし、賛否も分かれてますよね。

  • スイッチの様子。オリジナルカスタマイズのKailh社製

原───個人的にはメカニカルスイッチ全然好きなんですけど、やっぱりヒエラルキー的には静電容量無接点のほうがなんとなく“上”っぽい感じありますよね。

細田───静電容量無接点方式のメリットは、耐久性だったりチャタリングの起きにくさだったり色々あって、HHKB自体の「一生モノの高級な道具」というあり方と相性は良かったと思います。ただ、ほとんどのユーザーは実際問題、静電容量じゃないと困る何かがあるというよりは打鍵感の良さや特別感に魅力を感じているはずで、こだわりのメカニカルスイッチで同等以上の価値を出せるならそんなに拒絶するものでもないのかなと。

原───穏健派ですね。僕が今使っているキーボードはKailh「Midnight LINEAR」軸なんですけど、これがかなり素晴らしくて、ルブ(潤滑材塗布)さえしてあれば割となんでもプレミアムな打鍵感になる気がしています。なのでそんなにメカニカルスイッチを嫌がらなくても……というのは同意です。

細田───あと、割とこれまでスルーされてきた点なんだけど、静電容量って電池消費的な意味ではワイヤレスとあんまり相性が良くないというデメリットもある。

原───それは知りませんでした。僕のキーボードは1,600万色で輝いているので、電池消費を気にしたことはなかったですね……。軸といえば、スイッチそのもののホットスワップに対応するうえ、キーキャップもちゃんとCherry MX互換で好きなものに付け替えられるのがとてもよさそう。

  • スイッチがハンダ付けされておらず、ポンと引っこ抜ける仕様をキーボードにおけるホットスワップと呼びます

細田───ホットスワップ対応のおかげで、元々のHHKBユーザーよりむしろ自作キーボード界隈から好意的に受け取られている気がしましたね。キーキャップもCherry MX互換のが使える仕様だから色々遊べそう。

原───トラックポイント周りのG、H、Bキーは切ったり削ったりしないといけないのかな。

細田───後日、純正キーキャップの3Dデータが提供されるらしいので、それを使って3Dプリンターで解決する手もありますね。

ジェスチャー機能はクリエイター向けなのか

原───さらにサプライズだったのは、ケース外装四隅(?)にジェスチャー機能を搭載してきた点ですよ。独自ユーティリティからスクロール等いろんな機能が割り当てられるみたい。あれってタッチセンサーなんですか?

細田───手前側の左右2カ所と側面、計4カ所にタッチセンサーが入っているとか。

  • 側面にタッチセンサー搭載はかなり気鋭の仕様

原───すごい……。HHKB Studioを使えばバリバリ文字入力をこなしつつ、トラックポイントでマウスカーソルをズイズイ動かし、さらに外装のセンサーでスクロールもサクサク行えるというわけですか。この辺が製品名にある「HHKB Studio」要素なのか、クリエイター向けに訴求する……ようなアピールもあったみたいです。

細田───特に、カーソルキーのない英語配列のHHKBを使っている人は助かりそうですね(私は日本語配列ユーザーですが)。

原───HHKBヘビーユーザーは誤操作防止で無効化とか悲しいことを言わずに、有効化したままモリモリ使ってHHKB StudioなしではPC操作できない体になってほしいところ。

44,000円は高い? 初回ロットは大好評で完売済み

原───気になる価格は……44,000円でしたっけ。なかなかしますね。

細田───そうですね。既存の最上位モデル(HYBRID Type-S)が36,850円なので、まあトラックポイントがついたらそれぐらいはするかなと思ってました。

原───もしこのモデルに静電容量無接点スイッチが標準搭載されていたらもっと高かった……とかそういう事情もあったりするんでしょうか。

細田───ありそうな気もするけど、ホットスワップ対応と専用品のメカニカルスイッチのほうが意外とお金かかってそうな気も。リアルフォースなんか静電容量で2万円ちょっとのモデルもありますしね。

原───やはり昨今は高付加価値路線、目新しい特徴満載で多少攻めた製品仕様ならこの価格を受け入れる余地もあるというものなのかも。今回あれこれ聞いていて、細田さんもHHKB Studioが結構”刺さってる”側なのかなと思いましたが、もし在庫があれば買っていましたか?(初期ロットは即日で予約分が完売しています)

細田───「トラックポイント付きのHHKB」自体はかなり欲しいのですが、HHKB Studioはやっぱりあくまで既存のHHKBユーザーとは別の層に向けた製品だなあというのも感じていて、正直に言えばここまで高付加価値路線であれこれついてくると置き去りにされてる印象もあります。どちらかといえば、従来路線のシンプルでストイックなHHKBのアップデートに期待したいですね。

原───キーボードとかいう十人十色でニーズが違う製品だけに、みんな思うことは違いそう。いやそれにしてもメカニカルスイッチ、トラックポイント搭載……どこかで聞いたことがある仕様だと思えば、筆者がオフィスで愛用しているキーボード「ARCHISS Quattro TKL」にもトラックポイントがあったことを思い出しました(関連記事)。メカニカルスイッチでトラックポイント搭載モデル、探せば実はいろいろありそうな。

  • ピンク軸採用で選んだだけで、全く使っていないトラックポイントを備えている「ARCHISS Quattro TKL」