星座の中に「けんびきょう座」があります。18世紀にフランスの天文学者ラカイユが、真空ポンプや望遠鏡など、科学業界の道具などをモチーフにした14星座の1つで、紀元前からあるオリオン座などととも正式な星座となっています。

この顕微鏡は、現在ではありとあらゆる場所に使われています。科学や医学、工業を支えており、新型コロナウイルスの写真もすぐさま顕微鏡で撮影されて「こいつか!」と白日の元にさらされているわけでございます。

ミクロの世界を探査する顕微鏡について、ご紹介したく思います。

顕微鏡は、ミクロの世界をググッと拡大して、見えない世界を見えるようにする道具ですな。人間が肉眼でしっかり見えるというと、0.1ミリメートルくらいが限界でしょうか。一方で、昔ながらの光学顕微鏡だと倍率が100倍とか200倍とかで、0.001ミリメートル、つまり1マイクロメートル(ミクロン)の世界が見え、さらに電子顕微鏡だと100万倍に達するものもあり、さらに1ナノメートル以上の細かい世界が見えてきます。直径が100ナノメートル(=0.1マイクロメートル)の新型コロナウイルスの写真が撮影できるのも、(電子)顕微鏡のおかげですな。

この顕微鏡は、望遠鏡とは双子の兄弟です。同じオランダの南西、フランス国境に程近い港湾都市ミデルブルフで16世記末前後にメガネ職人により発明されました。対物レンズと接眼レンズの2つのレンズを使って拡大するのも望遠鏡と同じですな。望遠鏡や双眼鏡をひっくり返して覗くと、実用的ではないですが顕微鏡になります。光学的にもまさしく双子なんでございます。

ただ、顕微鏡は、望遠鏡とちょっと違う事情がございます。まず、望遠鏡には反射望遠鏡が現在主流ですが、光学顕微鏡はレンズを使ったものが主流です。また、顕微鏡の発明の前、紀元2年頃、およそ2000年前から虫眼鏡があったのですが、望遠鏡にはそれはありません。虫眼鏡はそのまま老眼鏡であり、少し工夫すると近視補正用のメガネになります。メガネ職人が顕微鏡を発明する流れは、まあ自然と言えば自然でございますな。

ところで、顕微鏡は発明されてすぐは、それほどの倍率はかけられませんでした。進歩は望遠鏡より遅かったのでございます。ただ、50年ほどすると500倍程度の顕微鏡が作られます。オランダのデルフトにいたレーウェンフックは1674年に先祖返りするような超高倍率なレンズ1枚だけの顕微鏡を作り、水滴の中の生き物などの観察をして「微生物学」の開祖となリます。この顕微鏡というか超高性能のルーペで見えた世界は、なかなかドキドキでございます。オランダのライデンにある国立ブールハーフェ博物館「Rijksmuseum Boerhaave」にはこの顕微鏡の実物とスケッチが展示されています。

ちなみに、このレーウェンフックの顕微鏡はガラスビーズを使って比較的簡単に作ることができます。500倍の顕微鏡を数百円で作れます。検索するとあちこちに作例がありますので(たとえば、岐阜工業高専の羽渕先生のページなど)チェックしてみてください。

一方、みんなが知っている対物レンズと接眼レンズの顕微鏡は、イギリスのロバート・フックが進歩させます。ロバート・フックは顕微鏡図譜(ミクログラフィア)という本で、その成果を知らしめ、大人気になったそうでございます。確かに今見ても面白い!プロジェクトグーテンベルグのサイトでも全部見られます。顕微鏡で見える面白いものとしては、細胞があげられます。私も自分のうちほほの細胞をはじめて小学生の先生に見せてもらったときは興奮しましたなー。

さらにドイツの世界的光学メーカー、カール・ツァイス社の始祖、天才光学者エルンスト・アッベが現在に至る光学顕微鏡の完成品を作っています。これが科学実験、医療、工学などあらゆる分野で活用されているわけですな。

ところで、光学顕微鏡では、まだ見えない微細な世界があることがわかっていました。ウイルスはその最たるもので、19世紀の末に、タバコモザイク病を発症するものが、おおむね1マイクロメートルサイズの細菌を通さないパスツール・シャンベランフィルターを、そいつは通ってしまうことがわかり、優秀な光学顕微鏡で見える、1マイクロメートル前後の細菌よりも小さい病原体があることがわかったわけでございます。

その後、フィルターを通る病原体が、細胞に取りついて増殖することがわかりウイルスという名前が与えられましたが、その正体は光学顕微鏡では光の波長の関係で、原理的に0.1マイクロメートル(=100ナノメートル)未満の構造を観察できなかったため、よくわからなかったのでございます。

1931年にドイツのルスカとクノールが電子顕微鏡を発明します。これは、光の代わりに波長が1ナノメートル(=0.001マイクロメートル)程度と短い電子を使うものでございます。これによって画期的に顕微鏡は倍率を上げることが可能となり、科学者が熱望していたウイルスの姿を捉えることができるようになったわけですな。

電子顕微鏡は光学顕微鏡に比べて、複雑なものですので、なかなか手軽に使うことができません。名古屋市科学館浜松科学館横浜のはまぎんこども宇宙科学館など、一部の科学館などでは電子顕微鏡を見られる部屋が設置され、イベントが開催されています。

また、昨今ではより操作性が高い卓上電子顕微鏡が600万円程度で売られています。もう2桁落ちて欲しいところですが、科学博物館などにはぜひ置いて欲しいですなー。

著者プロフィール

東明六郎(しののめろくろう)
科学系キュレーター。
あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。