私の名前は粕田舞造(かすたまいぞう)。アンコ大好き粕田舞造。その結果、体重が20年で20kg以上アップというカスタマイズに成功する。いや失敗してる。減量カスタマイズを達成する日は来るのだろうか。

さて、少し前に定格のDDR4-3200メモリを紹介したことがあったが、今回は逆にOCメモリの使い方を紹介したい。まず、OCメモリとは何なのか。メモリには「SPD」と呼ばれる基本情報が書き込まれており、その情報をマザーボードが読み取って動作する。定格のDDR4-2666メモリをマザーボードに挿せば、SPD情報を元にマザーボードはDDR4-2666動作に設定する。

  • 各社からOCメモリは発売されている。高いクロックで動作するメモリを冷却するため、ヒートシンク付きが基本

    各社からOCメモリは発売されている。高いクロックで動作するメモリを冷却するため、ヒートシンク付きが基本

そのSPDで設定されたクロック以上で動作するものを一般的に「OCメモリ」と呼ぶ。ちなみに「OC」とは、オーバークロック(Over Clock)を略して呼んでいるものだ。例えば、DDR4-2400対応メモリチップがあったとして、それをメーカー独自の検証やチップの選別作業などによって、DDR4-2666やDDR4-3200などチップの対応クロックを超えた動作を実現しているというわけだ。

  • マザーボードはメモリのSPD情報を読み取ってメモリの動作クロックを設定する

こう書くとOCメモリは危険のように思えるが、メーカーが設定した仕様の範囲内であれば、定格のメモリと保証は変わらない。長期保証をうたう製品がほとんどだ。ただし、OCメモリは動作クロックが高いものが多く、それを実現するために電圧を高めに設定している製品も多い。それによってCPUやマザーボードにトラブルを起こす可能性もあるが、その点は保証に含まれない。あくまでメモリ単体の保証であることは覚えておきたい。

  • メモリは長期保証をうたう製品が多い

OCメモリの使い方は?

OCメモリは、「XMP」というメモリ拡張規格に対応し、SPDのクロックを超えて、動くためのプロファイルが用意されている。このXMPがOCメモリを使う上でのポイントだ。マザーボードは基本的にSPD情報を読み取って動作クロックを設定する。つまり、何もしなければOCメモリの仕様にある最大クロックでは動作しない。UEFIメニューを起動し、XMPプロファイルを設定する必要があるわけだ。これが、「OCメモリを買ったけど、動作クロックが低い」といったトラブル報告がある一番の原因と言える。

  • XMPプロファイルを読み込むことで、OCメモリは最大クロックで動作する

なお、XMPはIntelが提唱したものだが、多くのマザーボードはAMD環境にも対応しているのでユーザーが意識する必要はない。Intel、AMDどちらのプラットフォームでも利用できる。

OCメモリを使う上で知っておきたいのは、CPUとチップセットが対応するメモリだ。CPUには対応するメモリが決まっており、例えばCore i7-9700KならばDDR4-2666までの対応だ。DDR4-3200などそれ以上で動作させる場合は“メモリのオーバークロック”と言える。このメモリのオーバークロックに対応するチップセットは、IntelプラットフォームならばX299、Z390、Z370などX系とZ系だ。

H370やB350といったH系、B系はOCメモリを使うことは当然できるが、CPUが対応するメモリ以上では動作できない。例えばCore i7-9700KとH370チップセットの組み合わせでは、どんなに高クロックで動作するOCメモリを使っても、DDR4-2666までに制限されてしまう。この点は、マザーボードやメモリを選ぶ上で考慮しておきたい部分だ。

なお、AMDのチップセットではメモリのオーバークロックに関する制限はない。X399、X570、X470、B450、A320、どのチップセットを使ってもメモリのオーバークロックは可能だ。

とはいえ、メモリのオーバークロックに対応したマザーボードなら、どのOCメモリも動くわけではない。DDR4-4000など高クロックのメモリになるほど、対応するマザーボードはOC耐性の高い一部ハイエンドモデルなどに限られてくる。マザーボードメーカーは、製品ごとにメモリの検証リストを公開している。OCメモリの購入を考えているなら、事前にチェックしておくといいだろう。ただし、リストに載っていないメモリも当然動く可能性はある。

  • マザーボードの検証済みメモリのリストはWebサイトで確認が可能だ

実際にOCメモリを試してみる

前置きは長くなったが、ここからは第3世代Ryzenの環境でOCメモリを使うための設定やその効果を確かめていきたい。使用するOCメモリは、Crucial Ballistix RGBシリーズでDDR4-3600対応の「BL2K8G36C16U4BL」。SSDでもおなじみ、Crucialブランドの最新メモリで、8GBが2枚セットになったもの。CLは16、電圧は1.35Vだ。今回はこれを2セット用意し、メモリを4枚搭載。合計32GBの環境を用意した。なお、ヒートシンクにはブラックのほか、レッドとホワイトのモデルが存在しているほか、16GB×2枚、32GB×2枚といったセットもある。

  • MicronのCrucial Ballistix RGBシリーズ「BL2K8G36C16U4BL」。DDR4-3600対応で8GBが2枚セットになっている。実売価格は14,000円前後

  • 今回はBL2K8G36C16U4BLを2セット用意し、合計32GBの環境でテストする

  • RGB LEDをメモリの上部に搭載。マザーボード各社のRGB LEDコントロール機能に対応する

カラーサイクルを選択したときの発光パターン

テスト環境は以下の通りだ

テスト環境
CPU AMD Ryzen 7 3700X(3.6GHz)
マザーボード MSI MPG X570 GAMING EDGE WIFI(AMD X570)
グラフィックスカード SAPPHIRE PULSE RX 570 8G G5(AMD Radeon RX 570)
システムSSD Kingston KC600 SKC600/1024G(Serial ATA 3.0、1TB)
OS Windows 10 Pro 64bit版

さっそく、メモリの認識をチェックしよう。4枚挿した状態でPCを起動し、UEFIメニューを表示するとOCはされず、DDR4-2666として動作する。今回使用したマザーボードでは「A-XMP」を有効にすると、OCメモリのXMPプロファイルが読み込まれる。A-XMPを有効にしてUEFIの設定を保存し、再起動するとDDR4-3600で動作しているのがわかる。

  • 何も設定しないでUEFIを起動するとSPD情報に基づき、DDR4-2666で動作する

  • MSIのA-XMPを有効にすると、DDR4-3600で動作する

次は、DDR4-2666でDDR4-3600どの程度性能に差があるのかチェックしてみたい。メモリの帯域テストには「Sandra 2020」、CPUの性能テストには「CINEBENCH R20」と「Geekbench 5」、メモリの性能テストとして「Geekbench 4」も実行した。

  • Sandra 2020のメモリ帯域テストの結果

  • CINEBENCH R20

  • Geekbench 5

  • Geekbench 4

当然メモリの帯域はDDR4-3600のほうが高速になる。CINEBENCH R20やGeekbench 5は主にCPUパワーを測るテストなので、大きな差にはなっていないが、それでもDDR4-3600のほうが明らかにスコアは上だ。XPMを有効にするのを忘れ、DDR4-2666のまま運用すると性能を損することになるのはGeekbench 4の結果からも分かる。

高クロックのOCメモリを使うのであれば、XMPをUEFIで有効にすることを忘れずに。メモリの動作状況はフリーソフトの「CPU-Z」でも確認できる。メモリが本来のクロックで動作しているのか、性能を引き出せずに損していないか、OCメモリを使うならチェックしておきたい。